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日本アニメの今
日本アニメの今文:氷川竜介(アニメ評論家) 日本製のアニメーション作品は、動きの面白さよりも設定やデザイン、物語性に凝っている。それは予算を潤沢に使えないという貧しい事情に起因するものだったが、今では省略形の"Anime"の呼称のまま全世界で新たなファンを獲得し、ハリウッド映画などの映像表現にも大きな影響を与えている。現在でも毎シーズン(*1)100作近い膨大な数の作品がテレビに登場し、劇場映画やビデオリリース用作品も多数作り続けられ、活況が続いている。
キッズ・ファミリー向け作品のみならず、ティーンから社会人(大人)まで対象年齢が広い作品が多いのも日本製アニメの特徴だ。作り手も「子供には分からない」などと表現をレベルダウンさせず、真剣にメッセージを伝えようとしている人が多い。世界的な名声を得た宮崎駿監督も、観客へ大事なものを伝えようと努力してきた、熱意あふれる作り手のひとりだ。前向きな精神が続いてきた結果、キャラクターにしても物語にしても、類型的なところに留まらず、常に新しいものが創造されている。もしも日本製アニメに国境を越える力があるならば、こうした「観客へ真剣に向かい合う作り手の姿勢」が宿っているからではないか。キャラクターやコスチューム、ハイテク描写の先端性が取りざたされがちだが、それよりも作品が放つ「心への浸透力」に注目すべきだ。感動があるからこそ、装飾の美もまた輝くのである。 この10年あまり、世界的な傾向として映像文化がデジタル化されている。日本製アニメも例外ではなく、制作工程がコンピュータ上行われるようになり、大きな変化の時期を迎えている。ただし、ペイント、撮影、編集といった工程のデジタル化が主で、動くキャラクターや背景など「絵づくり」の大半は、現在も2Dと呼ばれる手描きの手法で制作されている。アメリカのアニメーション映画では、フォトリアリスティックな立体情報をコンピュータ演算で作り出すフル3D作品が主流となっていて、それとは好対照だ。 日本では、フル3D作品はまだ主流ではない。フル3D作品「EX MACHINA -エクスマキナ-」(*2) などでも、あえて「アウトライン内をベタで塗った伝統的なアニメ絵」のルックに処理している。また、SFアニメでは、硬質で複雑な面構成をもったメカニズムが3Dで表現されることが多くなったが、これも2Dの作画部分とマッチングさせる「ハイブリッド」手法をとっている。 Appleseed : Ex Machina ©"Ex Machina Film Partners, Micott & Basara Inc., Toei, Takaratomy, Sega, Tyo, Digital Frontier, Toei Video"アニメの絵柄は日本の伝統文化である「浮世絵」に例えられることが多い。もともと日本人は、線で囲まれた平面的な物体が層をなして重なっているように世界を認識していると言われている。色も時間も省略をベースにした日本製アニメは、その伝統的な認識力と親和性が強く、歌舞伎や文楽など省略と様式を活かした芸術の延長線にあるものと見ることもできる。 アメリカ製のCGアニメは動物の表面に体毛を生やし、言葉を語らせ、ボディランゲージを加え、情報を大量に投入する「リッチ」「フル」志向が強い。一方、「ポケモン」の人気キャラクター《ピカチュウ》を見れば分かるように、日本製アニメは「省略」を大事にしている。ピカチュウとサトシ少年の心が通じるのも、言葉を超えたコミュニケーションだからこそ尊いというのが、日本的な考え方なのだ。それは貧しさを出発点にしてるからこそ、世界に通じるものかもしれない Pokemon, le film ©Collection AlloCiné / www.collectionchristophel.fr Kung Fu Panda ©Paramount Pictures France様式として研ぎ澄まされてきた日本のアニメの表現力が、芸術として世界的にも注目されている。そこには何か大きな国際的な交流の可能性が潜んでいる。それは、もしかしたら当事者の日本人自身が気付いていないことかもしれない。アニメの持つボーダレスな可能性が大きく育つことに期待したい。 *1 1シーズンは3カ月間。1年のうち、4~6月、7~9月、10~12月、1~3月に分けられる |


Appleseed : Ex Machina ©"Ex Machina Film Partners, Micott & Basara Inc., Toei, Takaratomy, Sega, Tyo, Digital Frontier, Toei Video"
Pokemon, le film ©Collection AlloCiné / www.collectionchristophel.fr
Kung Fu Panda ©Paramount Pictures France


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