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Thu, 07 November 2024

Life at the Royal Ballet バレエの細道 - 小林ひかる

第16回 エンターテイメントのるつぼ、ラスベガス

1 September 2011 vol.1316

多国語
親友とともに、「ファントム劇場」にて

夏休みの後半に訪れたのは、私の親友が住む米ラスベガス。

ラスベガスと言えば、何と言ってもカジノ& ショーの街!! 空港に降り立った瞬間から始まるエンターテイメント。飛行機の窓から見える光景はとても奇妙なもので、砂漠の真ん中にそびえ立つディズニーランドとでも言いましょうか……。ストリップ地区と呼ばれる、南北に伸びるラスベガス大通りには、巨大ホテルからショッピング・モール、レストラン、アトラクション施設などが連なっています。


そしてそこには、数えきれない程の劇場も存在しています。その中の劇場の一つ、ベネチアン・ホテルの中にある、ファントム劇場では、あの有名なミュージカル「オペラ座の怪人」を上演しており、私の親友がダンサーとして出演しています。この劇場は、約4000万ドル(約30億円)を投じて建設された、「オペラ座の怪人」専用の劇場であるだけに、まるでパリ・オペラ座にいるような雰囲気の客席にシャンデリア、そして大掛かりな仕掛けの数々など驚くばかりの豪華な光景が。ロンドンでも同じショーを観ている私ですが、ラスベガスのショーと比べると、少し寂しいような……。

ラスベガスでは、お客様をカジノに追い込まなければ(?)ならないため、すべてのショーは1時間30分前後と定められているとのこと。上演時間も休憩なしの95分で、ロンドンでの2時間30分版が短縮され、ちょうど良い長さになっています。

週に8回、このショーをこなす彼女は、ラスベガス公演開幕当時のオリジナル・キャストで、2006年から出演し続けています。「毎日、同じことをやって嫌にならない?」と聞いた私に、彼女は「もうそんなの通り越した」と涼しい顔で答えます。彼女に言わせると、主役の怪人は一人しかいなく、5年間、特に病気のときなど以外は毎日同じ人が演じているため、日ごろの疲れで声が裏返ってしまうこともたびたびなのだとか。


そのほかには、人気マジシャン、デービッド・カッパーフィールドによるショーや、「Cirque du Soleil」というサーカス団のアクロバット・ショー「KÀ」を、MGM グランド・ホテル内にある劇場で鑑賞しました。

「Cirque de Soleil」は、ただのアクロバット・ショーではなく、一つの作品として、芸術的で物語性のあるものを作り上げているサーカス団で、このほかにも3 つの違うコンセプトのショーをラスベガスで上演しています。今回私が観た「K À」は、総制作費が1億5000万ドル(約115億円)以上掛かったというのも納得できるほどの舞台設備。上下しながら回転するステージの上や、せり上がった頂上でのパフォーマンスは、息を飲むほど素晴らしく、スリル満点でした。


一つ気になったのは、パフォーマーの危険度。あの装置上であのレベルのパフォーマンスをやるとなると、全員命がけです。週5日、1日2 パフォーマンスをこなす彼ら。あれだけのレベルを毎日危険なくこなすのに、いったいどのようなトレーニングを行っているのか、とても興味があります。バレエも究極なトレーニングを行わねばなりませんが、命がけ……ということはないので。

昔、私のバレエの先生がおっしゃっていた言葉が蘇ります。「怖がらないでやりなさい!死ぬわけじゃないのだから……」。

 

小林ひかる
東京都出身。3歳でバレエを始める。15歳でパリ、オペラ座バレエ学校に留学。チューリッヒ・バレエ団、オランダ国立バレエ団を経て、2003年から英国ロイヤル・バレエ団に入団。09年ファースト・ソリストに昇進した。
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