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南仏マルセイユ ノエルの過ごし方

町にノエルのイルミネーションが灯り、広場にはノエルの市が建ち始め、行き交う人の顔もどこかうれしそう。イエス・キリストの誕生日であるこの記念日の祝い方は、フランス国内でも地域によってさまざま。夏の太陽が似合う南仏マルセイユでは、どのような過ごし方をするのでしょうか?

(Texte et photo par Reiko Fukui)

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bells年末のサントン市場

11月が過ぎると、冬が短いと言われる南仏マルセイユでも肌に触れる空気が冷たくなってきます。さらに、ミストラルと言われる南仏特有の突風が吹けば、寒さは一気に加速。慣れない寒さに衿を立て、肩をすくめて歩く人々。そんな中、マルセイユ市内の一番大きな通り、カヌビエール通り(la cannebière)にクレーシュ・サントン市場(crèche santon)が建ち始めれば、街の中はノエルのムードが一気に盛り上がりをみせます。この市場は1806年に始まり、今もなお続く伝統的な市場。「サントン(santon)」とは、プロヴァンス語の「サントゥン(santoun)」がなまったもので、「小さな聖人」という意味です。「もみの木は忘れてもサントンは飾る」という家庭もあるほど、サントンは南仏に強く根付いています。サントンは「キリスト誕生の瞬間」を表現するために作られた3~8センチのテラコッタの人形、クレーシュはそれらを納めるドールハウスです。この可愛い行事の歴史は古く、フランス革命直後から始まったと言われています。

クレーシュ・サントン
クレーシュ・サントンの飾り付け例。
サントン作り
サントン作り
サントンは職人が粘土をこね、型に入れ、焼いて、出来上がったものに着色をしていくという総手作業です。写真は「サントン界のシャネル」と呼ばれるマルセル・カルボネル氏(Marcel Carbonel)のアトリエ。総勢40名の職人が細かなサントン人形と向き合い、一つひとつ手作りで完成させます。きめ細やかな仕事に思わずため息。そして12月になると、南仏一帯に点在する職人たちがサントン市場に集い、自分の作品を自慢げに飾り、直売しています。

サントンを買うときは、キリスト、聖母マリア、聖ジョセフ、ロバ、牛、外国から来た3人の博士の計8アイテムをまず揃えます。その後、八百屋、漁師、羊飼い、ロマの人々、羊、ウサギなどお好みのアイテムを買い足していきます。クレーシュには、キリストの生まれた馬小屋を中心に、井戸、水車小屋、樹木などを集めていき、南仏人の考える「理想郷」を作り上げます。クレーシュ・サントンは家族代々受け継がれるので、かなり大きな村となっている家庭も多く、表現の仕方も各家庭でかなり違います。

飾り方は、12月4日から24日までは、キリストと東方の三博士(3 mages)以外のサントンを配置します。そして25日0時に、馬小屋にいるマリアとジョセフの間にあるワラの中にキリストを置きます。

これが「キリストの誕生」です。

年が明けて1月6日(聖エピファニーの日)に東方の三博士をキリストの近くに配置します。


こちらはある家庭に伝わるサントン。「ひいおばあさんが若い時から買い集めていたもの」ということで100年以上も前のもの。さすがに腕や耳が取れてしまってますが、修正しながら大切 に後世に残しています。
©photoval - Munster, M. Kempf

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bells12月4日
聖バルバラの日(ノエル開始)

南仏では12月4日(聖バルバラの日)に麦を育て始めます。これは聖バルバラがこの日に水に浸した小麦がノエルまでに芽吹いた数によって翌年の豊凶を占っていたことに由来しています。現在はこの日にテラコッタの小皿に水に浸した綿を敷き、その上に麦をまいて、すくすくと育つことを願いながらノエルを待ちます。もし25日までに立派に育てば、翌年はお金に困らない暮らしが出来るという願掛けもあり、子供のみならず、大人でさえも真剣に麦を育てます。ちなみにノエルのテーブルには良く育った麦をお皿に飾ります。

この日を期に、「40日間続く南仏ノエル」の火ぶたが切って落とされるのです。そして、この日からクレーシュとサントンを飾り始めます。

食卓
食卓の中央にみえるのが、元気に育った麦。

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bells12月13日
聖ルチアの日

窓ぎわにろうそくやちょうちんなどが飾られます。マンダリン(オレンジ)の実をくりぬいて作ったろうそく台からは、ほんのりぼやけた可愛い光を放たれます。

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bells12月24日19時
グロ・スペ(Gros souper)

グロ・スペ待ちに待ったノエル前夜。ノエル前夜のうたげは19時から始まります。主な料理は干した塩ダラのクリームペースト、カリフラワーとホウレンソウのグラタン、セロリ、エスカルゴなど。これらを地元で作った甘い食前酒の一種、ヴァン・キュイ(vin cuit)で頂きます。これを「グロ・スペ(gros souper)」と言い、25日の0時少し前まで続けられます。


