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Tue, 21 September 2021

英国のゴミ事情
今、知りたいFOOD WASTEのこと

ここ数年で「フード・ウェイスト」という言葉が定着し、これに対するさまざまな取り組みが世界中で行われている。エコロジーから社会格差まで、フード・ウェイストが現代社会の多くの問題と繋がっているのはご存じの方も多いだろう。今回は、改めてフード・ウェイストの何が問題なのか、問題解決のために英国ではどんな取り組みが行われているかをご紹介しよう。「食べ物を粗末にしてはいけない」という昔からの素朴な教えが、現在驚くほど重く響く言葉になっている理由が分かるはずだ。
文: 英国ニュースダイジェスト編集部

今、知りたいFOOD WASTEのこと

参考: Eco Networks、10 Facts About Food Waste by Biffa、lovefoodhatewaste、insinkerator、 Waste and Resources Action Programme(WRAP)ほか

そもそもフード・ウェイストとは?

日本語でもフード・ウェイスト(Food waste)という言葉は定着しつつあるが、つまりは食品廃棄物のこと。食品の製造や加工の過程で発生する廃棄物や、流通時の売れ残り、消費後に発生する調理時のゴミや食べ残しなどの総称だ。フード・ロス(Food loss)という言葉もあるが、こちらは厳密には製造・加工・流通の時点で廃棄されてしまう食品を指す。この特集では、英国でよりなじみのあるフード・ウェイストという言葉に統一する。

世界の食料生産量の3分の1にあたる約13億トンの食料が毎年廃棄されていることから、国連は2015年、世界全体の一人当たりのフード・ウェイストを2030年までに半減させると約束した。ただし、どのような方法でこの目標を達成するかは各国政府や企業にゆだねられており、世界共通のマニュアルがあるわけではない。ただ、もし国連の目標が達成されれば、少なくとも10億人分の食品が無駄にならずに済むという。

英国のフード・ウェイストあれこれ

英国の食料、どれだけムダになっている?

残念なことに、英国のフード・ウェイスト量は欧州一という結果が出ている。1年に1400万トンというこの数字は、スペインの廃棄量のほぼ2倍。スーパーマーケットが乱立するロンドンを見れば驚くにはあたらないともいえるが、企業だけではなく、一般家庭が行動を起こさない限り、この数値は自然に減少することはない。

欧州の年間フード・ウェイスト量 欧州の年間フード・ウェイスト量

英国で出る1400万トンのフード・ウェイストのうち、約50パーセントが一般家庭から排出されたもの。平均的な4人家族の家庭が1年間に無駄にする食料は金額にして約700~800ポンドで、年間で購入した食料の18パーセントを廃棄していることになるという。

フード・ウェイストの原因 フード・ウェイストの原因

製造から流通の過程では、曲がっているなど見た目の悪い野菜が廃棄される、調理済み食品が運送時の温度・湿度で腐敗する、そして店頭での販売期限切れを迎えるなど、どの段階においてもフード・ウェイストが排出されている。

英国家庭でムダになっている食品のベスト10
  1. ジャガイモ
  2. パン
  3. ミルク
  4. 料理(手作り/惣菜)
  5. 炭酸飲料
  6. フルーツ・ジュース/スムージー
  7. 豚肉/ハム/ベーコン
  8. 鶏肉/ターキー/ダック
  9. ニンジン
  10. ジャガイモ(調理済み)
  11. (2020年WRAP調べ)

2020年、英国の一般家庭で食品が廃棄される理由は、「期限までに食べ切れなかった」がトップ。家庭から出るフード・ウェイストで1番多いのは野菜で、なかでも最も廃棄されるのはジャガイモだという。2番目に多いとされるのはパン類だが、ロンドン市民が1日に捨てる食パンは総数260万枚にのぼり、英国全体では1日2000万枚にも及ぶ。

フード・ウェイストは何がいけない?

Reason 1
食料そのものだけではなく、その食料を育てるためには人件費や土地代、飼料代、肥料代、燃料などもかかっているため、それらも無駄になっている。

Reason 2
水資源を無駄にしている。例えば、小麦を育て食パン1斤を作るまでの過程で約バケツ100杯の水が必要だといわれている。

Reason 3
フード・ウェイストを処理するのにも費用が発生する。商品には廃棄費用が含まれているため、フード・ウェイストが増えれば小売価格も上がることになる。

Reason 4
廃棄物の運送や埋め立て、焼却処理には温室効果ガスが発生する。英国のフード·ウェイストは年間約1900万トンの温室効果ガスを排出している。

Reason 5
食料資源の不均衡な分配が社会問題を引き起こしている。先進国では多くのフード・ウェイストを出しながら、一方で毎日の食事に困る家庭があり、地域によっては飢餓に苦しむ人々が依然として存在している。国連食糧農業機関(FAO)の調査によると、世界の栄養不足人口は8億500万人。これは世界人口の9人に1人に相当する。

ロックダウンの影響は?

