
製鋼業で栄えたオート・マルヌ
パリから約250km離れたのオート・マルヌはシャンパーニュ・アルデンヌ地域圏に位置し、その名の通りシャンパンの生産地。緑豊かなこの地では、かご編み業や木工業など、自然の恵みを生かした製品作りが古くから行われてきた。その中でも鋳物は有名で、現在パリの街並みに溶け込んでいる数々のモニュメントも、この地で生まれた。(Text:Kei Okishima)
さまざまな仕掛けで楽しく製鋼の歴史を学ぶことができるメタリュルジ・パーク
重要なモニュメントの生地
鉱山のあるオート・マルヌでは、紀元前から鉄が使用されていた。金属加工の技術が進化したのは、15世紀に入り、大砲の生産が始まってからのこと。19世紀は全盛期で、フランス国内の鋳鉄の5分の1がオート・マルヌで作られていた。
そんなオート・マルヌを知るために訪れたいのが、金属加工の歴史を伝える博物館、メタリュルジ・パーク。時代と共に移り変わる製鋼の工程などを、写真や模型の展示をはじめ、巨大なスクリーンを使用した映像を交えて紹介している。オート・マルヌで作られる製品の中には、飛行機や列車の部品、鉄橋や電灯など、生活のあらゆるところでなにげなく目にするものが多い。
その中の1つにヴァラスの泉(Fontaine Wallace)がある。「純朴」、「慈善」、「善意」、「節制」を表す4人の女神がシンボルの緑の泉で、イギリスの富豪、リシャール・ヴァラスが19世紀末にパリに作ったのが始まりだ。当時のパリは、1870年の普仏戦争で破壊された水路を修復する余裕がなく、飲料水が不足していた。この状況を見かねたヴァラスが作ったのが、この泉。今でもパリの街角に多数残されている。また、アールヌーボー建築家、エクトール・ギマールの作品であるパリの地下鉄の出入口や、シャンゼリゼ大通りの街灯なども、オート・マルヌで製作された。

ヴァラスの泉
メタリュルジ・パーク
Metallurgic Park
火~日10:00-13:00、14:00-18:30
(4、5、10、11月は14:00-18:00)
月、12月~4月15日まで休
入場料:8€
13, rue du général Leclerc 52110 Dommartin-le-Franc
TEL:03 25 04 07 07
www.metallurgicpark.com
自然の中で優雅なディナー
現在も、伝統を引き継いだ鋳造所は存在するが、鉄鉱石の採掘は行われなくなった。当時採掘されていた鉱山は、現在自然保護地区に指定されており、緑豊かな憩いの地となっている。週末になるとサイクリングやピクニックでにぎわうこの大自然の中に、レストラン、スルス・ブルがある。高級さが定着した地元では有名なレストランであるが、今年5月、同じ敷地内にホテルを併設した。これで遠方からやってくる旅人たちも、静かな夜をゆっくり過ごし、小鳥のさえずりで目を覚ますぜいたくを味わえるようになった。ストラスブールで修行を積んだシェフによる料理は、旬の食材を活かすため、季節によってメニューをチェンジ。レストランの内部は小さな部屋に分かれており、各部屋にオーナー自ら集めたアンティークの家具が並ぶ。裕福なフランスの家庭に招かれたような豪華な空間で、隣に流れる小川の水音に耳を傾け、安らぎのひと時を味わいたい。
自然に囲まれたホテル&レストラン、スルス・ブル
スルス・ブル
La Source Bleue
Route de Doulaincourt 52320 Gudmont Villiers-sur-Marne
TEL:03 25 94 70 35
www.hotelsourcebleue.com
オート・マルヌを愛した男
オート・マルヌの中でもロレーヌ地域圏のすぐ横に位置するシレ・シュール・ブーレーズ村。ロレーヌがまだ独立した公国だった18世紀、この立地を好んでやってきた男がいた。その男の名はヴォルテール。フランスの啓蒙主義を代表する哲学者である。当時の摂政を風刺したとして投獄され、釈放後も弾圧されていたヴォルテールにとって、すぐ隣のロレーヌ公国へ亡命できるこの村は、滞在するのに最適な場所であった。もちろん、ここを選らんだのには別の理由もある。この村にあるシレ城を所有していたシャトレ公爵の夫人で、女性科学者の先駆けとして知られるエミリー・デュ・シャトレの存在だ。2人は愛人関係にあった。この城で2人はそれぞれ、研究や執筆活動に没頭しながら、知的な会話を楽しんだ。ヴォルテールは古かった城を改装し、フランス初の個人劇場まで作った。そんな愛の巣を見るために、この小さな村には各国から観光客が訪れる。ふと息抜きをしたい週末に訪れるのに最適な場所だ。
シレ・シュール・ブーレーズ村にあるシレ城
シレ城
Château de Cirey
14:30-19:00 (5、6、9月の平日、10~4月休)
入場料:7.50€
52110 Cirey-sur-Blaise
TEL:03 25 55 43 04

地域圏急行輸送(ter)でパリ東駅からサン・ディジエまで2時間10分。
車ではパリから約3時間。
取材協力:Maison Départementale du Tourisme de la Haute-Marne
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