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パリのゲイ・カルチャーを探ってみたら……
![]() Texte et photo par Sayaka Atlan Nakagawa
さまざまな人種が共存し、多種多様な文化が交じり合うパリでは、恋愛に対してオープンな考えを持つ人も多い。パリ市民にはすでにおなじみのゲイ・レズビアン映画祭やゲイパレード、レインボー・フラッグはためくゲイ専門店の数々。パリのゲイ・レズビアン文化を探る。 ゲイ・レズビアン映画祭へ行こう!
映画祭ディレクターのフロランス・フラデリッジさん。98年からゲイ・レズビアン映画祭に参加している©Sayaka A. Nakagawa今年のみどころは? 信教と同性愛の両立の難しさを語る話題作、「A Jihad For Love」©HALAL FILMSまた、今年のカルト・ブランシュ(お任せセレクション)部門では、映像アーティストで造形美術家のパトリック・リエーヴル氏が上映映画のコミッショナーに。彼は、今年6月に日仏交流150周年にちなんで「横浜フランスビデオコレクション」に参加した。映画祭の多様性をさらに広げてくれそうな彼のセレクションに今から期待が膨らむ。 ゲイ・レズビアン映画祭2008
11月4日(火)~11日(火) Le Grand Rex 1, bd Poissonière 75002 Paris TEL : 08 92 68 05 96 (0.34€ / min) www.ffglp.net www.myspace.com/ffglp (音が出ます) 初夏のパリを盛り上げる「ゲイ・パレード」とは?
パリで6月28日に行われたゲイ・パレードのポスター©Inter LGBTとはいえ、このイベントに堅苦しい雰囲気はみじんもない。当日、歩行者天国となった道路に、次々と行進していく派手な大型トラック。トラックの上に備えられたステージでは、セクシーな男女が大音響の音楽に合わせて踊り、歩道の観客に向かって愛嬌よく手を振るなど、いたって和やかなムード。 ちなみに、フランス初の同性愛者によるデモ行進は1977年。あるアメリカ人歌手の暴言「キリストへの愛のため、ホモは殺すべき」に対するリアクションだったそう。それから30年以上経った現在、同性愛者をめぐる状況はずいぶんと変わった。今年のイベント参加者数は70万人(主催者発表)。この数字から見ても、パリ市民にも恒例のお祭りとして受け入れられているようだ。 *LGBT : Lesbian, Gay, Bisexual and Transgendered peopleの略
パリのマレ地区にはL'eau à la bouche(唇からよだれ)ならぬ、Les mots à la bouche(唇から言葉)という名の書店がある。ショーウィンドーに飾られた写真集の数々を眺めれば、それがゲイ・レズビアン向けの書店とすぐに分かるはず。伝統あるこの書店のディレクター、ウォルター・パルッシュさんにゲイ・レズビアン・カルチャーについて聴いた。 数々の伝説に恵まれた本屋の歴史 Les mots à la boucheには、同性愛者に関する歴史書やゲイ・レズビアン文学、英語本、ポストカードなどが所狭しと並ぶ。ゲイ関連の本が中心だが、他にもスピリチュアルに関するものから推理小説まで、センスの光る本が紹介されている。例えば、日本の作家では三島由紀夫などがゲイ作家として紹介されているが、吉本ばななの「キッチン」も人気だという。書店に入ってすぐ左の雑誌コーナーには、モード、ライフスタイル、建築関係など、世界中から集められた幅広いジャンルの雑誌が。展覧会スペースとしても機能する地下1階はモードやデザインの写真集が中心で、眺めているだけでも十分に楽しめる。その奥には映画や演劇などアート関連の書籍、そして壁一面を覆う種類豊富なDVDコーナーも一見の価値あり。 かつてはフランスの哲学者ミシェル・フーコーや映画監督マルセル・カルネも頻繁に出入りしていたというこの書店。ドイツの映画監督ヴィム・ヴェンダースが訪れてマルグリット・デュラスの全集を買っていった、という伝説も残っている。現在も映画監督で俳優のミシェル・ブランなどは常連客のひとりだそう。
売れ筋商品から見えてくるゲイ事情 Les mots à la boucheが誕生した1983年には、マレ地区が現在のようにゲイ・バーに溢れることになるとは誰も想像していなかったはず。ブティックの入れ変わりが激しいこの地区で書店を経営するのは並大抵の苦労ではない。2003年に作家などを招いて行われた20周年記念のパーティーは、パルッシュさんにとって思い出の日だそうだ。 書店のディレクターとなってから12年間、パルッシュさんは書店を見守ってきた。彼に最近の傾向を聞くと、現在の売れ筋商品は性を強調したものに絞られるという。「以前と比べて、エロティックな小説の需要が増えてきています。特に、セクシュアリティーを露骨に描いているものが好まれているのです。個人的には行間を読ませるような内容の小説が好みなのですが……」。若い頃にフランス語の教師として働いていただけに、あからさまで繰り返しの多い性描写は退屈に感じるようだ。 そんなパルッシュさんが薦める小説は、スウェーデン作家Stieg Larssonによる3部作の推理小説「Millénium」。2006年にフランスで翻訳出版されて以来ベストセラーになっているこのシリーズ。主人公のひとりは、ややレズビアンの傾向がある、タトゥーやピアスで身を飾る25歳の女性ハッカーだ。また、現在注目している作家は、9月に「La meilleur part des hommes」(Gallimard)を出版予定のフランスの新人ゲイ作家トリスタン・ガルシア氏。同性愛、友情、エイズなどについて語ったこの小説の第1版を読んで感動したパルッシュさんは、この作品の出版に伴い、作家を招いて店内でサイン会を催す予定だ。