政府の調査によると、昨年春のロックダウン以降、英国の一般家庭のフード・ウェイスト量はロックダウン以前の3分の1に減少したという。これは、家できちんと料理をする人が増えたため。年代別では18~44歳までの市民によりその傾向があるという。ロックダウンの規制緩和に伴いフード・ウェイストは再び増加しつつあるが、まだロックダウン以前の数値には戻っておらず、70パーセントの市民が、これからも引き続き食品の無駄を出さないように気を付けるつもりだと答えている。規制が緩和され外食が可能になった今こそ、フード・ウェイストについて考え、ロックダウン中に身に付いた良い習慣は守っていきたい。

フード・ウェイスト削減、企業や団体の取り組み

欧州一のフード・ウェイスト排出国という汚名を返上すべく、2015年に政府がlove food hate wasteというキャンペーンを立ち上げ、本格的にフード・ウェイスト削減に取り組んでいる英国。ここでは特にユニークな活動をする2つの団体を紹介しよう。

Oddbox オッドボックス

オッドボックスはロンドンをベースにした野菜・果物配送スキーム。曲がったキュウリや二本足のニンジンなど、農家で収穫されたものの理想の形ではないため、規格外として店頭に並ばず廃棄される運命にある野菜や果実を割引価格で販売する。地元の農場や市場などから直接仕入れられた農産物は、サブスクリプション方式で週あるいは2週間ごとにロンドン市内の住所に配達。その売り上げの10パーセントは食糧不足と闘う慈善団体に寄付されている。

Oddbox

オッドボックスを立ち上げたのは、ディーパクさんとエミリーさんの2人。休暇で訪れたポルトガルの市場で、形は悪いが美味しい野菜を買い、なぜ英国には不格好な野菜が売られていないのかと不思議に思ったのが始まりだったという。ポルトガルから帰国後、サプライチェーンについて調べたところ、豊作で過剰に収穫された、見た目が悪いといった理由で、作物全体の40パーセントが廃棄されていることが分かった。

現在ではオッドボックスは最も成功した野菜・果物配送スキームの一つ。配達はロンドンのみだが、1箱£10.99から始めることができる。一時停止、キャンセルはいつでも可能で、配達の数日前にはオンラインでどんな農作物が来るかが分かる仕組みだ。

www.oddbox.co.uk


ミディアム・ボックスの場合(野菜&果物、£15.99)

リーク、ターニップ、茎ブロッコリー(紫)、ナス、コジェット、レタス、バターナッツ・スクワッシュ、ジャガイモ、オレンジ、リンゴ、キウイ、プラム

The Felix Project ザ・フェリックス・プロジェクト

ザ・フェリックス・プロジェクトは、そのままでは廃棄されてしまう質の良い余剰食品をサプライヤーから救出し、それを慈善団体や学校などに再配布するロンドンのチャリティー団体。2016年に設立されて以来、食糧不足に悩む人々をサポートしつつ、余剰食品の削減も実現させるという二つの活動に同時に取り組んできた。

新鮮な果物や野菜に限らず、パン、サラダ、肉や魚を多く含む、高品質で栄養価の高いものを、スーパーマーケット、卸売業者、農場、レストラン、デリなど、539を超えるサプライヤーから収集。それらの食品を分類し、ロンドンの約1000の慈善団体、小学校などに送っている。それにより、無駄になっていたはずの食べ物が、低収入家庭、ホームレス、メンタルヘルスの問題を抱える人々など、定期的に健康的な食べ物を買う余裕がない人々に届けられる仕組みだ。

