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マダム・ヒサダ直伝 チーズの楽しみ方
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美食の国フランスは食材の宝庫。世界三大料理のひとつに上げられるフランス料理では、使われる食材によって調理法も千差万別。そのフランス料理になくてはならない食材のひとつがチーズだ。とはいっても、その種類は多く、フランスだけでもおよそ1000種類以上もあると言われている。そこで、パリでチーズの熟成士として活躍するチーズ王国のマダム・ヒサダにチーズの楽しみ方を伺う。 (Texte et photo par Hajime Yanagisawa) チーズの歴史チーズは牛、羊、ヤギなどのミルクを原料にして凝固、発酵をさせて作られる乳製品。多くの文献ではアジア大陸で偶然に発見されたと言われているが、大きな流れとしてはギリシャがチーズの発祥地のようだ。保存日数に限度のある生乳を固形に加工し、塩漬けにした食料品がご存じフェタ・チーズ。このフェタは、ローマ帝国を仲介してさまざまな地域に伝えられ、その土地それぞれで独自の発展を遂げていった。しかし、当時チーズはあくまでもタンパク質を多く含む食材として考えられており、チーズを単独で楽しむ食料品として発展させたのはフランスのみである。 現在はチーズに含まれる成分と体に及ぼす作用などを科学的に説明出来るが、古人はそれらを体で知っていたという。乳製品には消化を助けるビフィズス菌が多く含まれており、フランス料理で食後にチーズを食べるようになったのも、そんなチーズの特性を知ってのこと。つまり、フランスのチーズの歴史はフランス料理の発展と共にあるのだ。ちなみに、チーズの発展には修道僧が大きく関わっている。当時、ヨーロッパで修道僧といえば政治や科学などさまざまな分野に精通する重要な人物。フランスではマロワール(Maroilles)、ベルギーではマレッツ(Maredsous)などが有名。 チーズの種類一口にチーズといっても、その種類は多く、初心者には迷いどころ。しかしチーズは大きく分類すると6種類あり、パーティーでフランス人を招待するときなどは、この6種類を基本にそろえるのがコツだ。 マダム・ヒサダが選んでくれた一般的な6種類のチーズ
上段左から
エポアス(Epoisse) ロックフォール(Roquefort) プチ・アグール(Petit Agour) 下段左から サン・ノン(Sans Nom) カマンベール(Camembert) ガエック・シュマン・ド・フルリー・サンドレ バジルー(Basilou) 日本とフランスの違い日本ではワインブーム到来と共に欧州ナチュラルチー ズが輸入されるようになったが、一般的によく目にするのはプロセスチーズ。熟成させることで味を深めるナチュラルチーズとは違い、プロセスチーズは加熱溶解させ発酵を止め、長期保存を可能にしてあるので、常に同じ味を楽しむことが出来るのが特徴だ。イギリスからアメリカへ欧州のチーズが伝えられた後、十分な保冷器機のない状態でも長期保存を可能にするために開発されたのがプロセスチーズ。日本にプロセスチーズが多いのは、そんなアメリカからチーズ文化が広まったからである。欧州のチーズが輸入されるようになった現在でも、日本のチーズ市場でプロセスチーズが重要な位置を占めているは、チーズを単品で摂取する欧州とは違い、ハンバーガーなどの具材として使われることが多いからだろう。フランスにもプロセスチーズは存在するが、人気では圧倒的にナチュラルチーズへ軍配が上がる。さらに、日本とフランスの違いはミルク。日本の場合、乳製品の原料となるミルクは必ず殺菌消毒を施さなければならないのに対して、フランスでは自然のままのミルクをチーズの原材料として使用することが可能なのだ。当然、殺菌されたミルクの場合はチーズの熟成に不可欠な微細菌の数も減るので、たとえ同じ製造工程を踏んだチーズであっても味の差は歴然。チーズはワインと一緒で原産地(terroire)が非常に色濃く表れ、本当に美味しいフランスのチーズはフランスでしか食べられない。 熟成士とはナチュラルチーズは大きく分けて2つの段階を経て出来上がる。牛、羊、ヤギなどの生乳を凝固、発酵させてチーズの原型を作るのが第1段階。この段階で完成となるのがフレッシュタイプのチーズで、熟成を必要とするチーズはこの行程でチーズの表面もしくは内部にカビを植え付けるなどの加工を施す。第2段階では、第1段階で出来上がったチーズを自然の持つ微細菌の力で熟成させるのだ。ナチュラルチーズの場合は、プロセスチーズとは違い熟成具合によって味が変化するので、チーズの出来は熟成士の腕に掛かっているといっても過言ではない。 しかし、どんなに腕の良い熟成士であっても基本となるチーズの品質が悪ければ決して良いチーズには仕上がらないのが難しいところ。熟成の知識だけではなく、チーズの良い作り手を見極めることも熟成士には必要。フランス各地を訪問し、大自然の恵みを育んだ新鮮な生乳と腕の良い作り手を探し当てるのが熟成士としての最初の仕事だ。 良いチーズが手に入ったら、次は熟成士の腕の見せどころ。