もっと知りたい読者へおすすめサイト
■ フランスでポピュラーなゲイ雑誌 「Têtu」www.tetu.com ■ フランス最大のゲイ情報サイト 「E-llico」v2.e-llico.com ■ ゲイ同士の出会いを助けるエージェント「TWOGAYTHER」 www.twogayther.com ■ ホモ嫌いの被害者を助ける団体「SOSHomophobie」 www.sos-homophobie.org ■ PACS(市民連帯契約)についての詳しい情報 vosdroits.service-public.fr/particuliers/N144.xhtml
1999年に結婚に準ずるシステムとして誕生した、通称同棲契約PACS。以来、PACSを結ぶ同性愛カップルが増えてきた。そんなPACSカップルの一組で、パリ郊外で花屋を営むアレックスさんとジェレミーさんに出会いから現在までについて聴いた。
2006年の出会いから アレックスさんとジェレミーさんが出会ったのは2006年、当時マレ地区にあった「アムネジア」というバーだった。バーの地下にあるディスコでジェレミーさんがアレックスさんに目を留めた。「その日、もう帰ろうとしていた時にアレックスが目に入りました。彼らが話しているのをそばで聞いてたら面白くって、そうこうしているうちにアレックスの友達が僕に話しかけてきて……」。アレックスさんの友達いわく、その時のジェレミーさんは「まるで妖精でも見たかのような顔」をしていたという。それは4月2日。エイプリル・フールの次の日だったので良く覚えているそうだ。その場で電話番号を交換し、翌日の夜にはマレ地区のレストランで共に食事をした。その後ジェレミーさんは2週間半タヒチにバカンスに出かけたが、その間もスカイプを使って2人は会話を続けた。時差の関係で、アレックスさんは睡眠時間を削り、ジェレミーさんは海辺の散歩を我慢しての会話だったが、それは今の2人にとって良い思い出だという。 自分がゲイだと気付いたのは? アレックスさんは16歳の頃自分がゲイだと気付き始めた。カミング・アウトは18歳。当時、彼は3人の親友と日記交換をしており、それに出会った男性のことなどをほのめかしていた。そのうちに友達の1人が「話し合おう」と言い出したのがきっかけでカミング・アウト。それはとてもスムーズにいったという。家族に対しては、旅に出かける前にわざとその日記を読めるようなところに置いておいた。それから約3年間会話がない期間があったが、徐々に家族も受け入れてくれたと いう。 一方ジェレミーさんは、中学生になった時には男の子の方に惹かれるという自分に気がついていたが、カミング・アウトはアレックスさんと出会う1年~1年半前。それまでは、ご両親が同性愛を良く思っていないことを知っていたため、何も言わなかったそう。ご両親はジェレミーさんのことを愛しているが、息子が同性愛者だということを認めるのにまだ抵抗があるようだ。 PACS(Pacte Civil de Solidarité=「市民連帯契約」)*を結んだ理由は? アレックスさんとジェレミーさんは2007年1月10日にPACSを結んだ。愛し合うカップルにとっては自然な選択だったそうだ。PACSは、人生のパートナーとして共に生きることの宣言であるとともに、経済面でも異性同士の夫婦と同様の配慮がなされるため、税金対策にもなるという。 裁判所での寂しいパックスをふきとばすかのような2人。アレックスさん(左)、ジェレミーさん(右)©Alexandre de Brousse1月10日は、アポイントメントをとるための書類を提出するだけだと思い出向いたが、係りの女性に促されて書類を作成していくうちに、結局当日PACSを結ぶことになった。PACSを結ぶにあたっては、結婚と違いセレモニーもなければ証人もいない。それに加えて担当の女性が冷淡だったために、その日のことは特別良い思い出ではないそう。しかしその分、1カ月後には友達や家族を招き、盛大なパーティーをして祝った。面白い披露宴にしたかった2人は、パリの下町バルベスにドレスを買いに行き、2人そろってちょっと下品なウエディング・ドレスを身にまとい楽しんだそう。 普段の生活では、主にジェレミーさんがペットのオウムと猫の世話と掃除、アレックスさんが料理を担当している。 「同性同士の結婚がフランスで可能になったら?」との質問には、2人共「興味ない。今のままで何の不足もない」。大事なのは指輪の交換や市役所での儀式ではないと考えている。現在、2人は来年に控えた移住計画に向けて準備中。元々植物が好きで花屋を営んでいる彼らだけに、自然の豊かなタヒチでの生活に向けて夢を膨らませる日々だ。 *PACS「性別に関係なく,成年に達した2人の個人の間で、安定した持続的共同生活を営むために交わされる契約」 |
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映画祭ディレクターのフロランス・フラデリッジさん。98年からゲイ・レズビアン映画祭に参加している©Sayaka A. Nakagawa
信教と同性愛の両立の難しさを語る話題作、「A Jihad For Love」©HALAL FILMS
パリで6月28日に行われたゲイ・パレードのポスター©Inter LGBT



裁判所での寂しいパックスをふきとばすかのような2人。アレックスさん(左)、ジェレミーさん(右)©Alexandre de Brousse

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