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言論と報道の自由を守るために 国境なき記者団
![]() 1985年にパリに設立された国境なき記者団。彼らはこれまでに世界各国のメディア規制の動きを監視しつつ、取材国で拘束された記者の家族への援助などを行ってきた。現在彼らは、今年のオリンピック開催国であり、いまだ厳しい報道規制が敷かれる中国に自由な報道を約束させるべく、さまざまな抗議活動を行っている。国境なき記者団の創設者ロベール・メナール氏に話を伺う。 (Texte et Photo par Hajime Yanagisawa)
国境なき記者団(Reporters Sans Frontières)
言論の自由、報道の自由を擁護するために、1985年にパリで設立されたジャーナリストによる国際的な非政府組織。現在世界の主要国を中心に130の支部をかまえる。同組織代表で創立者ロベール・メナール著「戦うジャーナリストたち、国境なき記者団の挑戦」は岩波書店より出版されている。公式サイト:http://www.rsf.org ラジオ・リスナーの言葉が団体設立のきっかけ 国境なき記者団の設立のきっかけはある市民からの一言だったという。当時の様子を思い出しながらメナール氏は、このように語ってくれた。 「ラジオ・フランスの記者だった当時、私は連日国内外のニュースを報道していました。ある日私は番組終了後に、France Inter局で当時放送されていた『Le téléphone sonne(電話が鳴ってます)』という番組のスタジオを見学しました。この番組は、リスナーからの電話質問にスタジオの司会者やゲストが答えるリスナー参加型の番組です。私が見学した日は、どこかの国で大惨事が起こった日で、リスナーからの質問もそれに関連したものでした。 『なぜ、ジャーナリストは大惨事が起きると、その時だけその国に滞在し、ニュースの旬が過ぎると引き上げてしまうのですか?他にも、なぜ辺地の国のニュースは情報が少なく、取材のしやすい国ばかりにニュースが偏っているのですか?』 私はこの質問に対する答えを明確に持っていました。国によってジャーナリストの安全対応が違う、もしくは検閲が厳しく海外のメディアが入国出来ないという現状があるからです。しかし、私自身もジャーナリストとして、自分の行動範囲が限られている事にかねてからジレンマを感じていたのも事実です。スタジオを出た後すぐに友人のジャーナリスト、フレデリック・ココニエと連絡を取り、報道の自由を保障する団体を作ろうという事になりました。もちろん、立ち上げには多くの傷害がありましたが、現在は世界中に130の支部をもつ大きな団体へと成長しました」 国境なき記者団は“番犬”的役割 現在、国境なき記者団は世界最大の報道の自由を訴える 非政府組織となっているが、メナール氏は「この団体は人権や報道の研究機関や、ジャーナリスト組合ではなく、報道の自由を監視する“番犬”的な役割を果たす機関だ」と言う。彼らの考えでは、国に報道の自由が約束されない限り、その国は民主主義にはなり得ない。報道によって人々は国の状況を知り、その知り得た情報を基に政治や法律が改革される。つまり、報道の自由が束縛されるという事は、民主主義という自由を取り上げてしまうことにつながるのだ」。 国境なき記者団の活動は大きく分けて2つある。1つ目は、報道の自由の監視と警告。彼らは、毎年数千件にも上る海外で活躍するジャーナリストの活動調査とレポート作成を行い、国連や人権保護団体などへ随時報告している。調査内容は各国のジャーナリスト受け入れ状況から、拘束され たジャーナリストの安否や消息確認まで多岐にわたる。当 然調査対象にはフランスも含まれており、同団体が2007年に行った世界報道自由ランキングで、フランスは169カ国中31位という不名誉な位置にランクされている。 2つ目の活動は、取材国で拘束されたジャーナリストの家族に対する支援活動だ。彼らは取材国に取り残されたジャーナリストの家族へ金銭的支援も行う。このサポートには、拘束されたジャーナリストの弁護士費用なども含まれている。 国境なき記者団の最大のポリシーは「報道を志す全てのジャーナリストを支援する」こと。AFP、ロイター、APなどの通信社や大手新聞社で働くジャーナリストの場合、企業からのバックアップは大きい。しかし、実際に大きな問題に直面しているジャーナリストの多くはフリーランスだ。そのため国境なき記者団は、同組織のサポートを受けるために記者証や所属団体の有無は問わず、全てのジャーナリストを受け入れている。 報道の自由の束縛は先進国にも言えること 報道の自由を呼びかけるのは、何も紛争地帯や独裁者が君臨する発展途上国に対してだけではない。日本では記者クラブ、フランスにおいては記者証(フランス内務省認定記者証審議会発行)所有の有無で取材活動が制限されることがある。メナール氏は、「先進国であっても、取材するジャーナリストが限定されている以上、それは検閲と同じこと。つまり、日本国外のジャーナリストにしてみれば記者クラブにアクセス出来ない以上、日本も北朝鮮も情報検閲の上では同等と見なされる」と語る。 国境なき記者団は、毎年独自の調査により世界各国の報道自由度をランキング化している。そのランキングを基に作成された世界地図を見てみると面白いことがわかる。欧州では、東欧や北欧の方が西側諸国よりも報道の自由度が高いのだ。 「かつて独裁政権によって言論の自由を奪われた歴史を持つ国々は、民主主義を勝ち取った今、報道の重要さを西側諸国よりも真剣に理解している。だから彼らは、検閲に関して非常に神経質なのです。例えば、中国やキューバには現在でも多くのジャーナリストが拘束されています。その現状改善に積極的に関与している国はチェコです。彼らは共産主義の悪夢を知っているからです」とメナール氏は分析する。
