2017年犯罪財政法 - 脱税促進防止の不履行という新たな違法行為
脱税に関する新たな違法行為があると聞きましたが。
その通りです。2017年犯罪財政法(Criminal Finances Act 2017)により、脱税促進の防止(PFTE: Prevent the Facilitation of Tax Evasion)を怠ることに対して2つの刑事犯罪が設けられ、2017年9月30日から施行されました。一つは英国の租税に関するもので、もう一つは英国外の租税に関するものです。英国外で違反となるのは、その脱税促進が英国及び国外の現地の法規で刑事犯罪であるとともに、その企業が英国企業または非英国企業の英国支社の場合、もしくは脱税促進が英国内で行われた場合に限られます。
脱税促進は、既に違法ではありませんでしたか。
違法ですが、個人が企業のために行った行為で、企業を有罪にするのは難しい場合があります。新しい法規は個人を雇用、契約した企業に適用され、これらの団体のために働く人によるPFTEに対して直接的な責任を負わせています。
どのような人による脱税促進を防ぐ必要がありますか。
企業のために働く人々の脱税促進を防ぐため、企業は適切な対策を整備しなければなりません。こうした人々には従業員や下請業者、代理人だけでなく、企業の代わりにサービスを提供するサプライヤーやそのほかの人々も含まれます。この要件が適用されるのは、その人々が企業のためにサービスを提供する資格で活動する場合のみとなります。
どのような脱税が対象になりますか。
PFTEは、どのような脱税にも適用されます。顧客に対する助言だけでなく、企業自身のペイロールの業務、納税申告の提出、売上税などを脱税するサプライヤーからの購入、廃棄物処理の委託業者による廃棄物税の未払いも対象となります。
当社は防衛措置として、どうすればいいですか。
企業がPFTEに対する「妥当な手続き」を整備し、こうした手続きを積極的に管理していれば、新しい法規で有罪になることはありません。
どのような対策が妥当と見なされますか。
歳入関税庁(HMRC)は、「妥当な手続き」として次のような指針を示しています。それは事業や事業環境、従業員などのリスクアセスメントの実施、リスクに応じたバランスのとれた手続き、経営陣が対応策に関与するとともに顧客やサプライヤー、従業員などのデューデリジェンスに関わること、従業員や受託業者、代理人などと新たな対策についてコミュニケーションをとり訓練を提供すること、継続的に対応策や事業のリスク特性の変化を監視し検討することです。
既存のマネーロンダリング策の調整だけでも大丈夫ですか。
リスクアセスメントは、PFTEを特定したものでなければなりません。ただし、既存のマネーロンダリング策や贈賄防止策などがPFTEのリスクにも対応していれば、重複して対応策を整備する必要はなく、既存の対応策で処理できます。
それでは当社の幹部は何をすべきでしょうか。
以下のことに取り組む必要があります。
- ● PFTEを対象にしたリスクアセスメントを実施
- ● 脱税促進を防止するのに必要な新たな対応策の策定を監督
- ● 関係者に対応策順守の重要性を説明し、訓練を提供
- ● 対応策の順守状況の追跡や新たなリスク要因のタイムリーな
検討を徹底するように、監視手続きの監督に関与
ニック・ニコラウ
パートナー
税務パートナー。国境を越えて展開する日系企業や駐在員への
税金アドバイスなど、国際税務を専門とする。
税金はコントロール可能な経費、
というのが持論。初孫と遊ぶのが週末の楽しみ。