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夏の星空を覗いてみよう
フランスは17世紀頃に天文学が盛んになった国のひとつだ。パリ天文台はそんな歴史の証人で、フランス人天文学者シャルル・メシエは1カ月差で一番乗りは逃したものの有名なハレー彗星を1759年に発見し、他にも数多くの彗星を見つけたことで知られている。今年の夏は、望遠鏡で夜空を眺めたり、バカンス地で天体観測をしてみてはどうだろう。この時期、フランスからは木星が見えるし、日本の夏の風物詩天の川も楽しめる。都心から少し離れれば一層綺麗な星空を見ることが出来るだろう。ひょっとして新彗星が見つかって、あなたの名前が星についたりするかも!? (文:塩谷祐人 写真提供:国立天文台)
夏の大三角 初心者が星空を見ても、どこにどんな星座や星があるのか見つけるのは難しい。冬の星空なら強く輝くシリウスやオリオン座の三連星が目印となるように、夏の星座を探すときに目印となるのが、夏の大三角だ。フランス語でも 「Le triangle d'été」、「Grand triangle de l'été」あるい は「Les trois belles de l'été」と呼ばれ、夏の天体観測を始めるには、この大三角とその周辺の星座からスタートすると分かりやすいだろう。 3つの一等星を結ぶ三角形(写真1)の頂点に位置している星が白鳥座のデネブ(Deneb)、左下がわし座のアルタイル(Altaïr)(写真2)、そして右下がこと座のヴェガ(Vega)だ。ちなみに日本では、このアルタイルが彦星、ヴェガが織姫と呼ばれ、その間を流れているのが天の川である。
1:夏の第三角形。三角形 の頂点がデネブ、左下が 彦星アルタイル、右下が織姫ヴェガ。天の川はこのアルタイルとヴェガの間に流れる。 白鳥座と二重星アルビレオ、北アメリカ星雲 デネブ(写真3の赤丸で囲まれた星)を見つけたら、そこに白鳥座(La Cygne)を見ることが出来る。一説では、この星座はスパルタの王妃レダに恋したゼウスが白鳥にその身を変え近づいたというギリシア神話に因んだものだという。その白鳥の尾の位置デネブの反対側の頭にあたる星が三等星のアルビレオ(Albireo写真3の青丸)。このアルビレオは2つの異なる色を持つ星から成る二重星だ(写真4)。望遠鏡で覗いて見てみると、宮沢賢治が「銀河鉄道の夜」でくるくると回る青宝玉(サファイア)と黄玉(トパーズ)になぞらえた、その星を観測することが出来るだろう。他にもデネブの近くには、普通の望遠鏡では見つけにくいが、北アメリカ星雲と呼ばれるNGC7000がある(写真3の黄丸で囲まれた辺り)。
3:白鳥座 こと座と多重星シュリアク、M57星雲 織姫ヴェガ(写真6の右上の赤丸)と白鳥座のアルビレオ(写真6の左下の赤丸)を目印に、こと座(La Lyre)を探してみよう。この星座は、死んだ妻を生き返らせるために冥界へ降りていったオルフェウスの竪琴に由来している。この神話は詩人ジャン・コクトーが映画化した「オルフェの遺言」や象徴派の画家ギュスターヴ・モローのモチーフとなっているので知っている人も多いだろう。このオルフェの琴を模どった星座には二重星や多重星の星がいくつもあり、リング状の星雲もある。小口径の望遠鏡でも見ることは出来るが、性能の良い望遠鏡を使えばより楽しい観測となるだろう。例えば、ヴェガの位置を頼りに、多重星のシュリアク(Sheliak写真6の青丸)、さらにその星の近くには、環状星雲であるM57(黄丸)が確認出来る。
6:こと座と多重星シュリアク 月と木星 望遠鏡で初めに何を見るか迷ったら、一番大きくて見やすい、そして最も馴染みのある月を見てみよう。地球から最も近くにあるこの天体は、古代より人々の関心を引き、科学的なロマンを掻き立て、神話や物語でも「狼男」や「かぐや姫」など想像力を刺激してきた。フランスでは、17世紀の作家シラノ・ド・ベルジュラックや19世紀の小説家ジュール・ヴェルヌの小説、映画創世記の監督ジョルジュ・メリエスの傑作「月世界旅行」(1902)などの作品が挙げられる。望遠鏡を使えば、クレーターや光があまり当たらない「海」と呼ばれる場所(フランス語でもMerと言う)がはっきりと見え、肉眼での時とは全く異なる月の姿に出会えるだろう。ちなみに、クレーターや海にはそれぞれ名前が付けられており、パリ天文台の初代館長カッシーニや国際天文学連合の初代館長を務めたフランスの天文学者バイヨーに因んだものや、江戸時代の天文学者麻田剛立(あさだ・ごうりゅう)に由来するクレーター「アサダ」もある。 7月~8月に望遠鏡で楽しめる星といえば木星がある。