中国に対しての先進国の本音と建前 現在、国境なき記者団は世界の主要国を中心に130の支部を持つが、全ての支部が円滑に活動を行えているわけではない。その代表的な国が中国。当初、中国支部は首都北京に予定されていたが、政府からの妨害に逢い、香港に設立された。 2001年7月、オリンピック評議会(IOC)のロシア会議にて、北京は2008年の五輪開催都市に選ばれた。その時の公約事項は「五輪開催時までに報道の自由を確立する」。あれから7年、中国はいまだ国外報道機関に対して扉を固く閉ざしている。 「共産主義の中国が、五輪開催と共に民主化されると思うほど私は楽天家ではありません。しかし私が残念に思うのは、中国と有効な関係を築きたいと願っている欧米や日本は、中国人消費者に興味はあっても、中国政府によって弾圧を受けている中国国民には全く無関心ということです。中国市場を手中にしたい先進国は誰も中国を刺激するようなことは行いません。だからこそ、国境なき記者団は現在、五輪開催を機に中国の現状を知ってもらおうと世界にアピールしているのです」とメナール氏は心境を語る。 国境なき記者団は、昨年より五輪の輪を手錠に見立てたビジュアル・デザインを世界に配信し、中国の検閲問題をアピールしている。メナール氏によれば「世界は五輪が北京で開催されることを望んだのだから、その責任として中国が報道の自由を約束するように努力をしなければない」という想いがこのデザインに込められているそうだ。 今後の展望 メナール氏は「“個人への中傷”と“暴力”このふたつを除けば、言論に制限はあっていけない」と考えている。彼の考えに賛同する多くのジャーナリストが国境なき記者団の特派員として活躍している。しかし、検閲を糾弾すると いう過激な活動内容からリスクは高く、切実な問題を抱え る地に赴く特派員ほど弾圧は大きい。これまでもキューバ 特派員は懲役20年の刑を言い渡され、ナイジェリア特派員は現在も刑務所に留置されている。 国境なき記者団の年次活動報告では、国連の人道問題調整部を痛烈に批判している。しかしこれは、国連の存在力や影響力を認めているからこそ、現体制が時によって大きな障害となり国連本来の活動が制限されてしまうことへの歯がゆさから来ている。今後の活動としてメナール氏は、将来欧州加盟国になるであろう東欧諸国に支部を拡大しようと考えている。ソ連崩壊後、タジキスタン、ウズベキスタンなど多くの小国が誕生したが、これらの国にはいまだに旧社会主義政権が根強く残っている。完全なる民主主義を夢見るこれら多くの小国へ、言論の自由を伝導する国境なき記者団の闘いに終わりはない。
記者団発表の国別報道自由ランキング2007年度ベスト50
国境なき記者団作成の、報道の自由度によって色分けされた世界地図。白色が最も自由度の高い国で、緑、橙、茶、黒の順で検閲度が高くなっている。PDF版の世界地図は、同団体の公式ウェブサイトからダウンロード可能。(国境なき記者団調べ) インターネット上でもデモ活動!
今や、紙面だけでなくインターネット上でも検閲は行われている。記憶に新しいところでは検索エンジン、グーグル中国版で、多くのサイトが検索結果から除外されるよう細工された事だろう。国境なき記者団では、毎年3月12日をサイバー・デモの日とし、インターネット上で討論会を行っている。また、国境なき記者団が運営する「24heures contre la censure sur Internet (インターネット検閲反対24時)」のサイト上では、自身のメッセージを入力することでバーチャル・デモに参加出来る。 国境なき記者団のバックアップ・アイテム 言葉も通じぬ辺境地や、いまだ紛争が続く国へ旅立つフリージャーナリストたちへ国境なき記者団はさまざまなアイテムを貸し出している。 防弾チョッキとGPS
緊急救命道具ポーチ 緊急時に救命道具が有るのと無いとでは延命率が大きく変わる。そんなことから、救命ポーチは無料で提供される。
この他にも、必要に応じて緊急時の連絡先などが明記された安全の手引きなどさまざまな支援備品を提供してもらえる。防弾チョッキとGPSの貸し出しはパリ本部のみなので注意。 これらのアイテムの貸し出し申請には事前に下記メールアドレスに連絡が必要 |
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紛争地帯へ赴くフリージャーナリストへは、防弾チョッキが無料で貸し出しされる。これはフランスの防衛庁から提供されたもので、重さはおよそ14キロ、サイズはS、M、Lの3種類。保証金として900ユーロの小切手を預けることで、無料貸し出しされる。(安全ヘルメットも貸し出し可能で、保証金は250ユーロ)
現在最も携帯を推奨されているアイテムのひとつが全地球測位システム(GPS)。これまで、紛争地域やへき地に赴いたジャーナリストが現地で遭難およびけがをした場合、該当者の位置特定に時間が掛かり過ぎて救助が遅れることが多かったが、GPSの誕生によって迅速な救命活動が可能となった。貸し出しには保証金900ユーロが必要。
内胞物:除菌クリーム、飲料水の殺菌剤、緊急用の血清、ばんそうこう、切り傷用の縫合セット、伸縮包帯、消毒用クロルヘキシジン液、解熱鎮痛剤(パラセタモール)、下痢止め薬(ペラセル)、皮膚疾患の治療薬(セチリジン)、日焼け止めクリーム(ビアフィヌ)、防ちりマスク使い捨てビニール手袋、レスキューシート、コンドーム


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