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Wed, 09 October 2024
澤山乃莉子さん英国インテリア・デザイン協会正会員
インテリア・デザイナー
澤山 乃莉子さん

[ 前編 ] 築百年以上という住宅が点在し、新築はごくわずかという英国では、住まいづくりにおいてインテリア・デザイナーが重要な役割を果たす。歴史的建造物の良さを生かしつつ、今の時代に溶け込ませる創意工夫。インテリア・デザイナー、澤山乃莉子さんは、古今のみならず、日英の垣根を超えたアイデアで、独自の空間を作り出している。全2回の前編。
プロフィール
さわやまのりこ - 新潟県出身。大学卒業後、日本航空の国際線客室乗務員として4年勤務。その後、10年にわたりホテル/レストラン・マネジメント・コンサルタントとして活躍。1995年に渡英、インテリア・デザインや照明、ソフト・ファニシング、デコラティブ・ペイントなどを学ぶ。2000年、デザイン・オフィスNSDAを設立。ロンドンを拠点に、日英で一般住宅や商業施設のインテリア・デザインや家具デザインを始め、プロ向けのセミナーや、ロンドン・パリ・ミラノのトレンド・リポート作成などを行う。英国インテリア・デザイン協会(BIID)正会員。BIID国際委員。王立建築家協会賛助会員。
www.nsda-uk.com

 

「ごちゃ混ぜ」の美

建物の入口に掲げられているのは、「Boys」と書かれたプレート。地下鉄クラッパム・コモン駅を降りてバタシー方面に歩くこと約10分、ヴィクトリア時代のテラスハウス群の中に、ひときわ大きなレンガ造りの建物が見えてくる。こちら、実は1870年代に建造された学校を2001年にコンバージョンしたもの。「Boys」のプレートのみならず、ヴィクトリア時代の学校ならではのユニークな特徴を内包するこの建物の一角に、インテリア・デザイナー、澤山乃莉子さんの自宅兼ショールームはある。

イギリスのインテリア
吹き抜けになった2階のバルコニー部分から見たリビング

フラットに入って少し廊下を歩けば、元は教室だったという、4.5メートル近くはある高い天井が圧倒的な解放感をもたらす広々としたリビング & ダイニングへ。重厚感のあるソファに、宇宙にたゆたう星屑のようなシャンデリア。唐紙を張り込んだキッチンの壁や、何度も雪にさらして錆さびを出し、その上に漆を幾重にも重ねたキャビネットの金具など、ところどころに和の要素が配置されているかと思えば、天球儀や舞台用の照明が飾られていたりする。様々な要素がそれぞれしっかりとした存在感を主張しつつも、すんなりと一つの世界に収まっている、実に不思議で実に心地良い空間だ。一つひとつの部屋を案内してくれる澤山さんが何度も口にしたのは、「エクレクティック」という言葉。エクレクティックとは、折衷のこと。和洋に限らず、様々なエレメントを融合させるスタイルなのだそうだ。ロンドンを拠点に、英国と日本で住宅や商業施設のデザインを幅広く手掛ける澤山さん、自身のデザインの核の一つがこのエクレクティックだと言うが、彼女の人生そのものもまた、エクレクティックだ。

イギリスのインテリア
和・洋の要素が混然一体となり一つの空間に溶け込む

英国人のインテリアにかける情熱

「世界を見るにはツアー・コンダクターになるか、キャビン・アテンダント(CA)になるかしかなかった」時代、大学卒業後CAになった澤山さんは、3、4年間で世界30カ国40都市を回った。その後、世界各地を見た経験と英語力、そしてホテル暮らしの経験を生かす仕事に就きたいと考えるようになったころ、東京・銀座で数年後にオープンすることになる高級ホテル「ホテル西洋銀座」の準備室から声が掛かった。システムづくりやスタッフ・トレーニングを行い、オープン後もサービス・セクションのチーフとして勤務。その後は会社を興し、ホテル・コンサルタントとして活躍した。「自分の仕事はこれだ!」と思えるほど充実した日々だったが、家族の仕事の都合で渡英することに。そして英国人のインテリアにかける情熱を目の当たりにする。「インテリア関連の学校は数も多ければレベルも高い。ニュースエージェントにはインテリア雑誌がずらり。そこで職業として調べてみると、インテリア・デザイナーは非常に広範な仕事を手掛けているんですね。こちらでは9割がリノベーションで新築はわずかですから、インテリア・デザイナーがイニシアティブをとって、クライアントのライフスタイルを知ることから最終的に完成された空間をつくり上げるまでの全工程を取りまとめる。『これは職業になるんじゃないか』と思ったわけです」。

デコラティブ・ペイントやソフトファニシング、フラワー・アレンジメントなどの勉強を3年ほど修めた後、ポストグラジュエート・ディプロマ*でインテリア・デザイン、大学院で照明デザインを各1年間学んだ。卒業後は10カ月修行した後に独立。コース入学が38歳、そして40歳で起業。本格的なスタートこそ遅かったものの、冷静沈着にインテリア・デザインのビジネスとしての可能性を見極め、最短距離でプロへの道を駆け上った。
*大学とは異なる専攻を学ぶ大学院レベルのコース

 

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