夏に見られる星として、この時期注目を集める、太陽系内最大の惑星だ。ローマ神話の最高神ユピテル、ギリシア神話で はゼウスにあたる神の名が付けられているこの星は、ガスを主成分とする褐色のガス惑星で、土星のように環を持ち、しま模様や大赤斑(仏語ではGrande Tache Rouge)と呼ばれる斑紋が特徴。11.86年かけて太陽の周りを一周するが、その自転周期は9.9時間。楕円形に膨らんで見えるのは、その高速な自転のためだ。ある程度の口径を持つ望遠鏡なら、その周期の様子も楽しむことが出来るだろう。さらに木星観測の醍醐味といえば、衛星観測も忘れてはいけない。木星は数多くの衛星を持つ惑星のひとつで、なかでも4つの大きなイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストは1610年にガリレオが発見したことから、ガリレオ衛星と呼ばれている。 直径14万2984kmの巨大な惑星、木星。 夏場は射手座の方向に見ることが出来る。 地球から38万4400km離れたところにある直径約3476kmの衛星、月。その自転の周期は27.321日。こんな星団も見てみよう! ヴェガを頼りに西の方、天頂近くに目を移すと、そこ にヘルクレス座が現れる。この星座はギリシア神話の英雄ヘラクレスに由来するが、星座ではヘルクレス座と呼ぶ方が一般的。ヴェガや蛇使い座(Ophiuchus)の二等星ラサルハゲ(Rasalhage)を目印に、星図と照らし合わせながら探してみると、この星座の近くに初心者が最も見つけやすい明るい星団が2つ見ることが出来る。M13とM92と呼ばれる星団だ。1974年、地球外知的生命体に向けてアレシボ・メッセージと言われる電波メッセージを発信するプロジェクトが行われた。そのメッセージの宛先こそM13星団だったのだ。ヘルクレス座を覗いてみれば、もしかしたら宇宙人に遭遇出来るかもしれない? 約80万の恒星から成っていると言うM13球状星団。(写真: 日本スペースガード協会提供)星雲や銀河を示すときに使うM13などの記号をSF小説や映画で耳にしたことがある人も多いかもしれない。この記号、実は18世紀のフランスの天文学者シャルル・メシエ(Charles Messier)の頭文字なのだ。彼は観測した星雲や銀河、星団を集め、それぞれに番号を付けてメシエ・カタログを作成した。そして現在でも、その名残りで天体名にM○○という呼び名が使われているのだ。ちなみに他に星雲などを示す記号にはニュージェネレーションカタログという通称NGC、そしてその補遺(ほい)であるインデックスカタログ通称ICという記号もある。 初めての望遠鏡 初めて望遠鏡を選ぶとき、どこにポイントを置けばいいのかを簡単に説明しよう。望遠鏡は大きく分けてTélescope(反射式望遠鏡)とLunette(屈折式望遠鏡)の2種類があり、それぞれ光の集め方が違う。初めての望遠鏡には扱いやメンテナンスが簡単なLunette(Réfracteur と呼ぶ場合もある)がオススメだ。 もし見る目的が具体的にあるなら、それに合わせて望遠鏡を選ぼう。例えば月や惑星を重点的に見るのか、星団を見るのかでは適正のF値(Focale)や口径(Diamètre)が変わってくるので、それに合わせて選ぶことになる。具体的に決まっていないなら、まずは口径を見よう。口径が大きいほど光を集めることが出来、細かいところまで見えるようになるからだ。しかし、大きければ大きいほど見やすいというものではない。レンズ構成が少なく明るい分、低い倍率が出せずボヤけた像しか写らなかったり、重くて持ち運びが困難だったりと問題があることにも注意。F値は焦点距離を口径で割った数値で、この数値が小さい方が明るく見える。倍率(Grossissement)の重要度はその次。 望遠鏡は精密機器なので、その選択は目的や観測場所によって異なってくる。初めての望遠鏡選びは、Lunette(Réfracteurタイプ)で、Diamètre、Focale、Grossissementの順に注意しながら専門店などで意見を聞きながら慎重に選ぼう! *初めて天体観測をするときは、なかなかどこにどの星座があるのかを見つけ難かったり、どこを見ていいのかわからなかったりするので、望遠鏡の前に双眼鏡での観測もオススメ。これは望遠鏡を買った後でも楽しめるし、月や惑星、ある程度なら星団なども見ることが出来る便利アイテムだ。 初心者の心強い味方! La maison de l’astronomie La maison de l’astronomie は望遠鏡の専門店。100€以下のものから専門家向けまで、さまざまな望遠鏡が揃っている。書籍や雑誌なども扱っているので気軽に立ち寄ってみよう。 La maison de l’astronomie33-35, rue Rivoli 75001 Paris 望遠鏡選び
