日本のマンガが海外で大人気!ここフランスの書店でも本棚に翻訳された作品がびっしりと並んでいるのは、いまや多くの人が知る常識。だけどよくよく見てみると、その中にフランス人のMangakaの名前も並んでいることにお気付きだろうか?「マンガ=日本発信」の時代は終わった?フランス生まれのフランス育ち、そんなマンガの面白さを味わってみよう !(Texte par Masa to Enya)
マンガで交わる日本とフランス
フランスに影響を与えたマンガとして忘れることが出来ないのが大友克洋の「AKIRA」。その大友はフランスのマンガ(BD)の巨匠、メビウス(Moebius)のペンネームを持つジャン・ジローに影響を受けていると言い、またジローも大友のファンだと明言している。日本アニメ界を代表する宮崎駿もジローとは友人で、ジローは娘をナウシカと名付けたそうだ。実は日本とフランスのマンガ界でのつながりは、そう浅いものではない。劇画タッチで日本の浪人をテーマに描いたBD、「Kogaratsu」(作Bosse・画Marc Michetz)の第1巻が出版されたのは 1985年。特に1990年代半ば以降からは日本のマンガの影響はBDに多く見られるようになった。例えばサイバーパンクな雰囲気が「AKIRA」を思わせるJean-David Morvan作の 「Nomade」(画Sylvain Savoia / Philippe Buchet)や「HK」(画Trantkat)(共にAkira collectionというシリーズ)をその先駆けに挙げることが出来る。2000年代に入ってからもKaraの描く「Gabrielle」や「Miroir des Alices」には日本のマンガを思わせるタッチが見て取れるし、ファンタジーものの「Pixie」(作Mathieu Mariolle・画Aurore Demilly)もヨーロッパスタイルのBDよりも、日本のマンガをほうふつさせる。
現在では、体裁も従来のBDのようにフルカラーでハードカバー、50ページ程のページ数といったものではなく、白黒でサイズや厚さも日本のマンガと同じようなものが出始め、コマ割りや動きを重視した描き方もBDより日本のマンガに近い形のものが書店に並ぶ。そうした新しい試みに「ドラゴンボール」や「ワンピース」などを読んで育ったフランス人やヨーロッパの作家が、その影響を隠すことなく自己の作品に投影し、新ジャンルを確立しつつあるのだ。彼らが目指すのは日本のマンガの真似ではない。あくまでも日本のそれに影響を受けつつ、インターナショナルにマンガの世界を開いていく挑戦と言っていいだろう。少年向けの冒険ものや少女マンガはもちろん、ハンドボールをテーマにしたスポーツもの「Hand 7」やチェスの世界を描いた「Zeitnot」などジャンルもさまざま。日本とヨーロッパの交流から生まれた新時代のマンガはしっかりとその枠を広めつつある。フランスのマンガを日本語の翻訳で読むなんて日も、そう遠くないかも?

©Delcourt G. Productions
BDの形式だからといって、マンガとはまったく別物なんてことはない。ファンタジー作品のPixie(作Mathieu Mariolle・画Aurore Demilly)にも日本のアニメの雰囲気が漂う。作者のオロールさん(右下)とマチューさん(右上)

©Soleil Productions
Kara の「Le Miroir des Alices」。彼のオフィシャルHP(www.karafactory.com)では、イラストなどをたくさん見ることが出来る。(中にはマンガ風のイラストを集めたIllustrations Manga-Likeのコーナーもある)

