Mon, 25 September 2023

Life at the Royal Ballet バレエの細道 - 蔵 健太

第4回 「ロミオとジュリエット」の脳内イメージ(2)

17 August 2010 vol.1263

舞台袖に用意されているソード・ボックス舞台袖に用意されているソード・ボックス。
この中から、その日の自分にしっくりくるものを選ぶ

前回に引き続き、今回も「ロミオとジュリエット」で今年、初めて演じたマキューシオの話、2幕編。

まずは2幕のソード・ファイトのシーン。この場面、実は自分が最も大好きで楽しみにしていたシーンで、モンタギュー家の広場に乗り込んできたティボルトを、地元でも剣の実力者として知られるマキューシオが迎え撃つ。

小さい頃から剣道をやっていたせいかどうか分からないが、剣を持つと何故かいつも体がかっと熱くなる。基本的なステップは教えてもらったが、細かいところはかなりアレンジを加えさせてもらった。

1幕では剣一本で戦うが、このシーンでは右手に長い剣を持ち、左手には短い剣を持つ二刀流、まさに気分は宮本武蔵だ。実はこのシーンのリハをし始めたときは、「剣の使い方は上手いがキャラクターが真剣すぎる。もっと相手を茶化す感じでなければ駄目だ」と指摘を受けていた。時代劇好きな自分は、力強く、激しいファイトを好む人物像をイメージしていたので、本番前に「3枚目宮本」をイメージすることに。戦うというよりは、格下相手に殺陣を楽しんでいる風に捉えることにした。


1幕同様、自分の十代の頃の思い出を基にこのシーン背景をイメージすると、他校の生徒が自分の学校に喧嘩を売りに来たが、自分たちの大将がその日はやる気がなかったので、俺が代わりに喧嘩を買ってやる感じ。しかも自分の彼女が見ているので格好つけながら、喧嘩には自信があり絶対的な強さを見せ付けるイメージだ。相手を茶化しながら戦うのは相手に対し失礼だという気持ちの抵抗はあったが、出来上がったイメージには納得している。


そして最後のデス・シーンは、監督とのリハでも一番時間を費やした。ティボルトを散々茶化し、皆の前で恥をかかせたマキューシオが、後ろから不意打ちされ死んでいく場面。ここでは刺されてから息絶えるまで約4分。強さと自信に満ち溢れていたマキューシオが、友人、恋人の前で屈辱を味わいながら、弱りきり死んでいかなければならない。

今まで演じてきた様々なダンサーを見て、イメージは出来上がってはいたのだが、実際やってみるとこれがなかなか難しい。初めてのリハでは自分の気持ちを表現するどころか、決まったステップも満足にできなかった。

困っている俺を見て、監督が「一つひとつのステップに言葉を付けなさい」とアドバイスしてくれた。「言葉を付けることで自然に気持ちが繋がるはずだ」と。それから言葉を付けて稽古をし始め、英語でうまく気持ちが込められないときは、日本語を話すこともあった。歩き方や体に痛みを感じる際の動き方など、細かいテクニックを教えてもらうことで、自分の気持ちも表現しやすくなった。


「死」に対するイメージを得るために、様々な映像も観た。「死」を受け入れるときの気持ちが想像しにくかったので、古い映画から最近までの映画で人が死ぬシーンを見付けては朝まで見続けた。中には松田優作さん、渡辺謙さん、菅原文太さんなどの映像も。その甲斐あったのか、公演後たくさんの人たちに「健太の気持ちが通じた」と言われたのがとてもうれしかった。

一つひとつのステップを重ね合わせることで大きな一つになるということを、初めて教わった。普通なら1+1=2だけど、バレエは1+1=1になると感じている。

これからも自分がまた大きな1になれるように、小さな1を大事にしていこうと思う。

 
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蔵 健太
1978年8月2日生まれ。北海道旭川出身。95年にローザンヌ国際コンクールに出場し、スカラーシップ賞を受賞。ロイヤル・バレエ学校で2年間学んだ後、97年にロイヤル・バレエ団に入団する。現在、ソリスト。http://kentakura.exblog.jp
今後のスケジュール
「Alice's Adventures in Wonderland」3月15日~4月13日(フロッグ役)
(予定は突如変更になる場合があります)
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