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仕事よりホリデー優先?
日本の祝日に当たる日のことを、英国ではバンク・ホリデーと呼びます。1871年にバンク・ホリデー法が定められ、それまで慣習的に休みだった日に加え、金融機関が休業する日ができました。年によって異なりますが、今年は8日間がこれにあたります。日本の祝日が16日あるのに比べるとその数、半分。では、英国の人々のほうが日本人より働いているのかというと、そうでもありません。
英国の人々は、公に決められた祝日以外に、最低でも1週間、長ければ3週間くらいの長期ホリデーを取るのが普通です。
日本ほどではないにしろ、最近では英国の人々の労働時間が増え、欧州内では労働時間が最長というデータもあります。とはいえ、長期ホリデー取得にかけるこの国の人々の熱意(執念?)は、目を見張るものがあります。その様子を見ていると、ホリデーは仕事より優先されるのが当然という感じなのです。
たとえば夏休みに一緒にキャンプをした友人ファミリー。夫の友人は金融関係に勤め、パートナーは英国気象庁で働いています。2人とも職場では役職についていますが、2泊3日でキャンプをした日を含め、3週間のホリデーだと言っていました。友人によれば、1年の最初に自分がホリデーを取りたい時期を職場のオンライン予定表に書き入れるそうですが、大抵の人は子どもがいて、同じ時期に休暇を希望するので、その調整にはかなり気を遣うそうです。でも、だからといって「ホリデーを諦めるという選択肢はない」ときっぱり言っていました。
また「今年海外に行けない分、来年のギリシャ旅行を予約したから、頑張って働かなくちゃ」と話してくれたママ友もいます。
こうした人々の様子を見ていると、ホリデーにかける意気込みがすごいだけでなく、まずホリデーありきで、それに合わせて1年の予定を決めていくのだというのを感じます。
一般の人々がホリデーにこぞって出掛けるようになったのは、産業革命の時代。蒸気機関車の発明によるところも大きく、ヴィクトリア時代には鉄道でイングランド内の海辺に行くことが人気となりました。
ここ2年はパンデミックの影響で難しくなっていますが、格安エアラインの登場などもあり、1970年代以降は英国から欧州のビーチ・リゾートというのが定番の旅先となっていました。ヴィクトリア時代も現代もホリデーに求めるのが「お日さまと海」というのは変わっていないようです。
ホリデー先ではただのんびりとビーチで読書をしたり、散歩をするのが英国流。日本人のように次から次へと観光名所巡りをしたり、お土産探しに忙しくする、ということはありません。