今後の法人税改正と、日本企業の関連会社への影響
フィリップ・ハモンド財務相は11月23日に発表した秋季財政報告の中で、標準法人税率(リング・フェンス所得を除く全利益に適用され、現行は20%)が2017年度には19%に引き下げられ、2020年度には17%になることを改めて明らかにしました。ジョージ・オズボーン前財務相は15%への一段の引き下げを論じていましたが、現財務相はどうやらこれを考えていないようです。
減税は英国企業にとっては確かに良いニュースですが、一部の予期せぬ影響をもたらします。その一つは、2017年度から英国の法人税率が日本の税法の「トリガー税率」を下回ることです。この税法は、租税回避地(タックス・ヘイブン)を通じて利益を迂回させるのを阻止するために作られたものです。
外国子会社がタックス・ヘイブン子会社の定義に合致すれば、子会社は租税回避防止の法規の対象となります。非日本企業が20%を下回る税率で法人税を支払い、日本の株主に(直接的または間接的に)支配されていて適用除外基準を満たしていない場合には、タックス・ヘイブン子会社となります。
子会社は以下の適用除外基準のすべてを満たしている場合にだけ、適用除外と見なされます。
① 本社が所在する国に事務所や小売店舗、製造施設などの事業を行う拠点があること
② 本社が所在する国で従業員により管理や運営が行われていること
③ 主たる事業が株式の保有、知的財産のライセンス供与あるいは船舶や航空機のリースではないこと
④ 事業の取引の大部分がその所在国で行われているか、あるいは卸売業や銀行、信託会社、証券会社、保険会社、輸送会社、空輸会社の7業種の場合には、関連者以外との取引が事業の50%を超えていること
タックス・ヘイブン子会社に指定された企業では、その利益は日本の支配法人・居住者の納税申告に合算されて日本で課税されます。また子会社が4つの適用除外基準を満たして適用除外される場合でも、資産性所得(配当、あるいは持ち分10%未満の株式からの所得や一部の知的財産権、船舶・航空機のリースなどからの所得)がある場合には、この資産性所得は日本の支配法人・居住者の納税申告に合算されて日本で課税されます。
個別の非日本企業の状況やその影響について正確に把握するには、以下の点に特に注意を払う必要があります。
① 詳細な所有関係と支配の基準
② 子会社が支払うことになる税金の税率を判断する計算上の課税額や利益額の構成
③ 適用除外を申請する場合には、それを裏付ける十分な証拠があるかどうか。特に独立した管理支配基準は税務当局との論議で中核となり得る
要するに、予定されている英国の法人税の改正により、かなりの数の英国子会社が租税回避防止の法規の対象となる可能性が極めて高くなります。しかし子会社の大半は適用除外の資格があると見込まれるため、その税務状況に大きな変化はないでしょう。
ただ、これまで実効税率が20%以上あるということから、英国の利益が日本の法規により日本で課税されるのを防いできた企業の場合には、2つの大きなリスクが生じます。1つは、その企業が恐らく気付かないうちに適用除外基準の1つ(特に管理支配基準)を満たしていないというリスク、そしてもう1つはこれまで日本で課税されていなかった資産性所得が課税されるリスクです。
ジョン・フィッシャー
パートナー
Ernst & Young、野村證券を経てグリーンバック・アランへ。会計技術はもちろん、高度なビジネス日本語を操り、日系顧客から大きな信頼を寄せられる。日本語スピーチコンテストでは2年連続入賞。