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Wed, 10 August 2022

第12回 アフリカの飢えと貧困(1)

ロンドンから見つめるアフリカ

アフリカ地図ロンドンに住んでいると、日本にいるときよりはるかにアフリカは身近だ。アフリカ出身の人が周りにもいるし、街でもそれらしき人を見かける。アフリカの報道も新聞、テレビでよく目にする。アフリカの地図をご覧いただきたい。スーダンで部族間内戦に伴う飢えと暴力にさらされる人々、ニジェールで飢える人々。原油高騰の恩恵を受けた産油地であり、パイプライン通過地域でもあるオクリカの王宮のグロテスクなまでのきらびやかさ、同じく産油国ナイジェリアで原油収入の配分を巡った部族間対立。サハラ砂漠以南では、人口の8%、妊婦の30%近くが陽性というほど広まったAIDS感染。一方でロンドンの冬でも半袖でいられる家で食べるアイスクリーム、大量に出るプラスチックゴミ(英国では分別回収によるリサイクルもない)、自家用ジェットで週末イタリアに出かけるヘッジファンドのマネジャーたち、すし屋の一貫3、4ポンドの握り。でもロンドンのアフリカ人は陽気な人が多く、英語が日本人より絶対うまい。このアンバランスをどう受け止めるのか、このまま続くのか、これが今回の問題である。第1回目は現状把握、次回からは対応策について考えたい。本題に入る前に、もう少しアフリカの現状について輪郭を見ておきたい。上の囲みを見て感じるのは、アフリカが世界経済の環の最弱点であり、それゆえに問題が集約されているということ、これからの非常に大きな発展可能性とそれが地球という星に与える影響の大きさである。

経済面での遅れの理由

次にアフリカが、どうして全体として今日のように欧米、アジアに経済面で遅れをとったのか簡単に見ておきたい。約1万年前の農業の始まり以前は、アフリカは世界の先進地域であった。アフリカのホモサピエンスは、欧州のネアンデルタール人やアジアのホモエレクトスを圧倒して人類の主流を占めていた。しかし、野生動物の家畜化と野生植物の栽培化は、人間の定住と集中、富の集積を可能とし、これが権力と専門職を産み技術発展の原動力となった。四大文明発生地でのことである。そして家畜、栽培植物そして技術はすぐにユーラシア大陸とさらに北米大陸へと、気候の類似する東西の地域へと伝播していった。ところがアフリカでは、もともと気候の関係で家畜化するような動物や野生植物が少なかったうえに、南北に長い大陸が、ユーラシアからの技術の伝播にブレーキをかけた。当然だが、南北の違いは日照時間、気候、季節の違いを意味し、動植物の適合性に大きな負担を求める。そこから先は、欧米、アジアでの権力のぶつかり合い、すなわち戦争でさらに発展した技術により、アフリカは侵略され植民地となっていった。技術移転はある程度は行なわれたが、植物はそう簡単には適合できず、農業の生産性は低いままであるし、そうであれば資本蓄積もなされず、自前の技術もできない。

発展の相対的な遅れ

そうすると自国民への教育でもますます差は開く。狩猟生活による自給自足のうちは物々交換でよいが、植民地化し欧州の文明を知ってしまうと、衣服、テレビなどを買いたいのは人間としてある意味でやむをえない。そうすると金がいる。金を得るためには、国際通貨であるドルが必要である。ドルを得るためには、何かを売る必要がある。原油など資源が豊富な国は、それを掘るのが手っ取り早い。資源のない国は、細々と農業を行い、それを近隣諸国に売るか、観光で旅行者に金を落とさせる。そうしたことさえ無理な国は、人間を輸出して、出稼ぎをして食べていくことになる(語学力を生かしてアフリカから旧宗主国へと渡る移民者は多い)。資源国では、資源を握る特定層の力が強くなる。また資源のない国でも、他に産業がないことから非常に政府の力が強くなる。ジンバブエのムガベ大統領がよい例だが、いずれにせよ独裁色の強い政治体制となりがちであり、教育水準の低さと相まって民主主義国は少ない。これが悪循環となり、富裕層から徴収する税金により政府が行なうべき医療や教育(性教育やコンドーム配布も含め)が十分でなく、伝染病やAIDSの蔓延が止まらない。一方で、欧米の商人や最近は中国までもが、政府に武器を売り、その武器がさらに暴力装置としての政府の力を強めている。こうした不安定な政情、低い教育、医療水準の国には、企業が工場進出することはないし、地元の人が起業しようと思っても、先進国の銀行は絶対に金を貸さない。私企業にとっては、あまりにリスクが高過ぎるからである。そうすると貸すことができるのは先進国政府ということになり、援助やODAが多くなされている。国連認定の世界の最貧国50カ国のうちアフリカには34カ国がある。それでも経済が改善しないので、過去の分を帳消しにして援助を増やそうというのが、今年7月のグレンイーグルスサミットでブレアとブラウンがすすめた案であった。

中国の影響

ここで注意すべき問題は、アフリカ諸国の経済状態が好転しないどころか悪化し、生死にかかわる人が出てきているのはなぜかということである。それにはここ数年程度の大きな世界経済の変化、特に中国の経済発展が関わっている。中国の工業的な経済発展は、原油など鉱物資源と穀物相場を高騰させた。鉱物資源の高騰は、アフリカの特定国の特定部族や特定の人に大きな富をもたらした。これが政情不安になり、金をめぐって内戦が起きる原因となっている。また、よく報道されるニジェールの飢えは、比較的豊作でも起こっている。これまであまり飢饉のなかったところである。しかし穀物相場の高騰は、アフリカ周辺諸国での買い急ぎを生み、ニジェールの農民は、自ら食べる分の一部まで国外輸出した。このため国内での穀物価格が急騰、大半の低所得層は穀物が買えなくなった。先進国なら輸入して安売りする人が必ずいて、価格メカニズムが働くのだが、所得の低い国では金がないため輸入ができない。中国の影響は、世界経済の環のもっとも弱いところを直撃した。次回からは、対応策の現状と希望について書きたい。

数字で見るアフリカ
■ 人口9億人、25歳以下71%、難民(国内外)3000万人弱、1歳までの死亡率10%、平均余命46歳(サハラ砂漠以南)、最大の死亡原因AIDS
■ 経済規模GDPは2004年で世界の2%(欧州は35%、米国は29%、日本は11%、中国は4%)、農業就業者66%、毎日1ドル以下の収入の人が50%超、携帯電話の普及は5200万台・鉱物資源、森林資源、観光資源が豊富
■ 民主主義国/国家数: 19/53、欧州各国の植民地でなかった国:3カ国(エチオピア、リベリア、南アフリカ*)
*英国人が入植、アパルトヘイトで支配
■ 識字率60%(ブルキナファソでは13%)
Sources: National Geography9月号

(2005年10月19日脱稿)

 
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Mr. City:金融界で活躍する経済スペシャリスト。各国ビジネスマンとの交流を通して、世界の今を読み解く。
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