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20 Mai 2010 No 904

ロイック・ルギャル

「美術本でアートするデザイナー
─オブジェとしての美術本」

ルギャル氏が手掛けたカトリーヌ・フィルマン=ディド著「L'oeuvre dévoilée (ベールを脱いだ名画)」(Editions Palette)の表紙
ルギャル氏が手掛けたカトリーヌ・
フィルマン=ディド著「L'oeuvre
dévoilée (ベールを脱いだ名画)」
(Editions Palette)の表紙

美術展覧会の楽しみの一つにカタログがある。展覧会が素晴らしいと、記念にカタログも手元に欲しくなる。展覧会は良いのに、カタログはいまひとつの場合やその反対もある。レコードやCDのジャケット買いのように、書店や図書館でも、本の装丁やデザインがきれいだと思わず手に取って見てしまう。そんな美術本や展覧会カタログを専門とするグラフィック・デザイナーがいる。ロイック・ルギャル氏だ。国立写真センターやヨーロッパ写真美術館の展覧会、Mois de Photo(写真月間)のカタログのデザインなど、美術本のデザインを数多く手掛ける。

アトリエでピクトグラムと植字術を5年間学んだ後、97年から兵役のため、マリ共和国の首都バマコのフランス文化センターで文化事業に2年間携わる。この2年間がルギャル氏の現在の仕事に導くきっかけとなった。バマコの文化センターではアフリカの現代美術、写真を扱う企画展が数多く開催され、デザイナーとしてカタログを手掛けるようになったのだ。初めて携わったのは、毎号1人の芸術家を特集した24ページの文庫本サイズの薄いカタログ。価格は5ユーロで販売された。限られた大きさ、ページ数の中で、各芸術家の世界をほうふつさせなければならない。展覧会企画者、出版社、展覧会の空間デザイナーや美術収集家、そして芸術家本人と話し合い、本の仕様(大きさ、向きなど)、掲載する作品の選択、ストーリ性や順序、表紙タイトルや文章の植字デザイン、行間スペース、紙の材質、加工(マット、光沢など)、印刷の色のニュアンス、色調を決めていく。2000年以来、ルギャル氏が始めたこのカタログのシリーズ「Carnet de la création」(Edition de l'oeil)は今日も続き、10年間で100冊に到達している。今ではすっかり定着し親しまれている、角が丸く薄い文庫本のようなルギャル氏の装丁は、限られた予算やほこり、印刷設備やスキャナーの質など、バマコ時代に直面した数々の問題の下に生まれた苦肉の策であった。

書籍デザインのプロとして、ルギャル氏は書籍におけるオブジェとしての意味合いを大切にする。表紙の後に控えの見返し、題名用の本扉などにもデザインの工夫を凝らす。1枚1枚ページをめくる楽しみもルギャル氏ならではだ。画を目立たせたい場合は右ページに画を掲載し、文章は左ページに。書籍やカタログによっては文章を強調するために文章を右側に載せるなど、工夫を凝らす。

ロイック・ルギャル
アフリカ生活で、黄色いタクシーやブルーの壁など、色に触発させた
というルギャル氏。色とりどりの自身のアトリエで

1981年、値引き競争を制御するために書籍の価格統一(Prix unique du livre)の法がジャック・ラング文化相の下定められた。出版元が定めた定価価格より最大5%までの値引きしか認めないという法律で、大型スーパーや大型書店と小さな書店に値段の差はほとんどない。販売競争は書店それぞれの書籍選択の個性にかかり、その結果、出版元もオリジナリティのある書籍を生みだす。美術本では、装飾を凝ったり、楽しい遊び感覚を演出してみる。芸術作品の販売目的のカタログも、掲載作品の順序は販売のそれによって決まっているものの、イメージの選択を入念に行ったり、実用的な情報などをあえて掲載しないなど、美術本との差異が縮まり、オブジェとしてより美しい本を作る傾向になってきた。カタログ全体の統一性を出すため、広告においても植字やレイアウトをグラフィック・デザイナーが修正することがある。

現在はデザイナー業の傍ら、マラケシュとアミアンでグラフィック、特に植字術を指導するルギャル氏。インターネット文化が定着する中、美術本の価値向上と、書籍を自身の作品として世に出すことに奮闘している。



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