FacebookツイッターRSS feed
ロンドンのゲストハウス
dim 19 novembre 2017

今回の映画:Bienvenue chez les Ch'tis (仏2008) ※日本未公開
テーマ:これぞフラ女!思い込みの強さで現実をぶっ飛ばす

ch'tiとは、chtimiともいい、北フランス(パドカレー)の人、またはそこで話されている方言のこと。 この地方出身のダニ・ブーンが演出・出演したコメディーで、フランスでのフランス映画の興行成績を42年ぶりに塗り替えた大ヒット作。 フィリップ(カド・メラド)は、南仏に住む郵便局長。妻のジュリー(ゾエ・フェリックス)の強い希望で、南の海辺の町への転勤を願い出ているが、なかなか受理されない。夫婦仲を心配するフィリップは自らを、転勤に有利と思われる身体障害者であると偽り、希望地への転勤を申し出る。が、ウソがばれてしまい、逆に北の地へ左遷されることになる。
厳密にはフランス語の方言ではなく、直接ラテン語から発展した独自の言語、という説も…………。


Bienvenue chez les Ch'tis (仏2008)※日本未公開
シチュエーション

北での生活が始まったフィリップだが、すぐに仲間からも受け入れられ、予想に反して楽しく過ごすようになる。しかし、妻のジュリーは、「うまくいっている」との電話での報告を、「私にもうウソをつかないで!」と信じようとしない。そこで、フィリップは「寒い、辛い!」と反応をしてみると、彼女は大満足!そのため、北での生活は最悪!とウソをつき続ける。単身赴任して2週間がたった週末、初めて南の自宅に戻ったフィリップ。それを出迎えるジュリーは、あれもこれもとごちそうをたくさん用意し優しい。2人の関係が修復されたようで嬉しいフィリップであるが……。

Philippe
J’ai plus très faim.
Julie 
...Vas-y, pleure !
Si ça te fait du bien, tu peux pleurer, ça me gêne pas.
Philippe
Merci.... j’arrive pas.
Julie 
Ah,mon amour, qu’est-ce qu’ils t’ont fait là-haut?
Philippe
Excuse-moi, je, je... j’ai du mal à en parler.
Julie
Ils sont horribles avec toi ?
Philippe
Ils sont, ils sont..., ils sont... ils sont... déjà, ils boivent... tous ..beaucoup.
Julie
Ouais, ils ont que ça.
Philippe
La poste là où... c’est le moyen age.
Quand ils parlent, on comprend rien.
Ça fait des « quo », des « hoeuuur »,des « biloute » , « heiiin » !
Julie
Bah ouais, c’est sûr, des alcooliques...
Philippe
Hum, c’est..., c’est pas vraiment des alcooliques, c’est...qu’ils boivent pour se réchauffer...
Julie
Ben oui, mais il fait tout le temps froid, ça revient au même...
Philippe
Hum...
Julie
Ah ! Quel cauchemar, mon amour...
Philippe
(sourire)
フィリップ
もう、あまりお腹すいてないよ。
ジュリー
……さあ、泣いて。それで気が楽になるなら、泣いてもいいのよ。気にしないから。
フィリップ
ありがとう……。(泣こうとするが)……泣けない。
ジュリー
ああ、モナムール(愛しい人)。北で一体何をされたの!?
フィリップ
ゴメン。なんていうか……、あまり話したくないんだ……。
ジュリー
そんなにひどい扱いされてるの?
フィリップ
やつらは……、やつらは……、みんな酒を飲むんだ。たくさん……。
ジュリー
そりゃそうよ。それしかないんだから。
フィリップ
郵便局は、まるで中世だよ。彼らが言ってることなんて全くわからない。「コ~!」とか、「ウ~!」とか、「ビル〜!」「あ~~~~?!」とか。
ジュリー
でしょうね、アル中は。
フィリップ
う〜ん……。そう、アル中っていうのとも、ちょっと違うんだ。身体を温めるために飲んでるから。
ジュリー
まあそうなんでしょうけど、いっつも寒いんだから結局は同じことよ。
フィリップ
う〜ん。
ジュリー
ああ、まるで悪夢だわ……。モナムール
フィリップ
(ジュリーを抱きとめて、彼女に見えないところでニンマリ)

