1年ほど前から近所に次々とオープンしたクリーニング店。17区を中心にチェーン展開をし、オープンした5軒はいつも繁盛している様子でした。経営者は、商業学校を卒業したばかりの生気みなぎる25歳の男性。今春には「日本製の性能のいい大型機械を導入したよ」と、私の前でうれしそうに話してくれました。
若き経営者の誠実な人柄と、店内の清潔さが気に入り、季節の節目には我が家のすべての汚れ物のこのクリーニング店にお願いしていました。
夏めいてきた6月、去年のように冬物のコート類などを一斉にこのクリーニング店に出しました。我が家に収納スペースが少ないものだから、タンス代わりに夏の間、冬物をこの店に預けっぱなしにしていた状態。
ところが昨日、ショッキングなニュースが飛び込んできました。そのクリーニング店が閉店したというではありませんか! 数日前から店舗のシャッターが閉まったままになっているということ。

それを知って真っ青になったのは夫。私の冬物のコート4着とマフラー2枚、そしてセーターをもっと早く取りに行くべきだったにもかかわらず、ずっと忘れていたのですから。もし回収できないとすると、この冬、私はコートとマフラーを買わなければなりません。パニックになった夫は、どこかに電話をかけ始めました。驚くことに夫は、このクリーニング店の経営者の携帯電話番号を控えていたのです。更に、この経営者と話ができ、彼は夜この店に立ち寄るということ。
この機を逃したら最後! と、夫は転がるように店へ向かいます。
経営者は少しやつれた様子で、入ってきたお客に対応していたらしいのですが、突然の閉店に怒って押し入った人々によって店内は荒らされたために、ほとんど衣類は残っていなかったそう。クリーニング済みのパイプにつるしてあったのは数着の衣類のみ。1000ユーロのスーツを探している人は、パニックに…。

それでも夫は冷静に日本製の大型機械を作動させたところ、自動で手元に落ちてきた衣類はすべて私のもの。マフラー1枚足りなかったとしても、夫は胸をなで下ろし帰ってきました。

しかしながら、その回収できなかった1枚のマフラーは、私が20年間も大事に使用していたもの。そのため、彼に対し感謝の言葉よりも先に、ガミガミと小言ばかりが口をついて出てしまいました。「それなら自分で行って確かめてくればよかった!」と、結局確認しに出掛けました。
残念ながら、既にドアには鍵が掛けられ、中は暗くなっていました。「売店舗」の張り紙と、苦情と思われるたくさんの手紙がガラス扉の下に見えます。数日前には午前3時頃、激怒した顧客が自分の服を回収しようと強行にシャッターを壊し入ろうとして警察ざたがあったそうで、ゆがんだシャッターは無残な姿。

あの爽やかな若き経営者の顔が浮かび、同情しますが、マフラーはどうしてもあきらめられません。
私も彼に電話をかけ始めました。たとえハラスメントと言われようとも…。








