
ツール・ド・フランスのスタート目前!せっかく自転車大国フランスにいるなら、ロードバイクを手に入れて、天気の良い日はサイクリングに出掛けてみよう。手に伝わる石畳の起伏の振動、ペダルを回して得られるスピード感、聞こえてくる自分の呼吸音、森林の心地よい匂いや照りつける陽の光が最高のぜいたくを与えてくれるだろう。移動手段としての自転車ではなく、乗ることそのものが目的の自転車。その楽しさを思う存分体に注ぎ込もう!(Texte par Kazuyoshi Ashidate & Masato Enya)
初めてのロードバイクはこうやって選び、
こうやって乗ろう!
ロードバイク(Véloroute)は舗装された道路を走ることに特化した自転車で、実用自転車とは性能も値段も大違い。そのスピードやギアチェンジのスムーズさなどは、初めて乗る人には感動ものだろう。ただしその分、自転車選びも慎重に。
購入後のメンテナンスを考えて自転車屋さんやDecathlon、GoSportといったスポーツ用品量販店でお店の人と相談しながら決めるのが一番。気を付けることは、体に合ったものを選ぶこと。無理な体勢でのサイクリングは体を痛めるので危険。試乗可能ならサドルからハンドルまでの距離やペダルまでの高さを試して、無理のない体勢で運転出来るものを選ぼう。次は、部品のチェック。各パーツにこだわれるのもロードバイクの楽しみのひとつ。フレーム(cadre)のメーカーや重さ、前後の変速機(dérailleurs)や車輪(roues)にどんなものが使われているのか、インターネットなどで各部品のグレードをチェックしながら探すと分かりやすい。
ロードバイクは実用自転車と乗り方も違う。ロードバイクは、サドルに座った状態で足は地面に届かないもの(止まっている時はサドルから前に下りて車体をまたぐような格好で足を地面に着ける)。サドルに座ってペダルが真下にある時に足が少し曲がる程度のサドルの高さでペダルを回そう。ペダルを回すと きはグイグイ踏むのではなく、軽めのギアで、足の親指の付け根でクルクルと回すように。そうすればひざを痛めることも防げ、疲れも少ない。ハンドルはブレーキレバーの根元を上から包むように持ち、ブレーキを掛けるときは片方だけでは危ないので左右同時に。最近のロードバイクならギアチェンジはブレーキレバーのところにギアを変えるレバーが付いているので、スピードと足への負担を考えながらこまめにギアを変えて、楽にペダルを回すことが長時間のサイクリングを無理なく楽しむコツだ。
サイクリング必携アイテム
普通の自転車ではちょっと行けない遠くまで足を伸ばせるのもロードバイクの魅力。ただし準備はしっかりと。
●携帯用の空気入れと替えのチューブ(Chambre à air)
途中でパンクしたら大変。パンクしたときの準備は必ずしておこう。パンクは穴をふさぐよりチューブごと交換してしまう方が楽。替えのチューブはいくつか持っていこう。タイヤレバーと工具も必携だ。
●地図
目的別、コース別などさまざまな自転車用の地図があるので、自分に合った自転車コースが載っているものを選び、必ず持参しよう。インターネットのGoogleMapなどで調べた地図をプリントアウトして持っていくという手も有効だ。
●水と食料
サイクリングで水は不可欠。夏の暑い時などは水なしでは脱水症状になりかねないので、必ず持っていこう。チョコレートなど高カロリーの食料や、スポーツ用品店などで購入可能なエネルギー補給用の食べ物やドリンクも重宝するだろう。
中古自転車を探してみよう!
ロードバイクは普通の自転車に比べると高価。入門タイプでも300ユーロ、良いものになると4000ユーロ以上のものもざら。そんなときは中古車を探してみてはどうだろう。自転車人口の多いフランスだけあって、良いものが見つかることも多い。アノンス・サイト「PriceMinister」やオークションサイトの「eBay」でも売りに出ている。ちょっと面白いのが、自転車専門のアノンス・サイト「Troc-Vélo」(www.troc-velo.com)。アノンスを出している人も自転車に詳しい人が多く、各部品が詳しく記載されていたり、情報が細かく載っていたりするので便利。プジョーなどフランスの自転車メーカーにこだわって探してみたり、とにかく値段の安いものを探してみたり、探し方もいろいろ。質問や交渉はサイトを通じて売り手とコンタクトを取れるようになっているので、気になるマシンがあったらコンタクトを取ってみよう。

自転車専門のアノンス・サイト
Troc-Vélo(www.troc-velo.com)
インターネットで中古自転車を購入するとき は、自転車の状態やパーツ、サイズなど不明な点をしっかりと質問しよう。また自転車の受け渡し方法や連絡先なども事前にきちんと確認すること。連絡や個人情報のやり取りなどは慎重に。
これだけはそろえよう!
