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Thu, 18 April 2024

鉄道料金が8%値上げの見込み - 来年1月から、定期券などに影響

来年1月から、定期券などに影響
鉄道料金が8%値上げの見込み

地下鉄やバスのみならず、通勤・通学に鉄道を使っている方も少なくないはずだが、鉄道を頻繁に利用する人にとってはうれしくない運賃値上げの見込みのニュースが最近、報道された。既に欧州で最も高いと言われている英国の鉄道運賃であるが、更なる値上げの可能性に、一般庶民からは大きな批判の声が上がっている。

鉄道サービスに関するアンケート調査結果

鉄道運賃引き上げについて
鉄道サービス関するアンケート調査結果


英国の鉄道料金はサービスに見合っていると思うか
英国の鉄道料金はサービスに見合っていると思うか

Source: YouGove / The Sunday Times
(2011年8月18、19日、成人2464人を対象に調査を実施)


ロンドン中心部行きの1年間のシーズン・チケット
(定期券)の値段

出発駅 2011年の値段 8%値上がりした場合の値段
Beckenham Junction
(ロンドン南東部)
£1,128 £1,218
Eltham (ロンドン南東部) £1,128 £1,218
Graversend (ケント州) £2,792 £3,015
Erith (ロンドン南東部) £1,632 £1,762
Orpington (ロンドン南東部) £1,632 £1,762
Sidcup (ロンドン南東部) £1,432 £1,546
Tunbridge Wells (ケント州) £3,748 £4,047
Tonbridge (ケント州) £3,408 £3,680
Sevenoaks (ケント州) £2,816 £3,041
Source: National Rail

英国の鉄道


来年から3年間は大幅な値上げ可能に

先日、来年初頭から鉄道運賃が大幅に引き上げられる見込みであるとのニュースが伝えられた。鉄道の運賃は、料金設定に運輸省の規制がある「規制運賃」と、規制のない「非規制運賃」の2種類に分かれる。「規制運賃」が適用される乗車券には、1カ月、1年などの期間を決めて買えるシーズン・チケット(定期券)、混雑していない「オフピーク時」に使える長距離移動用乗車券などがある。「規制運賃」及び「非規制運賃」はともに、毎年1月に変更される。

「規制運賃」については、2004年から2011年まで、前年7月の小売物価指数(RPI)に最高1%まで上乗せした値上げが認められていた。しかし、現政権は昨年10月、2012年からの3年間は、RPIに最高3%まで上乗せした値上げを認める方針を明らかにした。8月中旬に発表された今年7月のRPIは5%であったため、来年1月から、多くの鉄道会社が、「規制運賃」を8%引き上げる見込みとなったのである。

しかも、労働党政権が政権末期に廃止し、現政権が復活させた「フレックス」と呼ばれる制度の下、一部の乗車券については、8%以上の値上げが行われる見込みである。同制度では、「規制運賃」が適用される乗車券の一部について、RPIプラス3%に更に最高5%上乗せした値上げ率を適用することができる。つまり、来年は最高13%までの値上げが可能なのである(ただし、「規制運賃」が適用されるほかの乗車券に、RPIプラス3%より低い値上げ率を適用し、「規制運賃」が適用される乗車券全体の値上げ率がRPIプラス3%(2012年の場合は8%)を超えないことが条件)。なお、「非規制運賃」は、鉄道会社の裁量で値上げ率が決定される。

値上げの背景に財政赤字削減

政府が、値上げ率の許容幅を、RPIプラス1%からプラス3%にまで引き上げた理由は、新車両の投入、新鉄道「クロスレール(Crossrail)」の建設、テムズリンク鉄道(Thameslink)の拡張などの鉄道サービスの改善に向けた資金を調達するためである。現在、国が鉄道サービスに投入している補助金は年間約46億ポンド(約5750億円)だが、政府は、財政赤字削減のため、これを同10億ポンド(約1250億円)削減したい意向である。そのため、鉄道サービス改善の資金は、運賃を値上げし、鉄道利用者から調達するしかないということらしい。

消費者の家計圧迫する通勤費

実際に鉄道各社が来年1月からの値上げ率を発表するのは今年11月であるが、特に郊外からロンドン中心部へ鉄道で通勤している人などからは、「食費や光熱費の値上がりで家計が圧迫されているのに、更に通勤費が上がるようではやっていけない」などの悲鳴の声が既に上がっている。

テリーザ・ヴィリアーズ鉄道担当閣外相によると、政府は、長期的には鉄道運営経費の削減を目指しており、それに成功すれば、インフレ率を超える鉄道運賃値上げを行うことは止めたい意向であるという。これがいつ実現するのかは分からないが、それまで消費者は、高い鉄道運賃に我慢するしかないのであろうか。

注: 本稿で述べた鉄道料金値上げ率は、イングランドのみに適用される。


National Rail

「 鉄道運営会社協会(ATOC)」が使用している、英国の鉄道旅客輸送サービスの総称。ATOCとは、かつてブリティッシュ・レール(BritishRail)が提供していた旅客輸送サービスを担う鉄道会社の代表団体であり、ブリティッシュ・レールの分割民営化を受けて1993年に創設された。英国の一部の地方にある地下鉄やトラムなど(ロンドン地下鉄、ドックランズ・ライト・レールウェイ、マンチェスターのメトロリンク、イングランド北西部タイン・アンド・ウィア地方のメトロなど)は、ナショナル・レールのネットワークに含まれない。
ウェブサイトはwww.nationalrail.co.uk

(猫山はるこ)

 
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