The Felix Project

新型コロナに見舞われた2020年、ザ・フェリックス・プロジェクトはかつてないほど多くの食料を提供。19年に640万食だった配布が20年には2110万食に跳ね上がった。同団体は世界的なパンデミックのなか、できるだけ多くの人々を助けるために事業を3倍に拡大し、多くのボランティアが参加。そして、8339トンの余剰食料を救出することで、4万1695トンの温室効果ガス削減にもつながった。これは、1年間に9000台の車が排出する量に相当する。同団体は現在、毎日12万5000食分の食料を廃棄から救出、配達しており、毎週26万6560人のロンドン市民を救っている。

https://thefelixproject.org

フード・ウェイスト削減、個人にできること

英国で出るフード・ウェイストの半分以上が一般家庭から排出されるものであることは先に述べた。では、私たちはまず何を見直せばよいのか。当たり前なのに忘れていることから、ちょっとしたトリビアまで、一人ひとりが食生活を見直すヒントをご紹介する。アプリを使ったフードシェアリング・サービスなどもあるが、ここではいかに自分のフード・ウェイストを削減するかという観点から考えてみた。

計画的に購入

究極の削減法、それは余計な食材・総菜を買わないこと。とは言ってもむやみにストイックになる必要はない。当たり前ともいえる事柄に気を付けていたら、自然と買う量が減るはずだ。労を厭わずこまめに確認、計画すれば無駄な食費も削減できる。

  1. 買い物に行く前に冷蔵庫や戸棚に入っている食材を確認し、何が入っているか把握する。賞味期限にも気を配る。
  2. 買い物に行く前にきちんと献立を考える。
  3. 必要な食材をメモして買い物に行く。
  4. 単に安いという理由で余計なものを購入しない。

期限をチェックする

食材に記されている期限の全てが賞味期限ではないのでよく確認を。

Use by
消費期限: 安全に食べられる期限。期限を過ぎたら食べない方が良い。

Best before / Best by
賞味期限: 美味しく食べられる期限。期限を過ぎても色や味などに異状がなければ食べて良い場合もある。

Display until / Sell by
販売有効期限: 食品の質に関する期限ではなく、店舗側が使用するものなので、買い物する際は気にしなくて良い。

正しく保存

袋入りのジャガイモなど、1度で使い切れない野菜は気が付いたら芽が生えたり根が生えたり、干からびたりと形も味も変わり廃棄される運命をたどりがちだ。大袋ではなくバラで購入するのがベストだが、もしも余ってしまったらカレーやシチューなど野菜を一気に大量消費できるレシピに頼る方法もある。しかし調理したものも余ってしまい、手をかけた挙句に廃棄するという負のスパイラルにはまることもあるのではないだろうか。つまり、なるべく野菜をフレッシュなまま保存できるならそれが1番良いといえる。ここでは、家庭から出るフード・ウェイストで1番多いとされる野菜を、日持ちさせるための方法をご紹介。

ジャガイモ、玉ねぎ

ジャガイモ、玉ねぎ

いずれも新聞紙に包んだり紙袋に入れて冷暗所へ。ジャガイモは日にあたると芽から毒素ができてしまう。また、玉ネギと一緒に保存するとエチレンガスのせいでジャガイモの成長が早まって発芽してしまうため、別々が良い。

トマト、メロン、ナス、ピーマン

トマト、メロン、ナス、ピーマン

暖かい地方の野菜や果物は基本的に常温で保存したほうが良い。冷蔵庫に入れる場合は腐りやすいのでラップをする。

リーク、ネギ

リーク、ネギ

暑さにも寒さにも強いが乾燥に弱いため、新聞紙に包んでビニール袋に入れ冷暗所に立てて保存。

カリフラワー、ブロッコリー

カリフラワー、ブロッコリー

軸の切り口は濡らしたペーパータオルで包み、全体を新聞紙に包んでビニール袋に入れ冷暗所または冷蔵庫に保存。

ニンジン

ニンジン

頭部分を落とし、濡らしたペーパータオルで包んでビニール袋に入れ冷蔵庫へ。

マッシュルーム、きのこ

マッシュルーム、きのこ

新聞紙に包んでビニール袋に入れ冷蔵庫へ。

ほうれん草、レタスなど葉物

ほうれん草、レタスなど葉物

根の部分を洗い、水分の残った状態でそのまま新聞紙にくるみ、冷蔵庫のポケット部分に立てる。

もやし

もやし

水を張った容器に入れ、蓋をして冷蔵保存。水は毎日取り換えるといつまでもシャキシャキ感を維持できる。

そのほかに、冷凍、天日干しなどの方法もある。冷凍したり干したりすることによって、その食材のうまみが凝縮し生の状態より美味しくなることもある。冷凍に向いた食材、干すことで栄養がアップする食材など、千差万別なので詳細はウェブサイトなどで調べてみてほしい。

Store Food Properly https://toogoodtogo.org
キナリノ https://kinarino.jp など

 

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