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ロンドンのゲストハウス
sam 16 décembre 2017

21世紀の海外で日本の素敵を再発見 Neo Japon

大江ゴティニ純子
在仏アート・プロデューサー。Palais de Tokyo のゼネラル・コーディネーター、フランス現代アート基金のゼネラル・マネージャーなどを歴任し、現在はパリ大学で講師、国立美術館やアート・センターでの企画に携わる。京都の仏政府在外文化機関「ヴィラ九条山」特任館長。www.villakujoyama.jp

第14回
パリで「どら焼き」大ブレークの理由を考える

毎年4月になるとパリ近郊の自宅近くの公園にサクラが咲く。フランスでも日本と1カ月遅れのHANAMIが盛んだ。数日前、春鳥(うぐいす)の初音を聞いた午後、パリで蕨(わらび)の焼印が押された「春の山」という和菓子を頂いた。フランス語に季語が生まれる日も近い?

サクラ

河瀬直美監督の映画「あん」が今フランスで和菓子ブームに拍車をかけている。フランス語のタイトルは「Les délices de Tokyo」。お菓子という言葉に「極上の味わい」という喜びや楽しみを表す二重の意味がかけてある。ハンセン病患者の老女と社会のはみ出し者として生きる男との心の交流の物語だが、伏線として現れるはかなく散るサクラと甘い「どら焼き」にはリアルな演出力がある。観客は皆、目頭を押さえながらシネマを後にする。

パリで和菓子を楽しめるスポットといえば、昨年35周年を迎えた老舗の「とらや」がまず思い浮かぶ。私の周りにもファンが多く、自分でもあきれるが仕事の打ち合わせで開店から閉店まで丸一日過ごしたこともある。ミシュランの星付き和食レストラン「あい田」が経営する「WALAKU」も人気だ。シェフ自ら目の前で作ってくれる創作どら焼きは特別においしい。ネットの世界でも、和菓子ファンによるレシピ自慢のフランス語ブログが増えた。フランスデザイン界では、和菓子専用テーブル・ウエアの誕生が囁(ささや)かれている。

和菓子の人気の理由は、ヘルシーな素材、見た目の美しさ、そして「ポエジー(詩)があること」。今パリジャンは和菓子のもつ日本文化独特の遊びごころにときめいているのだ。だいふく、ようかん、まんじゅう、もなかも好まれるが、特に季節の和菓子が大人気だ。うぐいす、つばき、さくら、柏、きんぎょ、栗、わり氷…まるで十二単衣のかさね色目のようで、どれも五感を刺激する。

先週パリの友人宅に呼ばれ、あんこ好きのパリジャンに人気の「抹茶あんロール」を手みやげにした。昨年近所にオープンした「KOEDO」に特別注文したものだ。駅弁をコンセプトにしたお店には、カツ丼、エビフライ、カラアゲ弁当やカレーライスが並ぶ。小さな厨房では日本人女性8名がきびきびと作業する。家庭的な惣菜はどれも味付けが丁寧だ。中でも私が感心したのは、「たい焼き」。焼きたての香ばしい生地の中に、なんとシッポの先まであんこがたっぷり! さて、前述の抹茶あんロール、驚いたのは招かれた友人宅で久しぶりに会ったジャーナリストの一言「あ、これエステルのとこの」。エステルさんとは「KOEDO」のフランス人店長。高校時代、日本留学中に駅弁なるものにすっかり魅了され、なんとトラム(路面電車)のホームに開店した。電車をわざわざ降りて立ち寄る人もいる。小脇に抱えたバゲットが定番スタイルのパリジャンも、今や仕事帰りに電車のホームでホカホカの「たい焼き」にかぶりついている。

2013年にユネスコの世界無形文化遺産に指定されて以来、和食が注目されている。その追い風の中、和菓子ブームは日本とフランスをつなぐ大事なキーワードを伝えているように思う。日仏の文化交流の歴史は深い。一時的ブームではない相互理解の素地があるように思う。日本人とフランス人は、詩的センスや微妙なニュアンスを感じるツボが似ているのだ。

間もなくフランス育ちの我が息子たちが、首を長くして待ち焦がれているものが到着する。父が日本から送ってくれるアニメ「ドラえもん」の番組収録だ。DVDを見る日のおやつは、ドラえもんの大好物「どら焼き」と決まっている。美味しさこそが21世紀の「どこでもドア」。世代を超え、国を越え、「どら焼き」ファンの輪が広がりつつある。

 

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