ロードバイクを手に入れたら、メンテナンスや簡単な修理、それから安全・快適にサイクリングを楽しむための道具もそろえておきたい。
● ヘルメット(Casque)
転倒など万が一のために必ずかぶろう。
● 気圧計付き空気入れ(Pompe)
ロードバイクのタイヤには常に空気をしっかり入れておこう。最も重要で基本的なメンテナンスなので、気圧計付きの空気入れできちんと規定の空気圧を保つように。
● 工具(Outil)
ハンドルやサドルの調整など簡単なメンテナンスや調整に欠かせない工具。2~6mmの六角レンチとプラス、マイナス・ドライバーがひとつになったものが便利。
● タイヤレバー(Démonte-Pneu)
パンク修理のときにタイヤを外すためのプラスチック製の工具。チューブ交換のときに車輪を傷めないように使う。
● 自転車メンテナンスの本
ロードバイクを長く快適に使うための実用書。オイル注入方法、各部所の調整、掃除など簡単なメンテナンスは自分で出来るようになろう。そうすれば、自分の自転車に愛着もわくこと間違いなし。
服装は、運動可能な格好ならさほど気にすることもない。ズボンのすそが巻き込まれたり汚れたりする恐れがある場合は、ゴムやすそ止め用のバンドを使って止めておこう。靴もペダルと固定できる専用のシューズがあるが、初心者はスニーカーなどで良いだろう。ただし靴ひもが巻き込まれると危険なのでひもはしっかりと靴の中に入れるか、靴ひものないものを履こう。レーサーパンツや自転車用のウェア、シューズなど、フランスでは種類も豊富なので、一通りそろえてツール・ド・フランスの選手気分で走るのも悪くない。

ロードバイクを手に入れたら、早速サイクリング。パリ近郊でフランス人レーサーに交ざって走るも良し、ちょっと遠くに足を伸ばしてみるも良し。フランスの風景に溶け込んでいく感覚や普段と違った旅の面白さにきっと病みつきになるだろう!ロードバイクをこれから始める人のために、パリ近郊で楽しめるサイクリングコースを紹介しよう。
サイクリングに行く前にこれだけは注意しよう
ロードバイクは車と同じく車道を走る。快適で楽しい乗り物だけど、事故に遭わないとも限らない。事故には充分気をつけよう。①車道の右側を走ること。自転車専用道路や自転車走行が許可されているバスレーンがある道路では、必ず自転車のレーンを走ろう。②歩行者には十分気を付けて。自転車は車と違い音がしないので、歩行者がこちらの存在に気付かず、飛び出してくることもある。③右折・左折や交差点を横切るときなどは、後方の車などに注意して、必ず手信号で合図を送ろう。
ブーローニュ・ヴァンセンヌ
ブーローニュの森の中にあるロンシャン競馬場周辺はロードレーサーのメッカ。休日ともなると、大勢の人でにぎわう一周約3.5kmのコースがある。またヴァンセンヌの森にも一周約3kmのコースがあるのはご存知だろうか?
これらのコースの魅力はなんといってもレース気分を味わえること。道路の状態も良く、初心者でも時速30kmで走り続けることも難しくないので、ロードバイクのスピード感を味わうにはうってつけ。サイクリングはひとりで走るのと、集団で走るのとでは大違い。集団内では空気の流れが出来、風の抵抗も軽減されるため、はるかに楽に走れる。そろいのジャージでトレーニングをしている集団もいれば、50代、60代のおじさんたちで結成されたサークルもいて、それぞれが合流したり離れたり、いつのまにかツール・ド・フランス並みの大集団になっているなんていうことも。
もちろん森の中で「のんびりサイクリング」も十分楽しめる。車や信号の心配をしないでペダルを回せる環境は格別で、緑に囲まれた森林浴サイクリングだって楽しめる最高のコースだ。

左)ヴァンセンヌ: レーサーたちに交ざって走ってみよう!
