パリを彩った外国人
ナタリー・サロート

| ナタリー・サロート |
Nathalie Sarraute (1900-1999)1950年代、物語のプロットや登場人物の性格設定、時間の流れといった従来の小説の在り方を壊すヌーヴォー・ロマンと呼ばれる文学の潮流が興った。ナタリー・サロートはその流れの先駆けともいえる作家である。 1900年にロシアに生まれたサロートは両親の離婚や再婚に伴って、幼年時代をロシアとパリで送り、本格的にパリに住んだのは1909年頃のことであった。その後、ソルボンヌやオックスフォードで英語、美術史、法律などの学業を修め、フランスで弁護士となる。 彼女の文学活動は1936年に出版された短編形式の作品「トロピスム(Tropismes)」に始まる。元来トロピスムとは、植物学で植物が光などの刺激に対して一定の方向に曲がっていくことを意味するが、サロートはそこから「意識の中にあり、言葉と行動の先に存在しそれらを準備する内面の動き」をこう名付けた。「トロピスム」は当時大きな注目を集めていた詩人マックス・ジャコブの賞賛を得、続く長編「見知らぬ男の肖像(Portrait d'un inconnu)」にはサルトルが序文を付し、大物に支えられたサロートだが、従来の小説とは全く異なった彼女の作品に対する読者の反応は実際のところ良くなく、彼女の作品が受け入れられるまでにはしばらく時間を要した。だが、次第に「心理の流れ」や「会話の下にあるもの」「感性が捉えるもの」を描く彼女の作品は理解されるようになり、いまでは20世紀を代表する作家のひとりに数えられるまでになったのである。「プラネタリウム(Le Planétarium)」や文学エッセイ「不信の時代(L'Ère du soupeçon)」など多くの必読の作品を残し、99歳で彼女はこの世を去った。
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塩谷祐人(ENYA Masato):明治学院大学大学院を経て、現在パリ第VII大学に在籍。亡命文学をテーマに博士論文を準備中。 |



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