kanada-ya
Thu, 06 October 2022

第26回 グローバライゼーションと消費者主権

今回は、グローバライゼーションの帰趨を決めるのは、結局は企業、資本ではなくて消費者だということを具体例を挙げながら書きたい。

大相撲の多国籍化

まず、日本帰省時の印象から始める。大相撲の土俵入りを久しぶりにテレビで見ると、力士の多国籍化、外国人の多さに驚く。年がばれるが、昔はハワイの高見山、曙、武蔵丸位だった。現在では、横綱の朝青龍は別にしても、大関琴欧州(ブルガリア)始め、幕内力士のうち3分の1弱が外国人となった。7人がモンゴル、ロシア2人、ブルガリア、グルジア、韓国がそれぞれ1人である。さらに調べてみると、幕下には23歳以下の外国人力士は19人おり、同年齢の日本人力士の数とほぼ同じである。この数字はいずれ番付上位の力士のほとんどが外国人で占められてしまう可能性を示している。相撲協会は危機感をおぼえ、各部屋の外国人力士の数をこれまでの2人から、さらに1人へと制限した。力士は部屋の移籍を認められておらず、1人が引退したからといってすぐに関取の補充ができるわけではないので、非常にゼノフォビックな方策である。

しかし、結局相撲の将来を決めるのは、相撲協会ではなく観客である。しかも相撲ですら観客はもはや日本人とは限らない。国技館は、NHKの衛星放送による日本語と英語の実況中継を流している。ロンドンでもケーブル・テレビで相撲を見られる。この前乗ったブラックキャブの運転手はMLBと大相撲の大ファンで、雅山の技をどう思うか、大関になると思うかとしつこく聞かれた。国技館の伝統的な弁当とお土産の相撲茶屋の一つが改装されて、ハンバーガー、ホットドッグ、ポテトチップス、ビールなどを売るファーストフードのチェーン店に衣替えしたらしい。

製品輸入から労働力そのものの輸入へ

貿易が盛んになると、各国は得意な(自国で安く生産できる)製品を作り輸出し、その代金で不得意な製品を輸入する。こうした比較優位によって各国が豊かになるというのがグローバライゼーションである。日本人の賃金は高いので、労働力をより使う製品(労働集約財という)、逆に言えば大規模な設備を必要としない製品を安い国から輸入している。衣類や簡単な家電製品、家具などである。これも政府が強制したものではなく、日本の消費者の選択の結果である。

日本のグローバライゼーションは次の段階に入ってきたと感じた。景気回復、不良債権問題の一段落により銀行はじめ各企業はIT投資を活発化させている。システム・エンジニア(SE)は超不足状態である。このためシステム各社は中国やインドにアウトソースすることはもちろん、最近ではインド人やフィリピン人を日本に招いている。東京の江戸川区にインド人コミュニテイが出来ているという新聞記事を目にする。そういえば、東京駅でインド人を多く見かけた。2年前にはなかったことである。飛騨高山では中国人観光客が大きな収入源と聞いた。日本のスキー場では韓国人旅行客の誘致が盛んだ。JR各社も駅の看板を日英中韓の4カ国語表示としている。要は、製品の輸入からサービスを提供し、消費する人の移住、移動が日常レベルに浸透してきている。もちろんロンドンのコスモポリタンには及びもつかないが、こうした動きも、人口減少国、ある程度豊かになった国の消費者の選択の結果という。

これからの消費者

日本人は国産の愛用者で、1億3000万もの規模を持つことが羨ましいと人口が半分の韓国のサムソンの担当者は言っていた。確かに国産好きの人は多いが、若い人ほど外国製品に抵抗は少ない。現にサムソンのテレビはもはや安かろう悪かろうとは言えない。そのうち中国のハイアール製家電もそうなるだろう。レノボ(中国のパソコン・メーカー)のパソコンを使う人もいる。製品のみならず、日本のすし、柔道、ゲームなど価値のあるものは世界の消費者に選択されて世界化している。決め手は消費者自身の選択である。突き詰めると最後まで障壁として残りそうなのは日本語とそうした言語を発達させてきた日本という米作農村的なメンタリテイだけで、それは、日本の消費者に対する日本企業のアドバンテージになるように思う。これを経済やシステム開発の世界では「日本語障壁」と言っている。

逆にいえば、日本以外の消費者に製品やサービスを売る場合のハンディである。ITでも英語圏で作られたパッケージの日本仕様への変換が、追加コストになる。英国で日本の携帯やカードが使えず、また日本でその逆も使えないことを想起されたい。

それでも消費者の選択の力は政府などよりはるかに強力である。小学校から英語を教えて日本人が英語に慣れるか、英語を日本語に変換するソフト開発が充実するか。やはり後者の方が早いと思う。

(5月13日脱稿)

 
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Mr. City:金融界で活躍する経済スペシャリスト。各国ビジネスマンとの交流を通して、世界の今を読み解く。
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