南仏カンヌに隣接したル・カネにボナール美術館が6月26日に新設オープンしました。メイエール財団と芸術愛好家らのメセナ活動で、美術館のコレクションは1922年から1947年までのピエール・ボナール(1867-1947)晩年の作品に力が注がれています。現在開催されている『ピエール・ボナールとル・カネ、地中海の光の中で』と題する特別展覧会は、パリ、ニューヨーク、ワシントンの各美術館が委託した代表的な作品が加わり、充実した展示内容です。

展覧会パンフレットを彩る作品『ミモザの見えるアトリエ』
美術館はカンヌの入り江が一望できるル・カネの高台にあり、小さな村の趣が残る旧市街を背景にしています。ベル・エポック時代の建物は修復・増築され、真っ白のファサードが夏の陽光に輝いています。館内にはエレベーターが設置されており、入場後まず最上階に上がり、各階の展示室を見学しながら降りるように工夫されています。ブラインドを通して和らいだ日差しが、やさしい色使いの油絵を照らします。南仏の風景画から始まり、妻マルトと日常をテーマにした数々の作品から遺作の『花咲くアーモンドの木』まで、ル・カネの風景と自然がボナールにもたらした創作エネルギーが感じられます。

1908年建築の建物は、解体から免れ1998年ル・カネ市が購入。
1904年にサン・トロペを訪れてから、南仏の陽光と自然に魅了されたボナールは、温暖な南仏の冬をカンヌやアンチーブで過ごします。なだらかな丘から海が見下ろせるル・カネに庭付きの家を借りたのが1922年。それ以降、カンヌの喧騒から逃れるように、オリーブやヤシの木に囲まれたル・カネを避寒地とします。アーモンドやミモザの花が咲く南仏で冬を過ごしたボナールは、冬が終わると渡り鳥のように北フランスへと住まいを移していました。1926年、灌漑(かんがい)用水が通るボスケ地区に広い庭のある小さな家を見付けます。その家を購入しアトリエを増築して、翌年の2月に入居ます。

『ボナールの道』には風景画と一致する場所に
リュトランが設置されています。
1939年、第2次大戦が勃発してからボナールはル・カネに定住するようになります。朝食前の散歩を日課とし、四季の移り変りとともに変化する自然の観察を欠かしませんでした。真っ青な空に浮かぶ淡いアーモンドの花、黄緑の蕾が徐々に色付くミモザ、風に揺られ銀色に輝くオリーブの枝、太陽に白く光るヤシの葉、レステレル山塊に沈む夕日……。300枚にも及ぶ油絵をル・カネで描きました。
美術館を基点に全長4.5kmの『ボナールの道』が設けられています。このコースには、旧市街、ボスケ地区、展望台が含まれ、現在土に覆われた用水路の上を通ります。上り下りがあるので、歩きやすい服装が望まれます。夏は早朝回るのがお勧めです。同美術館の公式サイトで案内図をダウンロードすれば、美術館見学前にボナールの足跡をたどり、彼の作品を鑑賞することも可能です。できれば、ミモザの花が咲く2月に訪れるのがベストかもしれません。

マンションと別荘の間に残された空間からの風景。

旧市街Bellevue広場のからの眺望。
| アクセス 国鉄カンヌ駅から1番のバスを利用、ル・カネ市役所下車。 ボナール美術館 Musée Bonnard 16, bd. Sadi Carnot 06110 Le Cannet Tel : 04 93 94 06 06 開館時間: 6月~10月10:00~20:00、 木曜日21:00 11月~5月10:00~18:00 休館日:月曜日 公式サイト(仏語): www.museebonnard.fr |
反橋妙子(sorihasi taeko) 1980年に渡仏。仏語を学び、言語学修士号を取得。リヨンで日本語教師を経て、南仏に移転後は観光ガイドとして南仏を回る。現在、通訳・翻訳業を専門とする。 taeko3011.jimdo.com










