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2 Septembre 2010 No 911

知って安心フランス薬局事情 フランスの薬局に行こう!

Pharmacien一般用医薬品(市販薬)でさえ自由に手に取って選ぶことのできないフランスの薬局。慣れないと不便に感じるかもしれないが、健康保険の還付を受けられたり健康相談ができたりするなど、便利な一面もある。フランスの薬局事情を知り、上手に利用する方法を紹介する。

(Texte et photo: Ayumi Le Hoang)

協力:原美和子(日本で薬科大学卒業後、製薬会社、薬局勤務を経て渡仏。パリ大学薬学部修士課程)、アメリカンホスピタル日本人セクション


医薬分業が徹底しているフランス

ヨーロッパにおける医薬分業の歴史は中世にまでさかのぼる。陰謀に加担する医師によって王などの権力者が毒殺されることを防ぐため、診察するあるいは死亡診断書を書く「医師」と、薬を厳重に管理する「薬剤師」を分けたことが原点だ。フランスでも医薬分業の制度は中世の時代に取り入れられ、現在まで徹底して行われている。

フランスでは2002年から医師が商品名ではなく成分名で処方せんを書いてもよいことになり、同じ成分の商品の中から薬剤師が選んだ薬を患者に渡すことができるようになった。医師が指示した場合を除き、フランスの薬剤師は医師に許可を取ることなく医師の処方した薬を後発(ジェネリック)医薬品に替える権利も有している。

ギリシャ神話に登場する健康の維持や衛生を司る女神ヒュギエイアが携えている蛇と杯をモチーフにした「ヒュギエイアの杯」マークのバッジ。薬剤師の資格を持っていることを示す

ヒュギエイアの杯のバッジ

市販薬でも対面販売が一般的

市販薬
カウンター越しに陳列される市販薬

フランスの薬局に行きまず驚くのが、薬を自分で手に取って見ることができない対面式販売が一般的であること。鎮痛剤や胃腸薬でさえ、薬剤師に頼まないと箱を手に取ることができない薬局が多い。2008年7月の法改正により、処方せん不要の市販薬のうち政府が定めた一部の薬品は消費者が自由に手に取ってパッケージを見ることができるようになったものの、この販売方法はまだ浸透しているとはいえず、従来通りカウンター越しの薬剤師に出してもらう薬局が多いのが現状だ。

箱単位での販売

添付文書
箱入りの薬に入っている添付文書。分かりやすいフランス語で詳しく書かれている

例えば1日3包3日分の薬が処方された場合、日本であれば9包を渡されるのに対し、フランスでは15包入りの1箱が渡される。フランスの薬局では、処方薬でも箱単位での販売となるからだ。結果的に医師が書いた処方せんよりも多めの薬を渡されることもしばしば。

このように、箱単位での販売が常であるフランスでは購入した医薬品を余らせてしまうことが多い。そこで1990年代には、使用期限切れの薬や個別包装になっている不要な薬を薬局で回収し、貧しい国に寄付していたこともあった。しかし、未開封の薬をそのまま販売する薬局が出現し、さらにこの行為自体が違法と見なされ2008年に活動は終止した。医薬品を通常のゴミと一緒に処分すると有害物質が発生する可能性があるため、現在では使用期限の過ぎた薬や余った薬は薬局で回収し、環境に影響を与えない方法で処分されることが義務付けられている。

夜間・休日の割り増し料金

多くの店がシャッターを閉めるフランスの日曜日だが、フランスにはPharmacie de garde と呼ばれる当番制の夜間・休日薬局開店義務があり、各町や地区で最低1軒の薬局が夜間や休日も営業する。緊急当番薬局は、夜間・休日時間帯に薬を販売する場合、処方せん1枚につき4ユーロから6ユーロの割増料金を請求する権利を持ち、店によっては処方せんなしの薬にも割増料金を課すことがある。普段から休日も営業している薬局にはこの権利はなく、特に都市部では徴収しない薬局も多い一方、地方や個人経営の比較的小さな薬局では徴収することが多いようだ。※ 夜間・休日営業薬局コールセンター:3915(0.15€ TTC / min)


