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Fri, 19 April 2024

2010年のGCSEの結果が発表に

大学入学の競争率の高さが影響との声も
今年のGCSEの結果が発表に

義務教育修了時に大半の中学生が受ける中等教育修了試験(GCSE)の結果が、今年も8月下旬に発表された。合格率の上昇など毎年聞かれるニュースのほかに今年は、大学の入学が激戦となっていることや、不況による雇用状況の悪化などの時勢を反映して、GCSE受験者の今後を懸念する声も聞かれた。

GCSEとは

イングランド、ウェールズ、北アイルランドで取得できる学業に関する資格の一つ。ほとんどの人が中学で取得する。GCSE取得の最も典型的な方法は、中学の最後の2年間、自分が選んだ科目のGCSEのコースで学び、中学の最終学年の終わりにGCSEの試験を受けるというものである。生徒は、2年間のコース中、プロジェクトの実施や実験、調査研究なども行い、それらの結果もグレード(成績)の決定に反映される。

生徒は50以上の科目の中からGCSEを取得する科目を選ぶことが可能であり、全部で9〜12科目ほどを選ぶケースが最も多いと言われる。試験後に各生徒に通知されるグレードは、「A*(エー・スター)」、「A」、「B」、「C」、「D」、「E」、「F」、「G」、「U」の9段階に 分かれており、「A*」が最も優秀な成績である。「A*」から「G」までは「合格(pass)」であり、「U」は不合格である。

GCSEは、その後の進学、就職などの際に能力の判断材料とされる、重要な資格である。


2010年のGCSEの結果概要

●「A*」から「G」までのグレードを達成した「合格率」は98.7%
●「A*」から「C」までのグレードの獲得率は69.1%
●「A*」または「A」のグレードの獲得率は22.6%
● 受験者が多かった科目は、英語、数学、デザイン・技術、歴史、地理など
● 外国語の受験者数は引き続き減少しており、フランス語が 昨年比5.9%減、ドイツ語が同4.5%減
● 理系の科目の受験者数が著しく増加し、化学は昨年比 32.2%増、物理は同32.1%増、生物学は28.3%増
● 宗教学の受験者は昨年比3.5%増
● 科目別の「A*」から「C」までのグレードの獲得率は、英語 が64.7%、数学が58.4%

今年のGCSEの各グレード獲得率

Source: BBC
今年のGCSEの各グレード獲得率

* すべての科目の「A*」から「U」までのグレードの獲得率を合算した数字。なお、生徒が受験したGCSEの試験総数は537万4490だった。

GCSEの上位のグレード獲得率の推移

Source : Centre for Education and Employment Research, Buckingham University
GCSEの上位のグレード獲得率の推移

* GCSEに「A*」のグレードが導入されたのは1994年。


合格率は98.7%で23年連続上昇

先月下旬に発表された中等教育修了試験(GCSE)の結果は、「A*(エー・スター)」から「G」までのグレードを獲得した「合格率」の割合が98.7%に達し、23年連続の上昇となった。「良い成績」であるとされる「A*」から「C」の獲得率は69.1%、「A*」または「A」の 獲得率は22.6%と、共に過去最高を記録した。

若者の学業成績が向上しているとの兆候は喜ばしいことではあるが、今年のGCSEの結果にまつわる話題は明るいものだけでは ない。国内の大学、専門学校等の職員の組合である「大学・カレッジ組合(UCU)」は、GCSEの結果が発表された8月24日、「今年は、大学の入学競争率が高いことが災いして、特にGCSEの結果があまり良くなかった多くの生徒が、継続教育カレッジ(「関連キーワー ド」欄を参照)に進学する機会を奪われることになるかもしれない」と警告した。

「ドミノ式」に押し出されるとの懸念

今月9月からの大学入学の競争率が非常に高かった理由の一つは、入学希望者が過去最高の66万1000人に達したためである。また、昨年から国の高等教育予算が減らされ、大学入学者数が政 府によって厳しく制限されるようになったこともある。更に、これとは別に、前労働党政権が決定していた「イングランドの大学の定 員2万人増」の方針を、新連立政権が公共支出削減を目的として「1万人」に半減したことなども理由であった。

こうした背景から、今年は応募者のうち十数万人が大学に入学できないだろうと言われている。UCUは、これらの学生たちの多くが、大学を諦めて職業関連の資格取得を目指したり、来年、大学 に再挑戦するべく、もう一度シックス・フォーム・カレッジに入学することなどが予想されるため、本来ならGCSEを終えた後にこうした学校に入学できるはずの中学卒業生が「ドミノ式」に押し出されることになるだろうと述べているのである。

「ニート」100万人突破か

継続教育カレッジから押し出された中学卒業生たちにとっては、就職の道も容易ではない。不況の影響で、特に若者の就職は非常に厳しい状況にある。英国労働組合(TUC)が先月上旬に発表したところによると、半年以上失業している18〜24歳の若者の数は、英国の3分の2の地域で増加している。こうした状況のため、現在 は英全土で90万人いると言われる「ニート(働いておらず、教育、職業訓練も受けていない者)」の若者が、近く100万人を突破する可能性があるとする声も聞かれている。

継続教育カレッジの入学定員増加を可能にするよう、政府が補助金を増額すべきであるとの声もあるが、財政赤字削減に向けて政府が大規模な公共支出削減を計画している中、その実現の見込みは高いとは言えない。教育も含めた各分野における連立政権の 支出削減の最終決定は、10月に発表される「支出見直し(Spending Review)」で明らかになる。若者たちの将来、ひいては国の将来を決定するのが教育であるからには、教育への投資は、財政赤字削減と同様に重要であると訴える声に対し、現政府はどのように回答するのであろうか。

Further Education

義務教育修了後に受ける教育を意味するが、「高等教育(Higher Education)」と呼ばれる大学(university)での教育は含まれない。日本語では「継続教育」などと訳される。「継続教育カレッジ」に分類される学校には、職業関連の資格取得を目的としたコースを提供する学校、大学の入学者選抜に使われる資格「Aレベル」の取得を目的としたシックス・フォーム・カレッジな どのほか、成人向けコースを提供する学校も含まれる。学校名にはほとんどの場合、「カレッジ(college)」という言葉が含まれている。継続教育を担当する省は、ビジネス・改革・技術省(BIS)である。

(猫)

 
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