初心者向けのガイドブック 太陽や月、惑星、星団や星雲を、季節ごとに初心者でも見つけやすいように紹介している。解説も分かりやすく、星座の図も入って いて、初心者にうってつけの1冊。17€。
Cité des Sciences et de l'Industrie Cité des Sciences et de l'Industrie内にあるプラネタリウムは3Dビデオによる立体感ある映像をを見ながら解説を聞くタイプのプラネタリウムだ。来場日や時間によってテーマの異なるプログラムを上映しているので、事前にウェブサイトなどでチェックしていこう。 ちなみにCité内にあるため、プラネタリウムに入るにはCitéの常設展への入場料に加えてプラネタリウム代が必要となる。常設展では宇宙に関わるものだけでなく、数学やエネルギー、車、飛行機、音などに関する展示や体験コーナーがあるので来館時には一緒に楽しもう。
Palais de la découverte Palais de la découverte内にあるドーム状のプラネタリウムは、円形に並べられた客席から実際に空を見上げるように見るタイプだ。太陽系のシステムや銀河、夏の夜空など基本的かつ多岐にわたるテーマを分かりやすく解説してくれる。シンプルな映像のため、分かりやすさが利点で、しかも1回の上映が約45分と見ごたえのあるプログラムになっている。 プラネタリウム横にある天体を扱ったブースでは、模型やパネルが並べられ、主に太陽系の惑星に関して知ることができ勉強になる。 館内の常設展や企画展では動物や昆虫、人間など生物に関するもの、物理、地学や科学、それに火山やアリといった時期によってテーマが変わる特別展など、いろいろな体験が出来るので、プラネタリウムのついでに他のdécouverte(発見)も楽しもう。
こんなところにも行ってみよう! パリ天文台(Observatoire de Paris)は、17世紀のルイ14世治世に建てられた天文台。現在は天体観測の天文台という機能は果たしていないが、その歴史と天文学への貢献は計り知れないものがある。現在は博物館のようになっており、一般公開はされていないが、だいたい月に一度行われるガイド付きのツアー*で入場可能。そこでは17世紀から20世記までの天文学の歴史を知ることが出来る。建物は童話集などで有名な作家シャルル・ペローの兄のクロード・ペローによるもので、館内の階段が特に有名。 ツアーでは昔の望遠鏡や地球儀などを見られる他、カッシ ーニなど歴代の天文台の長を務めた人々のエピソード、振り子を使った実験で自転を証明したことで有名なフーコーの話(パンテオンの実験が有名だが、フーコーはパリ天文台でも同実験を行った)などなど、面白い話を聞くことが出来る。 *現在は工事中、ツアーは2009年1月まで休止中
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直径14万2984kmの巨大な惑星、木星。
地球から38万4400km離れたところにある直径約3476kmの衛星、月。その自転の周期は27.321日。
約80万の恒星から成っていると言うM13球状星団。(写真: 日本スペースガード協会提供)
La maison de l’astronomie
パリで星空を楽しむなら、La maison de l’astronomieの店員お墨付きの初心者向けモデル、小型のSkyWatcherや Lunette skyscoutのC90がお薦めだ。C90は、GPSシステムを使用して星の位置や見ている星の情報を知ることが出来るアイテムSkyScout Celestronが取り付けられるのが特長だ。
Astronomie Guide des premières observations


情報収集なら月刊誌「Astronomie Magazine」(4.9€)。星にまつわる最新のニュースや読み物が楽しめるだけでなく、その月の天体の様子(どの星座や惑星がどこに見えるかなど)の表が閉じ込みで入っていたり、その月ならではの見所が紹介されていたりと、星空の情報収集には欠かせない一冊だ。また地方で行われる講演会やアトリエ、天体観測の催し物のアノンスページがあり、フランスの星空愛好家たちの仲間入りする機会にもなるだろう。同雑誌のウェブサイトでも星の状況や天文現象の情報、地方ごとのクラブの催しの告知などを見られる。

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