注目が高まるESG投資について
昨年、気候変動枠組条約締約国会議(COP26)が英国で開催されました。環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)をテーマとするESG投資が世界的に注目されています。今回はESG投資について考えてみましょう。
ESG投資とは何ですか。
ESG投資は、環境・社会・企業統治(ガバナンス)を考慮する運用のことで、ESG要因(下表 ) を投資判断に組み入れることにより、リスク管理を強化し、長期的に魅力的なリターンを創出することを目標としています。 「環境」に関しては地球温暖化の抑制、環境汚染の防止、リサイクルといったテーマが挙げられます。地球温暖化は世界各地の山火事・洪水・台風などの異常気候により特に注目されており、風力・太陽熱などの再生可能エネルギーや、電気自動車関連の投資機会などが生じています。米電気自動車会社のテスラの株価はここ3年間で約15倍になりました。
社会と企業統治とは何ですか。
「社会」に関しては労働環境改善や人権尊重、女性活躍の推進などです。ユニクロのシャツが少数民族の強制労働が行われている中国ウイグル自治区産の綿を原料としているとして、米国税関により輸入を指し止められ株価が下がる一つの原因になりました。 「企業統治」とはコンプライアンスの順守、賄賂や汚職の監視、取締役会の多様性などです。昨年HSBCやNa tWes tなどの銀行がマネーロンダリングの監視を怠ったとして罰金が科せられたと報道されましたが、株価を下げる要因になります。
このように ESG要因にそぐわない企業の株式・社債を投資対象から外すことも ESG投資の手法の一つです。逆に、社会に貢献し企業統治を高めている会社には投資資金が集まり、その株価や社債の投資価値も上がります。
責任投資原則(PRI)で提唱されているESG要因
環境 | 社会 | ガバナンス |
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ESG投資はそんなに注目されているのですか。
国連に提唱されている責任投資原則機構(PRI) はESG原則のポートフォリオへの取り組みに合意・署名した投資家数と、その資産残高を2006年から公表していますが、資産は年々増大しており、2021年は120兆ドル(約1兆3700億円)を超えました。
具体的にどのように投資できますか。
ESG に取り組んでいる企業が発行している社債(ローン証券)や株式へ投資する形になります。ただ、複雑な調査になり企業数も相当な数なので、有望な企業を選定するのは至難の業です。そこで ESG に取り組んでいる企業を調査・選定し、投資している投資信託が検討できると思います。プロの投資家が専門に運用するので、ポートフォリオ構築と継続的運用、企業調査、機関投資家向けの安い売買手数料などの恩恵を受けることができます。たとえば下記は私が勧めている世界株式ESG投信と、世界株式指数のパフォーマンスを比較したものですが、過去5年間で ESG投信が24~44パーセントもアウトパフォームしています。
世界株式指数とESG投信(例)のパフォーマンス
1年間 | 3年間 | 5年間 | |
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世界株式ESG投信 例① | 6.3% | 78.9% | 114.7% |
世界株式ESG投信 例② | 9.1% | 67.0% | 94.1% |
株価指数(FTSE all world index ex UK) | 14.1% | 58.6% | 70.0% |
これら投信はどこで購入できますか。
銀行窓口、自己責任で行うオンライン・トレード口座、独立系ファイナンシャルアドバイザー (IndependentFinancial Adviser=IFA)などです。銀行では銀行が用意した一定数の投資信託からの選択ですが、IFA は英国中の多数の投資信託から有望なものを勧めてくれます。税金はどうなりますか。
投資信託は投資型ISA(Stocks & Shares ISA)を利用できるので、ISA の口座を積極的に利用することで売却益や配当が非課税になります。ISA以外の通常の証券口座(General Investment Account) で運用する場合は課税対象ですが、売却益は年1万2300ポンドまで、配当は2000ポンドまで(2021/22年度)非課税です。ISA投資は4月5日の締め切りまでの要検討事項です。
ごあいさつ
当コラムは所属事務所変更などによりしばらくお休みしていましたが、このたび再開することになりました。これからは4半期ごと(2,5,8,11月)に掲載します。ご愛読のほどよろしくお願いいたします!
※ 次回のマネー教室は5月19日に掲載致します。
本コラムのバックナンバーにつきましては、英国ニュースダイジェストのウェブサイト(www.news-digest.co.uk)をご参照ください。当コラムは2022年2月時点の法制と税制に基づき一般的なガイダンスのために作成されており、皆様のご理解を深めるために内容を簡素化してある場合もあります。専門家の助言なしに記載情報にのみ基づき行動することはお控えください。その場合、筆者は一切責任を負いません。