右)ブーローニュ: 休日になると本格的なレーサーたちでにぎわう
ブーローニュの森はロンシャン競馬場の周りがコースになっているので、パリの 地図でも場所は簡単に確認出来る。
【注】競馬開催日は、競馬場の周りが自転車通行禁止になるので、競馬場がレースの日はチェックしておこう。ヴァンセンヌの森はAv. Daumesnilを真っすぐ進みヴァンセンヌ城の前に出よう。城を左手に、駐車場を右手に見て、駐車場が終わるところから右折してRoute de la Pyramideに入れば500m程でオベリスク前に着く。その向かいが周回コースの入り口。
ベルサイユ
ベルサイユ宮殿を訪れたことがある人は多いかもしれないが、自転車で行ってみた人はどれくらいいるだろうか?パリから約15km。30分程で達成出来る上に、広い道路が続き、自転車レーンが設けられている区間も多いので、初めての遠出には向いている目的地。適度な疲れと自分の足で目的地に到達する達成感が心地良く感じられることだろう。
宮殿に着いたら庭園の中も自転車で回ってみよう。側面の庭園に直接通じる門から入ると、牧草を食(は)む羊たちがのほほんと過ごす中を走るゆったりサイクリングが楽しめる。トリアノン宮殿も訪れることも出来れば、庭園の隅の方の緑深い小道を通ることも出来るので、観光の範囲もぐっと広がるはずだ。
自転車で行くベルサイユは電車で行くのとは別の味わいがある
Pontde Sèvresを渡ってパリを出たらD910道路に従って真っすぐ。そのまま走っていると県道D10(Avenue de Paris)に自然と入り、正面に宮殿が見えてくる。パリから外にサイクリングに行く時や帰り道では、境になる大きな道路やロータリーに注意しよう。複雑な道路ではしっかりと地図を確認しながら慎重に。
ウルク運河
ヴィレット公園からウルク運河沿いにClaye-Souillyまで自転車専用道路が整備されている。坂道も信号もないので、30kmという距離も負担にならない。5kmも走っていると運河の水質が変わってくるのが分かり、景色も緑が多くなってくる。15km程走るとスブラン国立森林公園を通過、持参したサンドイッチを食べるのにちょうどよい。森林公園を出てしばらくすると、舗装されたばかりの走りやすい道路に変わる。ついつい速度を出しがちになるが、野ウサギの飛び出しには注意しよう。
運河ではヌートリア(沼狸、ragondin)に会えるかも
ヴィレット公園ではウルク運河とサン・ドニ運河を間違えないように注意が必要。ジョレス駅から運河の南側(ヴィレット方面に向かって右側)を進むとよい。

世界で最も有名な自転車ロードレースのひとつ、ツール・ド・フランス。96回目となる今年は、20チーム総勢196名が7月4日にモナコをスタートし、時計回りにフランスを一周して26日にパリのシャンゼリゼでゴールする(全21ステージ、計3,445km)。フランスでは他にも数多くの自転車ロードレースが行われているが、パリ中心部が舞台になるのはツール・ド・フランスのみ。自転車乗りなら誰もが憧れる夢のレースを、今年こそ是非体感して欲しい。


マイヨ・ジョーヌと呼ばれる黄色のジャージが優勝者に与えられるということは聞いたことがあるかもしれないが、他にもさまざまな賞があり、エースをアシストする役割の選手たちにも表彰台が用意されている。
- 個人総合タイム賞(マイヨ・ジョーヌ)
ステージ毎にタイムを競い、合計タイムが最も早い者にマイヨ・ジョーヌが与えられ、次ステージでマイヨ・ジョーヌを着用出来る。パリに到着した時にマイヨ・ジョーヌを与えられた(キープした)者が総合優勝の栄冠を手にする。
- 山岳賞(マイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュ)
山岳地帯に設けられたポイント区間で獲得したポイントの合計が最も高い者に与えられる。ポイントは山岳の等級、通過順に応じて異なる。
ポイント賞(マイヨ・ヴェール)
各ステージの着順とスプリント区間で獲得したポイントの合計が最も高い者に与えられる。
最優秀若手賞(マイヨ・ブラン)
25歳以下の選手の中で最もタイムの早い者に与えられる。当該年齢であれば何度でも受賞可能。
- チーム総合タイム賞
ステージ毎にチーム上位3名のタイムが加算され、その合計タイムが最も早いチームに黄色地のゼッケンが与えられる(通常は白地)。
- 敢闘賞
ツール・ド・フランス関係者からなる審査団によって、ステージ毎に最もアグレッシブな走りをした者が選ばれ、赤地のゼッケンが与えられる。全ステージの終了時にはレース全体の敢闘賞も選ばれる。

