安心して食べられる野菜を求めているフランス人の数は少しずつ確実に増えているようです。この傾向はスーパーの野菜売り場にビオ(有機農産物)コーナーが設けられていることからもうかがえます。これは約10年前の狂牛病事件をきっかけに、食料品の安全に関心が高まったからでしょう。南仏のパカ(PACA*)地域の消費者運動はアマップ(AMAP**)と呼ばれるアソシエーションの設立につながりました。
コゴランにもアマップが発足し、今年で6年目を迎えます。乳製品を始め、野菜や肉、魚まで共同購入できるほど充実しています。農家である生産者と各会員との間で一定期間の購入契約が交わされ、定期的に農産物がパニエ(panierは「バスケット」を意味する)として提供される仕組みになっています。例えば、野菜のパニエ購入契約を結んだ場合は、サラダ菜、ズッキーニ、ニンジン、キュウリ、エンドウ豆など、季節の野菜がセットになって提供されます。消費者が欲しいものを買うのではなく、決まった日に採れた野菜を契約購入することで、生産農家は栽培に専念することができるのです。

ヤンさんと畑を耕す農耕馬の名前はトラヴィアタ。

畝全体をビニールシートで覆い、穴を開け、
苗を植えたサラダ菜は今が食べ頃。
今年の5月からアマップ会員が待ち望んでいたヤンさんの野菜配布が開始されました。彼はSAFER***という非営利団体の援助を得て6.5ヘクタールの土地を昨年の春に購入。雑草や低木を伐採したり、長い間放置された土地に鍬(くわ)を入れたりして1年後、やっと努力の結晶が実ったのです。野菜たちは、冬場の豊富な雨と春の好天候が幸いして見事な出来栄え。ハウス栽培のトマトはたくさんの実を付け、赤く色づくのを待つばかり。ビニールのシートを使った露地栽培は土の温度が高いために、エンドウ豆やズッキーニの生長が早いのには驚かされました。

春に草花の種をまいた休耕地はミツバチたちの楽園。

キュウリのかづらをネットに絡ませるのも大切な栽培作業のひとつ。
アマップの野菜は地産地消が原則で、有機栽培の農法が望まれています。除草剤を散布していないヤンさんの畑には、ビニールシートを突き破るようにしてダンチク(ヨシに似た多年草)が伸びるため、毎日抜いているそうです。気温が急上昇すれば、野菜が早く実り過ぎてしまうことも考えられます。また、害虫が発生する恐れもあり、自然を相手にヤンさんの多忙な日は続きます。

野菜を計り、パニエを用意するのは会員たちの当番制。
ヨーロッパ屈指のリゾート地サン・トロペに隣接するコゴランで農業を営むことは決して容易ではありません。不動産投資の熱は上がる一方で、農地が徐々に宅地に変ぼうしているのが実情です。ヤンさんは5年間農耕地を探し続け、やっと浸水想定区域に今の土地を見つけました。エネルギー危機が叫ばれ、持続可能な開発が優遇される今こそ、人々が暮らす町から遠くない場所に農地を確保しておくことは都市計画を進める段階で忘れてはならに課題ではないでしょうか。
略称の正式名称
* Provence-Alpes-Côte d'Azur
(プロヴァンス・アルプス・コートダジュール地域圏)
** Association pour Maintien de l'Agriculture Paysanne
*** Société d'Aménagement foncier et d'établissement rural
(農村土地整備公社)
AMAPに関する詳しい情報はAMAP公式サイト又は推進者のヴイヨン夫妻のサイト(仏語)をご覧ください。
www.reseau-amap.org
www.olivades.com
反橋妙子(sorihasi taeko) 1980年に渡仏。仏語を学び、言語学修士号を取得。リヨンで日本語教師を経て、南仏に移転後は観光ガイドとして南仏を回る。現在、通訳・翻訳業を専門とする。 taeko3011.jimdo.com