フィリップが単身赴任する前は、常にトゲトゲしい態度をとっていたジュリーですが、久々に会う夫にかいがいしくお世話をしています。そして、突然、「泣いたら?!」とご提案。

Si ça te fait du bien, tu peux pleurer, ça me gêne pas.
もし、あなたの気が楽になるなら、泣いてもいいのよ。私は気にしないから。

優しい人を演出するフレーズですが、使用シチュエーションがずれている所で笑いを誘っています。ジュリーは思い込み激しく、フィリップが何を言おうと、「北は寒い。ひどい!」という自分の固定概念を全く見直そうとしません。頑固でないと人に振り回されるだけで終わるフランス生活、頑固でいるのは生活の知恵ですが、やり過ぎてこんな風に滑稽になっている人も珍しくありません~。

例)沈んでいる友人の気分を少しでも軽くしてあげたいとき、又は、情報をうまく引き出したいときに。
Si ça te fait du bien, tu peux tout me raconter, ça me gêne pas.
もし、あなたの気が楽になるなら、なんでも話して。迷惑じゃないから。

Qu’est-ce qu’ils t’ont fait là-haut.
一体上ではあなたに何をしたの!?

「上」とは、「北」の意味。なにか問題があっても、どうして自分はうまく出来ないのだろう? などの自責の念を感じるのでなく、「周りが悪い、周りが何かをした」というのが一般フランス人の思考回路。結果、世の中には自分たちしか正しい人はいず、その他は「間違っている」または「バカ」となってしまうため、批判精神に長けているのかとも思われます。(お天気にまで)

例)疲れている息子に向かって
Qu’est-ce qu’elle t’a fait ? 彼女に何されたの?
単にゲームのしすぎで寝不足なのかもしれませんが、母にとっては息子が疲れているのは常に妻や彼女のせい。

j’ai du mal à en parler.
ちょっと話しにくいな

何があったの?と聞かれても、即興で辛い生活をでっち上げないとならないので、話しにくい……となるわけですが、「話したくないんだ」という、陰のあるニュアンスを含ませてみると、あっという間にもっともらしく!ウソをごまかすときの便利表現。(演技力がやや必要)

例)または、単に何も話したくないときに。
トイレから出てきたとき、「なんだったの?」とちいさな娘さんがしつこく聞いてきたら。
j’ai du mal à en parler. ちょっと話しにくいな

Ouais, ils ont que ça.
そりゃそうよ、彼らにはそれしかないんだから。

よく分かってもいないことを、なぜか偉そうに言いきるのがフラ女風。(こういう人たくさんいる)自分の狭い知識・経験が世界のすべて!と、オバサンのような強さで、自分の思い込みを主張。反論しようものならバシッとはねつけられ、5メートル先まで飛ばされます。(お、私もフラ女入ってますね!)たま~に、客観的にデータを分析するパリジェンヌに会うと、驚き、それだけで好きになってしまいます。

Bah ouais, c’est sûr, des alcooliques...
そりゃそうよ、アル中なんて…

思い込み発言第3弾。自分が思い込んでいる間違った現実から、さらに勝手にそれを発展させて、完全オリジナルな世界を作りあげます。そして、「私って鋭い!」と悦に入るのがパリジェンヌ。そんな人々を毎日見ていると、フランス語を話すときは、「違っているとは思うけどそんなことはどうでもいい。ちょっと偉そうに気取ってみるか!」という気分に簡単になれてしまうのが怖いところです。

フレーズの応用例)
「ウチの嫁は、米ばっかり食ってる!」と、ウチの義母が友人にこぼしたとき(←比較的マイルドな批判)の、ご友人の反応。
Bah ouais, c’est sûr, des japonais... そりゃそうよ、日本人なんで…

逆に、「あいつが謝らなかったプンプン!」といった話題のときに、
Bah ouais, c’est sûr, des français...そりゃそうよ、フランス人なんて…
とフランス人にやってしまうと、無反応か、怪訝な顔をされます(当たり前か)。
やはり、当該者がいないときに使用するのがおススメ!

C’est pas vraiment des alcooliques, c’est...qu’ils boivent pour se réchauffer...
アル中って言うのともちょっと違うんだ。身体を温めるために飲んでるんだから……。

また、こちらも調子に乗って、あることないこと、もっともらしく語っています。妻の思い込みをさらに増長させるようにわざわざ仕向けて楽しむ趣向。やや妻をバカにしていると、とれなくもないでしょう……。(こうやって、暗に相手をコケにするのはフランス人の得意技→やられる前に先手を取ろう!!)

