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ある日の事、ニュースダイジェストの編集部から電話があった。
「マルセイユに取材で行く人がいるんですが、
もし迷惑でなかったら福井さんの電話番号を教えてもいいですか?」
「あ、はい、是非。でもな…(んの取材ですか?と言おうとした時)」
「パリからカヌーで行きますから」
「はい?!」
それからちょうど1週間後に電話がかかって来た。
「あ、先ほど港に着きました」
「ご苦労様です!でもごめんなさい!
今日実はマルセイユに居なくて……」
「では、今日はテントで寝ますので、明日から伺いますね。」
「テ、テント?マルセイユで?」
「大丈夫です、慣れてますから」
「あ……はい(慣れてる??てなんだ?)」
次の日7時
「タクシーで行きますから住所を教えていただけますか?」
「(えっ!こんな早い時間?)
あ、出来れば9時半くらいがいいのですが…」
「ではわかりました、その頃伺います」
カヌーを持ち、マルセイユで住所だけ書いた地図を持ってタクシーを探す姿を想像したらちょっと心配になった。
「あぁ、多分ぼられるだろうなー」
9時45分。
真っ黒い四駆が家の前で止まり、黒人の若い男の人がトランクから大きな荷物を取り出していた。 タクシーの標識がない……しかもどう見てもタクシーの運転手じゃなさそう。(この文章を書いていて気が付いたが、マルセイユで黒人のタクシー運転手は見た事がない)
その黒人さんは「Have a nice trip!」と言って、笑顔で手を振って去って行った。 と思ったら、私の目の前に日本のおじさんがいた。
「どーもー吉岡です」
「福井です、はじめまして~大丈夫でしたか?」
「何かあの方凄くいい人で…タクシー乗り場を探していたら『オレが連れて行ってやる』と言って
ここまでつれて来てもらっちゃいました!」
「えっっっ!!!!????」
「しかも、この住所が分からなくて、あの黒人さんタクシーの運転手にGPSで探してもらってたんですよねー。それなのにタクシー使わないで……悪い事しちゃったなー」
「……何か取られたりとか(あくまで疑心暗鬼)。」
「何にもないですよー。お金払おうとしてもいらないって」
「……凄い」
「しかもね、港の前で朝ご飯を食べようと席に着いたはいいんですが、メニューが読めないでしょ?電子辞書で色々調べてたら、
隣に居た3人のフランスご婦人方が助けてくれて…
4人で一緒にご飯を食べました」
「……うっ、よかったですねー。何もなくて本当によかったー!」
「で、昨日はどこに泊まられたんですか?」
「あ、ビューポートです(旧港)」
「えっ(絶句)」
ニコニコ嬉しそうに話す吉岡さん。
庭へと案内するととても喜んで 「カヌーを洗ってもいいですか?」
「もちろんです」
その後、テント、カヌー、洗濯もの、そして自分自身を庭で洗い、芝生で昼寝。クリスティンヌはあまりにも珍しかったらしく、写真を撮ってるミーハーぶり。

慣れた手つきで我が家の庭で洗濯物を干す吉岡さん
この日は日曜日だったので、我が家毎週恒例の「ピザパーティ」が開かれる事になっている。
そこで私の友人を誘い、あまりにも面白い吉岡サン話に耳を傾けた。

今までの体験談にかぶせるように
質問を浴びせかける私たちでありました
そして次の日
「カヌーを日本へ送っちゃおうと思ってるんですよねー」という話になり 「どうせもう使わないならパリまで持って行くより、ここから送った方がいいかもしれないですよね。」
……ということで、大きさ的に不可能だと持って行っても無駄になるので、あらかじめサイズを測り、郵便局で尋ねてみた。
「問題ないわねー」
「わかりました、荷物もってまた来ます。」
吉岡さんは「後は自分で出来ますから」とそのまま別れ、その後は吉岡さんが一人で荷物を持って郵便局に向かった。
その夜
「荷物送れました?」
「やー送れたんですけどねー安かったんですよ!
さっき確認した時に聞いた金額よりもずいぶん安くて……
あまりにも安いので、ちゃんと送れてるのかな?って
ちょっと心配なんですけどね。」
その金額、私が聞いたもののおよそ1/4だった。
「ちょっと不安ですよね……書類、見せていただけますか?」
見せてもらった書類を見て納得。 完全にはかり間違ってる…なんと表示されていた重さは実際の半分以下!
120cmの荷物はきっと天秤に乗り切らず地面に着いたままの計量だったので、そんな重さになってしまったのか……
とにかく優先便で30キロ近い荷物がほぼ国内くらいの送料で送れてしまった…!
吉岡さん、3日間でかなりマルセイユを謳歌してます。
こんなにもマルセイユでいい目に遭ってる人もいないんじゃないかな?
最後の日は、マルセイユ名物?! 魚市場(マルセイユ第1回参照)で買った身の引き締まったマグロと鮫を庭でバーベキューに吉岡さんの送別会。

家族プラスαの小さな送別会でした☆
我が家のもう一人の日本人・増子君が腕によりをかけてマグロを生姜と出汁と醤油で漬け込んで絶妙な焼き加減でサービスしてくれました。
これには吉岡さんも思わず顔がほころんでいます。
「地中海マグロだねー」

「魚、久しぶりなんだよねー」と
思わずうなる吉岡さんでありました。

いい具合に網焼きになったマグロ。
吉岡さん、満面の笑顔です!

もう一人の同居人シリア人のヒバとも
英語でコミュニケーションをとっていた吉岡さん……
さすが!
カヌーを続けて30年以上、プロにならずあくまでも趣味で続けて来たと言う吉岡さんの話を聞いて凄くうらやましかった。
「私も何かしてみたいです、でもなかなか見つからなくて」
「これからじゃないですか!君たちはまだ私の半分も生きてないんだし、私はカヌーを始めたのは39歳の時ですよ」
「えっ?」
「まだまだ先があるんだから、
これから何でも出来るでしょう!がんばってね」
そう話されていた吉岡さんの言葉に凄く感銘を受ける私。
そして笑顔でマルセイユ中央駅「サンシャール駅」からTGVに乗り、ニュースダイジェストのあるパリへと戻って行きました。

生き生きとした笑顔でマルセイユ中に
何かを残して行ったと思われる吉岡さん
「危ない・危険!」とされているマルセイユで(否定したいけど…やっぱりまだ他の地域に比べると治安がよい方ではありません)何事もなく、むしろラッキーな事に遭遇してばかりの吉岡さんには、きっと「ピンチをチャンスに変える力」を持ちつつ、まわりの人に影響力を与えるオーラを持っているのかもしれません。
そう言う人と出会えて、お話を聞けた事だけでも凄くよい経験になりました。 ニュースダイジェスト編集部の方のおかげです!
いつかまた是非来ていただきたいと、私を含め、関わった全てのマルセイユ人は思っております。
ところで何の取材で来たんでしょうかね?吉岡さんは……
皆さんも気になるところだとは思いますが それは、9月号のニュースダイジェストのお楽しみです!!!
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