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英国の秋といえば栗よりこの実

かつてホームステイをしていた家の裏には、大きな公園があり、いつも子どもたちがフットボールやクリケットで遊んでいました。一角にはブランコや滑り台、砂場のある柵で囲われた遊び場があり、その横には大きな木が2本植えられていました。
秋になると、その木の下に、茶色い木の実が落ちているのを見つけました。表面がすべすべしていて、日本の栗によく似ています。幼いころにはときどき家族で栗拾いに出かけて、栗ご飯やゆでたままの栗をおやつにしていたほど栗が大好きな私は、うれしくなって、その木の実を拾いポケットに詰め込み始めました。ところが、少し行ったところにあった殻を見たとき、自分が勘違いをしていたことに気付きます。それは日本で拾っていたイガイガの栗の殻とはずいぶん違う、肉厚で突起がでているマッサージ・ボール(?)のようなものでした。
がっかりしたものの、木の実を部屋の机に飾っておくのもかわいいかな、と三つほど持って帰りました。家に戻ってホームステイ先の大家さんに聞くと、これはコンカーというものだとわかりました。木はホース・チェスナッツ(日本では西洋トチノキ)といい、実の方をコンカー(トチの実)と呼ぶのだそうです。「子どもたちがもっと小さいころには、コンカーズで遊んでいたけどね」と大家さんが言いました。
コンカーズというのは、トチの実に穴を開けてからひもを通したもので遊ぶゲームです。一人の人が相手のコンカーに向けて自分のコンカーをぶつけ、コンカーが割れたら負けというもの。ルールは単純ですが、シンプルだからこそおもしろいということもあってか、英国ではずっと長く楽しまれてきたものです。
とはいえ、近年では子どもたちがこの遊びをしている姿はめっきり見ることはありません。少し古いニュースですが、2013年のBBCの記事にはケンブリッジシャーのある小学校の校長先生が、地面に落ちているコンカーを子どもたちが眺めているものの、どう遊べばいいのか分かっていない様子を見て、この遊びを導入しようと思い、「コンカーズ」を子どもたちに教えることについて保護者に手紙を書いたとあります。学校でわざわざ昔ながらの遊びを教えるというのは日本でも事例はあるかもしれませんが、コンカーズのような遊びは日本にはないような気がします。ちなみに英国にはThe World Conker Championshipsという大会があり、そこでの収益金はチャリティーに募金されています。遊びを競技大会に結びつけるところと、チャリティー活動につなげるところが、いかにも英国らしい気がします。
ということで、英国の秋を象徴する木の実といえば、日本の栗とは似て非なるコンカーです。あなたはご存じでしたか。



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マクギネス真美