カプセル数字でみるフランスの薬局


35軒フランス国内在住10万人に対する薬局数。2008年の調査によればフランス全土にある薬局の数は 22,514軒で、2,856人につき薬局1軒の割合。ちなみに日本では、10万人対の薬局数は41.7軒で、2,395人につき薬局1軒。

  日本 フランス
人口 1億2769万人 6430万人
薬局 53,304軒 22,514軒

出典:厚生労働省、Ministère de la Santé et des Solidarités


5分フランス薬剤師会(Ordre des pharmaciens) が2009年に行ったアンケートによれば、自宅から最寄りの薬局へのアクセスに掛かる時間は5分。日本の約1.8倍の国土を考えると驚異的な数字ではあるが、薬局のカウンター越しでないと薬品を購入できないことが多いフランスの医薬品販売システムは、過疎地に暮らす人にも便利な医薬品のインターネット販売開始に大きな壁となっている。


30億箱薬フランスで2009年に販売された薬の箱数。1人 当たり1年間で47箱の薬を購入している計算。このうち処方せんなしで購入可能な市販薬の販売数は2億箱で、1人当たりの年間消費量は3.1箱。
出典:Ordre des pharmaciens

フランスの薬局を便利に使おう!

薬局コスメを使ってみよう

日本ではスキンケア=化粧品と捉えられることが 多いのに対し、フランスではスキンケア=医薬品と捉えられることが多い。フランスにはデルモ化粧品(Dermo-Cosmetique)と呼ばれる皮膚科医や薬剤師が 研究・開発したスキンケア製品があり、肌のトラブルを持つ人は、まず皮膚科医の診断を受け、処方せんをもらって化粧品を購入するか、薬剤師のアドバイスを受けながら購入するスタイルが定着している。スキンケアは楽しむための化粧品というより、肌トラブルの解消や乾燥や敏感肌対策のために使う医薬品、という認識が強いようだ。フランスの薬局にたくさんのスキンケア製品が並ぶのはこのような理由がある。

スキンケア商品
医師に処方されたスキンケア製品を求めに薬局に来る人も少なくない

乾燥した気候のフランスで日本にいる時と同じスキンケアをしていると、肌が乾燥し、乾燥性湿しんを患ってしまうこともあるという。フランスの気候に合わせ て開発され、安全で有効な効果が期待できるものが多 いデルモ化粧品を上手に利用することが望まれる。フランスに来てから肌のトラブルに悩むようになった人は、例えばシャンプーやせっけん、ボディークリーム は保湿性の高い製品を使い、こまめな保湿を心掛けるなど皮膚の乾燥を防ぐよう心掛けが必要だ。

処方せんを書いてもらおう

日本で使っていた薬がある場合、まず英語やフラン ス語での医薬品名を用意しよう。その際、商品名ではなく薬品名を調べておくとスムーズだ。どのような症状のためにその薬を服用しているのか、薬品の含有量、妊娠している場合はその旨もメモすることを忘れずに。処方せんが必要な薬の場合は、このメモを見せ、医師にフランス語の処方せんを作ってもらおう。これまで の服用期間や、どんな症状で服用しているかなど基本的な質問と診察で通常は処方せんを書いてもらうことができる。

処方せん
処方せんは2枚つづりが通常

アレルギーなどの慢性疾患で薬を服用している場合、最長で1年間有効の処方せんを書いてもらうこともできる。薬局では一度に数カ月分の医薬品をまとめて渡すことができないが、処方せんの有効期間内なら同じ 薬を保険適応価格で購入することができる。ただし、医師が処方せんを発行した日から3カ月以内に一度も薬を購入しない場合、処方せんは効力を失うので注意。

健康保険を利用しよう

薬の種類にもよるが、医師の処方せんによって処方される薬は、健康保険(Assurance Maladie)が適応されるものが多く、任意の医療保険、ミュチュエル(Mutuelle)に加入している場合は患者の負担なしで購入できる薬も少なくない。政府の定めるいくつかの例外品を除き、医師の処方せんがあれば健康保険が適応 される。処方せんを書いてもらう際、医師に保険の適 応可否を教えてもらうことも可能だ。医師の診察を受けるのは手間が掛かるが、処方せんを書いてもらうことで自己負担額が少なくなるのはありがたい。