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bells12月25日0時
真夜中のミサと13のデザート

真夜中のミサ(Messe de minuit)は、5世紀頃から毎年行われていた行事ですが、フランス革命後に禁止令が敷かれたために一時消滅していました。しかし、南仏では1930年頃に復活し、現在に至ります。

以前ミサでは祈りと歌う事に加えて、「パストラージ」と呼ばれる特別な儀式が行われていました。羊飼いや農民が子羊を捧げるというこの儀式は、村人が歌ったり踊ったりしながら子羊を披露し、最後に司祭に手渡します。農民以外の人もフガス(オリーブオイルを使ったパン)や肉、野菜、魚、果物など、それぞれの特産品を持ち寄ります。この時彼らは自分の職業を表す衣装を着る決まりがあり、この雰囲気がサントンにも表れています。

13のデザート

最近は、さすがに都会では羊飼いは見かけなくなり、真夜中のミサに「パストラージ」を行うことも少なくなりましたが、田舎の方で羊を飼っている村などではまだ続けられているそうです。

真夜中のミサから帰ってたら「13のデザート」を食べます。「13」は、「キリストと12人の使徒」を表わしており、これらのデザートも彼らに捧げるために用意されたものです。基本的な13種類は……

la pompe à l'huile d'olive qui se déguste avec le vin cuit(甘い食前酒の一種と食べるオリーブオイルの入ったパン)、les quatre mendiants(4つの乾燥果物・木の実)、les figues séches (干しイチジク)、les raisins secs(干しブドウ)、les amandes(アーモンド)、les noisettes ou noix(クルミかカシューナッツ)、le nougat blanc(白いヌガー)、 le nougat noir(黒いヌガー)、 les dattes(ナツメヤシ)、 les pommes(リンゴ)、 les raisins d’hiver(冬のブドウ)、les poires(ナシ)、 les mandarines(冬みかん)、les melons d'hiver(冬のメロン)。

この1年で太陽の恵みをたくさん受け取って作られた食物を良くかみ、味わって食べることは、南仏人にとって、何よりのごちそうになっていたのです。同じ南仏でも地域や、家庭によって用意するデザートは異なりますが、大切なのは「13種類」であること。これさえ間違えなければ他に「チョコレート」や「キャンディー」などを混ぜて「現代風」にアレンジしても大丈夫です。

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bells12月25日12時
昼のごちそう

前日とはうって代わり、七面鳥や、フォアグラ、チーズにケーキなど豪華な食事がテーブルを賑わせます。全てをノエルに捧げるつもりで用意したごちそうをキリストに感謝をしながら味わうのです。

昼のごちそう

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bells12月26日
休息日

プロバンスではクリスマスの次の日は働かない、というのが基本的な考え方。従ってこの日はお休みです。

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bells1月6日
聖エピファニーの日(公現祭)

東方の三博士がイエスを見にやって来た日と言われて います。それに従い、この日に東方の三博士のサントンを飾り、「ガレット・デ・ロワ」を食べます。ちなみに、南仏のガレットは赤や緑の砂糖漬けの飾りと粉砂糖が振りかかった、ふわっとしたブリオッシュのようなケーキです。ガレットの中に「fève(フェーヴ)」と言われる小さな陶器の人形を入れ、取り分けた時それに当たった人は、今年一年良い事があると言われています。

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bells2月2日
ろうそく祝別の日

フランス語でシャンドリュール(Chandeleur)と呼ばれる、ろうそく祝別の日は、「生まれたばかりのキリストを抱いたマリアを祝いクレープを食べた」と言われている事から、「クレープの日」としても有名です。左手に小銭を握りしめ、右手でうまくひっくり返す事が出来ると、その年は「良い年になる」と言われており、子供も大人も楽しみながらチャレンジします。おいしいクレープをたっぷりと食べた後は、家の中を華やかに飾っていたサントンをしまう作業です。壊れないようにそっと柔らかい布でくるみながら箱に一つひとつしまい、年末からおよそ40日間続いた南仏ノエルの幕が閉じます。



取材協力
Mme Christine Desbief, M Jean-Raymond Moliton

Atlier Marcel Carbonel
47/49, rue Neuve Sainte-Catherine 13007 Marseille
www.santonsmarcelcarbonel.com
アクセス:地下鉄1番線Vieux port駅より83番バスで corse d’aurelle下車徒歩3分

Musée du Terroir Marseillais
Impasse Ramelle 13013 Marseille
www.musee-provencal.fr/museeprovencal.htm
アクセス:地下鉄1番線La Rose駅より5番(または5T0)バスでchâteau gombert駅下車徒歩3分(バスの本数が少ないので注意!)


本文および情報欄の情報は、掲載当時の情報です。

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