熟成させたチーズは味が強くなると考える人もいるが、「熟成士によって食べ頃に熟成されたチーズは、チーズ初心者が食べても美味しい」とマダム・ヒサダは言う。チーズの初心者は、大手販売店のチーズよりも若干値段は高くなるが、まず専門店で代表的な6種類のチーズを食べ比べてみよう。専門店のチーズはどれも食べ頃に熟成されたものばかりなので、きっと自分の好みのチーズが見つかるはずだ。 フランスではどんなチーズが好まれるのかチーズの国フランスでは、フランス人それぞれが自分の好みのチーズをはっきりと持っているので、一概にどのチーズに人気があるのかを挙げるのは難しい。しかし、フランス人に共通しているのは“食べ頃”のチーズを“2~3日分”購入することだろう。 マダム・ヒサダは「チーズは生きているので、出来るだけ買い置きせずに購入してから2~3日中に食べきるのが理想」だと言う。彼女が日本でチーズの販売を行っていた時は、仕事が忙しくて時間が出来たときにまとめてチーズを買いに来る客もいたが、チーズが一番美味しい時に味わってもらえないのは残念だと感じていたそうだ。 チーズ選びのコツはワインと同じで自分の好みを熟成士に伝えること。「初心者向けの」とか「一番人気のある」といった漠然な要望ではなく、「臭みが少ない」「ハードタイプ」「○○の料理と合わせたい」など具体的な内容を伝えてみよう。チーズを買うのに慣れてきたら、フレッシュ(fraîche)、中間(entre les deux)、完熟(très affinés)、シェーブルチーズでは乾燥熟成度合いを乾燥(très sec)、半乾燥(demi sec)や、牛、羊、ヤギなどベースとなるミルクの種類など、チーズの種類や特性を伝えれば、その日に一番食べ頃のチーズを選んでもらえる。 白カビタイプ
牛乳などを原材料とするチーズで、表面が白カビに覆われている。熟成させると、とろりとコクのあるソフトチーズが出来上がる。 カマンベール、ブリーなど フレッシュタイプ
熟成させず、製造過程の第1段階で仕上げるチーズ。酸味のあるさわやかな味わいが特長で、人気のあるチーズのひとつ。 フロマージュ・ブラン、フェタなど ヤギ乳タイプ
ヤギ乳を原材料としたチーズでフランスではシェーブルと一般に呼ばれている。フランス料理にも多く使われる人気チーズのひとつ。 主なチーズ:クロタン、サント・モールなど ハード&セミハードタイプ
出来上がったチーズをプレスして水分を調整したチーズ。ハードタイプとセミハードタイプがある。子ども向けのアニメでよく登場するチーズはこのタイプ。 主なチーズ:セミハードはトム・ド・サヴォア、ハードタイプはエマンタールなど ウォッシュタイプ
塩水や酒などで荒井ながら熟成させるチーズ。独特の強い香りを持つが、中身は柔らかくコクがある。 主なチーズ:セミハードはトム・ド・サヴォア、ハードタイプはエマンタールなど ブルータイプ
チーズの中に青カビを繁殖させ、内部から熟成させるタイプのチーズ。香りが強く濃厚な塩味が深い味わいを醸し出す。 主なチーズ:ロックフォール、ブルー・ド・ブレスなど チーズはどのように保存するの?食べ残ってしまったチーズは必ず冷蔵庫の野菜室(ブルーチーズはチルド室)で保存しなければならない。しかし、この時チーズがむき出しの状態では、冷蔵庫内の他の野菜などの菌が付着してチーズの品質を落としてしまう。また、チーズは生きているので完全密封されてしまうラップでくるむのではなく、タッパウェアのような容器で保存するのが一番安全。チーズの種類によって保存方法が違うので、購入時に教えてもらうのが一番だが、買い置きをするのではなく2~3日で食べきれる分だけ購入するようにしよう。
マダム・ヒサダ
1985年日本でチーズ専門小売店「チーズ王国」を展開。1995年フランスチーズ鑑評騎士(シュヴァリエ)を取得。1999年チーズの本場フランスで本格的なチーズの熟成を学ぶために渡仏、フィリップ・オリビエ氏に師事。2000年ギルドデフロマジェよりジュレ叙勲。2002年フランスチーズ鑑評騎士(オフィシエ)2006年、フランスチーズ鑑評騎士最高位のグランオフィシェ叙勲。2008年ギルドデフロマジェの最高位(メートル)取得。現在パリ16区にてチーズ専門店を展開中。Fromagerie Hisada 17, rue le Marois 75016 Paris TEL : 01 42 88 34 30 FAX : 01 42 88 34 30 www.madame-hisada.jp www.hisada.biz |




1985年日本でチーズ専門小売店「チーズ王国」を展開。1995年フランスチーズ鑑評騎士(シュヴァリエ)を取得。1999年チーズの本場フランスで本格的なチーズの熟成を学ぶために渡仏、フィリップ・オリビエ氏に師事。2000年ギルドデフロマジェよりジュレ叙勲。2002年フランスチーズ鑑評騎士(オフィシエ)2006年、フランスチーズ鑑評騎士最高位のグランオフィシェ叙勲。2008年ギルドデフロマジェの最高位(メートル)取得。現在パリ16区にてチーズ専門店を展開中。


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