フランス健康保険サイト: www.ameli.fr

バーコード
バーコードの色は、健康保険で賄われる率を示す。白は65%、青は35%、オレンジは15%、また×印が付いているものは100%の代金が健康保険でカバーされる

健康保険料の払い戻し方法

健康保険証(Carte Vitale)のICチップ付きカードを持っている場合、薬局で支払いの際にCarte Vitale を出せば、健康保険の還付額が差し引かれた料金で購入できる。Carte Vitale を持っていない場合は、一度自己負担で全額支払い、薬局で払い戻し請求用紙(Feuille de Soin)をもらおう。

薬局の名前と住所の入ったスタンプが請求用紙と処方せんに押してあることを確認し、薬の箱、バーコードシールの「vignette」と書かれてある部分をはがし請求用紙に貼る。氏名や住所などの必要事項を記入し、管轄の疾病保健初等金庫(CPAM:Caisse primaire d'assurance maladie)に送付、または直接持って行く。

フランスの薬剤師が選んだジェネリック薬品を患者が拒否し、先発医薬品を要求する場合、薬局によっては患者が一度全額を支払わなければならないことがある他、健康保険の還付額も低くなる。

Carte Vitale を持っていない場合は払い戻し請求用紙を記入の後CPAM に送付すると後日銀行口座に払戻金額が振り込まれる

Carte Vitale

かかりつけ薬局をつくろう

英語で対応してもらえる薬局や、自宅や職場に一番近い薬局、説明が丁寧など、利用しやすいかかりつけの薬局をつくっておくといざというときに安心だ。健康相談や薬の質問なども気軽にでき、家族構成やライフスタイルを薬剤師が把握することで処方せん不要の薬を購入する際はより体質に合った薬を提示してもら える可能性も高くなる。また、各地域や地区で営業している薬局は、その地域の医師や医療機関も熟知しているため、緊急時に対応してくれる医師、評判の良い医師や小児科、ホメオパシー治療をしてくれるなどの情報も教えてもらうこともできる。薬局で教えてくれる地域密着型“口コミ”情報は、情報化の進む現代でも容易に得られるものではなく、大きな価値がある。

常備薬を買おう

医師の処方せんがなくても購入可能な市販薬は簡単に使用することができるが、アレルギーや服用中の薬がある人、妊娠・授乳中の人、また2~3日使用しても症状に改善がみられない場合は薬剤師や医師に相談 しよう。市販薬とはいえ、慢性的に服用すると肝臓や 腎臓に支障をきたす恐れがあるので、長期間の服用は 控えること。またフランスの錠剤などは日本のものと 比べて大きいことが多いが、自己判断で規定の量を増減して服用せず、規定の服用量を厳守するか、不安な場合は薬剤師に相談しよう。

フランスでは大きい錠剤が多い。
1ユーロ硬貨と比較しても明らか

常備薬

あると便利!フランスの常備薬

鎮痛・解熱剤(Analgésique)
Doliprane……アセトアミノフェン配合の鎮痛解熱剤
Nurofen……イブプロフェン配合の鎮痛解熱薬

風邪薬・総合感冒薬
(Traitement au cours des rhumes)

Fervex……ぬるま湯で溶かして飲む風邪薬。子供用、大人用がある

下痢止め・整腸剤
(Traitement symptomatique d'appoint de la diarrhée)

Ultra Levure……自然由来の成分を配合した整腸剤

せき止め(Traitement symptomatique des toux)
Toplexil……大人、子供兼用のシロップ

胃腸薬(Traitement contre maux aux ventres)
Maalox……消化不良、胃痛、腹部の張りなど症状に合わせて3タイプある

消毒液(Solution antiseptique)
Diaseptyl……傷口などの消毒に使用

パリ市内年中無休営業の薬局

Pharmacie Les Champs
84, av des Champs Elysées 75008 Paris 【地図】
TEL: 01 45 62 02 41
M: George V①

Pharmacie européenne
6, pl de Clichy 75009 Paris‎ 【地図】
TEL: 01 48 74 65 18‎
M: Place de Clichy②⑬



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