英国の法人税の概要
英国の企業が納めている法人税の税率を教えてください。
現在は19%ですが、2020年4月に17%に引き下げられる見込みです。
ブレグジット(英国のEU離脱)は税率の引き下げに影響を与えると予想されますか。
EU離脱協定が英国の満足するものになれば、EU離脱をめぐる国民投票前に発表された計画通りの引き下げが行われることになりますが、おそらく政府は更なる税率引き下げを行わないか、または、良好な外交関係を維持するため欧州各国との競争に租税を用いることはしないでしょう。一方、英国がブレグジットの結果に満足しなければ、欧州各国と積極的に競争するため税制を用いるかもしれません。もしくは、英国に企業をとどめておくための策として、税率の更なる引き下げ、あるいは税控除の提供があるかもしれません。
税法は膨大なものですか。
はい、全部で約1万7000ページに上ります。ただ、そのすべてが企業に適用されるわけではなく、多くは複雑な租税回避に対するものです。一般に税法の影響は納税額の引き上げ、あるいは納税期日が早まることなどですが、一部の法規により、優遇税制や利益の代替算出法が導入されています。
一般的な租税調整の項目は何でしょうか。
最も一般的な項目は、控除できない接待費や法務費用、固定資産の税処理、損失控除、研究開発費控除のような優遇課税控除です。
接待費の税控除について聞かせてください。
企業が何らかの贈答品の要素を伴うものを提供する、あるいは「ホスト役」を務める場合、接待を受ける側が現在、または以前の従業員でないと費用の税控除はできません。また、企業が販売する商品やサービスの無料サンプルを提供する場合か、もしくは50ポンド未満の贈答品の提供で(食品、飲料、たばこを除く)、その企業の目立つロゴがつけられている場合でなければ費用の税控除はできません。
控除できない法務費用はどのようなものですか。
資本的資産の売買、または企業の所有権の変更に伴う費用は控除できません。
固定資産の税控除はどうですか。
英国は減価償却控除を認めていません。税控除は「キャピタル・アローワンス(税務上の減価償却)」制度の下で、事業に使われる設備と機器に利用できます(事業を遂行する構造の費用には適応不可)。キャピタル・アローワンス制度では、最大20万ポンドの「年間投資償却」の費用を事前に控除することが認められ、これを上回る金額を使う大手企業では定率で年に18%、一部資産に対しては8%の控除が認められます。
損失控除についてはどうでしょうか。
企業が損失を出した場合には、将来の利益に対して無期限に損失を繰り越しできますが、企業活動を変更する場合には制限があります。企業グループでは、損失はグループ内の企業間で振り替えることができますが、様々な制約があります。
研究開発(R&D)費の控除はどのようなものですか。
企業が科学技術のR&Dを実施する場合には、中小企業では適格費用の230%の拡大税控除を申請でき、大手企業では11%の税額控除を申請できます。
アンディー・トール
税務ダイレクター
税務と税務会計コンプライアンス、HMRCへの照会、オーナーの利益抽出と出口戦略、R&D優遇の請求、キャピタル・アローワンスの請求、税務デュー・ディリジェンス、M&Aの税務など幅広い経験を持つ。