第1ステージ
Monaco - Monaco
15,5km 7月4日
モナコの市街地を舞台に、1分置きにひと
りずつスタートする個人タイムトライアル形式で行われる。集団走行と異なり常に空気抵抗を受けるため、自転車やヘルメットの仕様を変える選手がほとんどである。
第7ステージ
Barcelone - Andorre Arcalis
224km 7月10日
今大会最長コース。徐々に高くなってゆく3つの峠を越えなければならない。しかもゴール手前では7,1%の急傾斜が10km続き、クライマー(grimpeur)の最初の熱い戦いが繰り広げられる。
第13ステージ
Vittel - Colmar
200km 7月17日
ヴォージュからアルザスへと向かう起伏に富んだ中級山岳ステージ。アタック(集団から飛び出して千切りに掛かる)向きで、選手たちの駆け引きが勝負のポイントとなる。
第20ステージ
Montélimar - Le mont Ventoux
167km 7月25日
「プロヴァンスの巨人」モン・ヴァントゥー の頂上がゴール。7.6%の急傾斜が20kmも続き、マイヨ・ジョーヌを狙う選手たちを次々と振り落としていく。最終ステージを残し、おそらくここで勝負が決まる。ツール・ド・フランス7連覇という偉業を成し遂げたランス・アームストロングでさえ、モン・ヴァントゥーではマルコ・パンターニ(2000年)、リシャール・ヴィランク(2002年)に勝つことが出来なかった。
第21ステージ パリで観戦
Montereau - Fault - Yonne - Paris
164km 7月26日
例年、マイヨ・ジョーヌを懸けた戦いが最終ステージまで持ち越されることはなく、すでにマイヨ・ジョーヌは決まっている。しかし、だからといって魅力がないわけではない。今年のコースでは、自転車集団はシャラントン方面からセーヌ川沿いにアラブ世界研究所、オルセー美術館前を通ってコンコルド広場、シャンゼリゼ通りへと抜け、コンコルド広場と凱旋門の手前の折り返し地点との間を8周する。猛スピードで目の前を走り去っていく大集団は圧巻で、初めて見る人には何が起こったのか分からないほどの一瞬の出来事だろう。でもご安心を。何せ8周である。シャンゼリゼ通りで見学場所をおさえておけば、16回見ることが出来るというわけ。これなら写真を撮り損ねる心配もない。何度か見ているうちに、石畳の上を高速で駆け抜ける選手たちが激しい振動に耐えていることもはっきりと分かるようになる。
大集団がパリに入るのは16時頃。その1時間半前にはスポンサーの装飾を施したキャラバンカーの一群がやってくる。この時には既にシャンゼリゼ通り沿道の最前列は埋まっているだろう。しかし、できれば14時前には到着して、人越しではなく目の前で観戦したい。注意しなければならないのは道路の横断が出来ないということ。友だちと現地で待ち合わせをする場合は駅の出口を間違えないように。
レース終了後、観客たちは表彰台の方へ向かい、周辺は大変な混雑となる。でも諦めて帰るのはまだ早い。表彰式の後、全ての選手がチームごと列になって観客に手を振りながらシャンゼリゼ通りを一周する。レース中はどこにいたのか分からなかったマイヨ・ジョーヌもはっきりと確認出来るチャンスを逃す手はない。
今年はランス・アームストロングの復帰に注目が集まっている。ツール・ド・フランス7連覇(1999年~2005年)を達成した直後、一度 は現役を退いたが、昨年秋に現役復帰を表明、今シーズンからレースに出場している。チームメイトのアルベルト・コンタドールは、昨年はツール・ド・フランスを逃したものの、ジロ・デ・イタリア、ブエルタ・ア・エスパーニャで総合優勝を果たし、史上5人目の三大グラン・ツール制覇者になったということもあって、優勝候補の筆頭に挙がっている。山岳コースを得意とする昨年の覇者カルロス・サストレ、2007年、2008年共に個人総合2位に終わったカデル・エヴァンスも上位争いに加わるだろう。そのほか、昨年はチームメイトのサストレをアシストしながらマイヨ・ブランを獲得したアンディ・シュレック、昨年個人総合で61位に終わったもののステージ優勝1回、ステージ毎の敢闘賞3回に加え、レース全体での敢闘賞も獲得したシルヴァン・シャヴァネル、そして1996年以来のツール出場となる日本人選手の活躍にも期待したい。
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