Thu, 18 September 2025

英国の
愛しきギャップを
求めて

英国に暮らして20年。いまだに日々のあらゆる場面で「へー」とか「ほー」とか「えー」とか言い続けている気がします。住んでみて初めて英国の文化と人々が、かくも奥深いものと知りました。この連載では、英国での日常におけるびっくりやドッキリ、愛すべき英国人たちの姿をご紹介したいと思います。


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無言で帰宅していた訳

無言で帰宅していた訳

先日、日本から英国に移住してまもない方とおしゃべりする機会がありました。英語については多分私よりずっと流暢に話せる方ですが、日本と英国の習慣の違いには、いろいろと戸惑うこともあるそう。特にあいさつの習慣については、日本とはかなり違うと感じていらっしゃるようです。

そんな話をしていたら、私も渡英直後に分からないことばかりで、ただでさえ英語ができないのに、すっかり無口になっていたことを思い出しました。

たとえば、日本ではあたりまえの「行ってきます」「おかえりなさい」というあいさつ。日本でなら、家族関係が少々ぎくしゃくしていようとも、朝、家を出るときや、夜、帰宅するときには、誰もがこの言葉を掛け合います。でも、英国にはそういう表現はありません。

渡英時に日本から持ってきた電子辞書で調べた私は、最初のホームステイ先で「アイム・ホーム」と言って帰宅したことがありました。しばらくして、小学生の長男が「マミ、家に帰ってきたときに『アイム・ホーム』って言わなくていいよ」と教えてくれました。「ではなんて言ったらいいの?」と聞くと「さぁ、何にも言わないか、『ハロー』かな」という答え。それからしばらくは、ステイ先に戻ってドアを開けても、数日間、何も言いませんでした。大家さんと顔を合わせると「今日はどうだった?」と聞いてくれるので、それからやっと口を開くという感じだったのです(その後は「ハロー」と元気よくドアを開けて帰宅するようになりましたが)。


夕飯は家族と一緒にいただいていたのですが、テーブルにお皿が置かれると、皆それぞれがいきなり食べ始めるのにも、なんだか違和感がありました。

私が「日本では食事をする前には『いただきます』、食べ終わった後には『ごちそうさま』というあいさつをする」と伝えると、子どもたちはおもしろがって、しばらく私の真似をして、たどたどしい日本語で「いただきます」を言っていました。ホスト・ファミリーに「英国での食事のときのあいさつは?」と聞くと「ふつうは何も言わずに食べ始めるけれど、もしあえていうとすれば『ボナ・ボナペティ』かな。ま、英語じゃないけれど」と笑って教えてくれました。

我が家では、最近では子どもたちとの会話も英語のほうが断然多くなっていますが、「行ってきます」「おかえりなさい」「いただきます」「ごちそうさま」のあいさつは、夫も含め、家族みんな日本語で言い合います。これに関しては、家庭内ではこれからも日本流を貫きたいと思っています。

 

マクギネス真美マクギネス真美
在英ライフコーチ/編集者/ライター。2003年渡英。英国の食、文化、人物、生活などについて多媒体に寄稿。ポッドキャスト「The Real You with Mamita」とVoicy「英国からの手紙」のパーソナリティー。英国人義母に習い英国料理の研究もしている。
mamimcguinness.com
過去のコラム:英国の口福を探して
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