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コゴラン Cogolin
地中海のラクエン 〜 サン・トロペ

| 地中海のラクエン 〜 サン・トロペ |
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小雨の交じる天候が数日続いたが、今日は見事な快晴。春のミストラルは色の魔術師。みずみずしい若葉が風に揺れている。 今日は、ランチをパンプロンヌで食べる約束をしてから夫は出勤。お昼、ふたりでサン・トロペへ車を走らせ、街の手前を右に曲がりパンプロンヌ・ビーチ方面へと向かう。 観光客もまばらな3月半ば、平日ということもありレストランは大人の雰囲気がただよっている。ビーチがすぐ目の前に広がるテラス席は、ほとんど満席。私たちの隣のテーブルには初老のカップルが肩を並べ、サングラス越しにメニューに目を通している。女性はノースリーブ、男性は素足にモカサン(靴)を突っかけている。別のテーブルの若いカップルは話に花を咲かせながら食事をしている。 白い砂浜に押し寄せる波の音が耳に心地よい。目の前にはミストラルに洗われた地中海が広がる。波打ち際の透き通った海は沖合いに行くにつれ青さを増してゆく。太陽の日差しが肌から体の芯まで伝わるのが感じられる。ストレスでもつれた神経がほぐれるような暖かさ。人生という長い映画のひとコマにすぎないが、失われた楽園を見ているようだ。 このパンプロンヌのビーチには、サン・トロペでリゾートを楽しむ人なら必ず一度は足を運ぶ場所。ラマテュエルの鷲巣村から広がる丘陵地帯に接している全長5キロメートルの砂浜。パラソル松の森が広がり、緑豊かな風景が都会人の心を和ませる。そんな、緑に隠れるように無数の別荘が存在している。真夏には、深夜まで一夏の思い出を求めてヴァカンスを謳歌(おうか)する人々の熱気がみなぎり、コート・ダジュールでは最も美しく、最も熱いビーチである。 自然派の好みには、ラマチュエルのエスカレ・ビーチ。カーブの多い道路を走リ松林をぬけ、下り坂にさしかかると、突然真っ青な海が目に飛び込んでくる。何度訪れても、コバルト・ブルーの海の眺めには感動する。パンプロンヌとはうってかわった、かわいい砂浜が岩と岩の合い間に点々と続いている。無料のパーキングには、涼しい木陰を落とすプラタナスがたっている。夏になれば、アイスクリーム屋さんも店をだし、砂遊びに疲れた小さな子供たちでにぎわい、ビーチには、冷めたいドリンクとお弁当を入れたクーラーボックスを持って訪れた人々で埋まる。真夏は日差しが強いので、パラソルは必需品。 サン・トロペの町には小さなレ・グラニエというビーチがあって港から歩いて行ける。要塞と別荘郡に挟まれた長さ数十メートルの砂浜。ここから細い坂道を登っていくとポール・シニヤックの別荘の前にでる。
シニヤックは、後期印象派の旗手で、19世紀末期「オランピア号」の舵を握り地中海を航海し、漁師やたくましい海の男たちが働くサン・トロペ港に錨を下ろした。北フランスから来た彼は、リュウゼツランやサボテンが育つ気候と澄み切った空が形成する新鮮な風景に刺激されたに違いない。数年後、彼は別荘を購入し著名な画家たちがサン・トロペを訪れることとなる。マチスも1904年、家族と共に夏を過ごし、点描画に感化されており、翌年、きらめく太陽の下、レ・グラニエのビーチで描いた絵とデッサンを基に「Luxe, calme et volupté」という油絵を創作している。 フランスでも人気の避暑地の一つなので、夏はセレブリティに占領されてしまうが、芸術家を魅了した光は今でもサン・トロペを照らし続けている。港の一角にあるラノンシアード美術館はシニヤック、マルケ、カモワンが描いたサン・トロペの絵を多数所蔵している。夏休み前の5月、6月は比較的静かで、太陽に輝くサン・トロペの姿は訪れる人の心を離さないだろう。
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