そして、悲劇のヒーローに祭り立てられている!と感じたら、「そうなんだおれ大変なんだ!」とまんま強調するのではなく、「相手だって大変なんだよ」と、言ってあげられる余裕を見せると、ほんのちょっとの塩がスイカの甘みを増すような、逆説的効果が得られることになります。

例)上司のことさんざん愚痴った結果、相手が「あなたは偉いわね!そんな環境で頑張れて!」
と、(しょうがなく)ほめちぎってくれたときに。
Oui mais, en même temps, je le comprends quelque part, parce que...
うん、でも、同時に、彼のことも分かる部分はあるんだ、だって……


自ら悲劇のヒーローになり酔っている。

Ben, oui, mais il fait tout le temps froid, ça revient au même...

間違った事実から、どんどん矛先がずれていく~。しかし、こうやって会話がもっともらしく続けば、本当のことなんてどうでもいいのかもしれません。さすがアート(映画や演劇などフィクション)の国。実際、「一体、彼の地はどうなの?」と事実を冷静に受け止め、「それだったらこうすればいいわね!」と的を得たアドバイスなどは、彼女らにとって単に退屈すぎるのかもしれません。

Ah ! Quel cauchemar, mon amour...

フランス人は些細なことでも、こんな風に言葉を尽くして、大げさに嘆きます。
ジェスチャーもできる限り大きく!(人生は舞台)

例)娘がテストで、よくない成績をとってきたとき。
Ah! C’est une catastrophe!! C’est inquiétant ça! Tu crois pas!?!?
あ~、大惨事だ!心配すべきことだよ!!そう思わないのっ!?!?

この興奮度、なんかピントがずれている感じで、個人的にはいらついてしまいます。叫ぶ前に、どうすればよいかを考える方がましです。やはり、「冷静に対処する」なんて退屈!なのでしょう。「わ~~!どうしよう!?」と悲劇的に騒ぐ方が、刺激に富んだ人生となり、満足度が高まるようです。

フランス人(特に女性)は老若とわず、思い込みの激しい発言をすることが多々あります。客観的に物事を判断するのが嫌いなようです(そんなの退屈)。しかし、日本人でもオバサンになるとその傾向がみられるのが、自分を通してでも感じることができます(そんな細かいこと、どうでもいいじゃん!めんどくさ~のように……)。思い込みが激しい女性に、客観的な意見を述べるのは疲れるだけなので、フランス人男性には、はいはいと一通り話を聞いて、「ben,oui !(そうだね!)」以上。と、露骨に話を終わらせる人もいれば、聞きながら寝てしまう人(ウチの夫)もいます。

 
<< 最初 < 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 > 最後 >>

8 / 23 ページ

  • Check



小林まみ Mami Kobayashi

女子学院、慶應義塾大学理工学部卒業後、パリ高等映画学校(ESEC)に留学。 フランスの映像プロダクション勤務を経て、短編映画制作、シナリオ執筆。フリーで通訳、翻訳業に携わる。2004年より、メルマガ「み~さの12秒フランス語!」発行。「まぐまぐメルマガ大賞」3年連続受賞。
公式サイトhttp://miisa12.com

現在、フランス語、フランス、映画関連の本などの執筆。
お風呂で読むフランス語[会話フレーズ](学研教育出版)
お風呂で読むフランス語・単語帳(学研教育出版)
「1日12秒!初歩フランス語文法マスター!」(kindle版)

写真)耐水性の紙で出来た、お風呂でのんびり学習できるフランス語本。 自然な会話フレーズ、そしてその解説が好評。 フランス語会話の個人授業のテキストとしても利用されています。同じシリーズで、[単語帳]も。 実際に、フランスで生活してみて、これは知っておきたい!という単語が盛りだくさん。

バナー
パリのお弁当やさん バナー バナー バナー ヘアサロン・ガイド おすすめフランス語学校 フランスのラーメン、中華麺、うどん、そば - イギリス・フランス・ベルギー・ドイツの麺もの大特集! サロン&クリニック・ガイド