日本のコミックを思わせる作品も増えてきた。Moonkey の 「DYS」(左©Pika)と Sébastien Célimon、Albert Carreres- Guardiaの「Hand 7」(右 ©Humanoides Associes)。
日本のマンガやアニメ、ゲームの影響を受けながら育った世代が放つ、フランス生まれのMangaの数々。好きな画やタッチで選んでもよし、ストーリーやジャンルで選んでもよし、「あのマンガに似てる」と日本のマンガと比べるもよし。いろいろな楽しみ方があるMangaを紹介しよう。
少年マンガの王道!
Dreamland
Reno作Dreamland (Pika Édition)。
現在は第6巻まで発売中。
©Pika
マンガのデザインやコマ割り、リズム、何よりも長い物語を果てしなく語ることが出来る可能性に引かれてマンガに乗り出したレノ・ルメール(Reno Lemaire)。日本のマンガ「ワンピース」の大ファンだという彼のヒット作品 「Dreamland」は、少年マンガの王道を行くような作品だ。主人公テランスは火への恐怖を克服することで火をコントロールする力を得る。夢の国ドリームランドへと導かれ、自分の弱点を乗り越えることで入ることが出来るその国で、仲間たちと共に冒険を繰り広げる。日本の少年マンガを思わせる設定だが、実はフランス人だから描ける部分もある。レノが創り出した夢の世界と現実世界の二重の舞台は、日本のマンガであれば例えば東京の街や文化、生活背景が作品の裏に見えるように、フランスならでは生活風景や社会、文化が描かれているのだ。フランスならではの日本風マンガのエッセンスが「Dreamland」の中にある。
<参考文献 : Animangaによる作者へのインタビュー>
フランス発の少女マンガ
Pink Diary
Jenny作「Pink Diary」にはオフィシャルホームページもあり、各巻のあらすじや登場人物を知ることが出来る。©Editions Delcourt pinkdiary.free.fr/html/manga/album/album.htm
右写真 ©Olivier Roller
マダガスカル出身のジェニー(Jenny)の作品「Pink Diary」は、フランスで最も成功を収めたフランス製マンガのひとつ。16歳の少女キヨコと双子の兄ケンジを主人公に、複雑な心理模様の上に描かれる恋愛物語。2人の幼なじみで、昔キヨコが恋心を抱いていたトミー、トミーの恋人で内気な女の子のサチコ、トミーを奪おうと手を尽くすアケミ、兄妹の母親の仕事仲間でキヨコを支える若い写真家セイといった面々がドラマを繰り広げる。日本を舞台に、恋愛やいじめ、親との関係や自分のイメージなど思春期の悩みをテーマに、少女マンガという手法でドラマを生み出したジェニーの意欲作。「初めてマンガを読んだ時から、もしBDを描くことがあれば日本人のように描くだろうと思っていた」という彼女が長年温めてきた作品は、しっかりとした形となって読者を引きつけた。
<参考文献 : 雑誌Shôjo Mag (FJM publication), Mai/Juin 2006>
日本のマンガへのリスペクト?
Sentaï School
Phillippe Cardona、Florence TortaのSentaï School -L’École des Héros-(Kami)。マンガ雑誌がほとんどないフランスでは珍しく、連載マンガから派生したシリーズ。日本のマンガの参照が多く、その影響は明らかだ。
©Groupe Tournon-Carabas/kami Cardonna Torta 2004
フィリプ・カルドナ(Phillippe Cardona)とフロランス・トルタ(Flor ence Torta)の「Sentaï School -L’École des Héros-」は、制作途中で投げ出されてしまったロボット、ケンが、スーパーヒーローを養成する学校センタイ・スクールに通うというギャグマンガ。2008年の11月に発売されたクリスマス特別編を合わせて、既に5巻も出ている。ケンや仲間たちのドタバタがナンセンスなギャグを引き起こすが、このマンガの面白いところは「パロディ」にある。「北斗の拳」や「キン肉マン」、「めぞん一刻」や「ベルサイユのばら」、最近のものでは「名探偵コナン」や「遊戯王」。他にも仮面ライダーやウルトラマン、アメリカンコミックのバットマンなどなど、多くのキャラクターがデフォルメされたパロディとして登場する。フランスでどんな日本のマンガが読まれているのかが伺い知れるマンガでもあり、80年代以降のマンガを多かれ少なかれ読んだことのある読者なら、おもわずニヤリとしてしまうだろう。
Collection Shogunもチェックしてみよう!
フランスの出版社 Les Humanoïdes Associés がグローバ©Humanoïdes Associés ル・マンガと銘打ち、数々のマンガ・シリーズを世に送り出している。その名も「Shogun」。作者の国籍もヨーロッパ、アジア、アメリカとさまざまで作品も少年マンガや少女マンガはもちろん、ハードボイルドな青年向けやスポーツ、ポーカーなど多様なジャンルが揃っている。ファンタジーアドベンチャーものの 「Pen Dragon」や少女マンガ「Kairi」、京都の街へ行ったフランス人の青年を主人公にした格闘マンガ「B.B.Project」、侍を描いた「Tengu-Do」など読み応えたっぷりの作品が揃っている。日本人作家以外のMangaにも興味がある人は、ぜひチェックしておきたいコレクションだ。ちなみに最近のイチオシはダイナミックな画と奥深いシナリオで独自の世界観を確立したサイバーパンクなアドベンチャー「Omega Complex」。
公式サイトShogun City: www.shoguncity.com

さまざまなジャンルを展開するショーグン・シリーズ
©Humanoïdes Associés

フランスの最近のアニメを見ていると、ギャグやストーリーのテンポはヨーロッパ調だけど、どことなく日本のアニメを思わせる、そんな作品に出会うことがある。ヴァンサン・シャルヴォン=ドメルセ(Vincent Chalvon-Demersay)とダヴィッド・ミシェル(David Michel)が制作するアニメが特にそうだ。彼らの作るアニメの多くはアメリカやイタリア、カナダとの共同制作で日本は関わっていない。しかし、2002年からTF1で放送された女性3人を主人公にした大人気シリーズ「Totally Spies!」 、2003年にM6で放送された「Martin Mystère」、2006年にFrance3で放送された「Team Galaxy」など、日本のアニメの影響が指摘されることも少なくない。彼らの作品以外でも、France3で始まったばかりの 「Podca ts」は日本のテレビゲームの雰囲気が感じられるし、日仏共同制作の「Oban Star- Racers」なんてアニメも2006年に制作されている。
ところで日本のアニメが世界的に影響を与えているという話をよく耳にするが、ヨーロッパのアニメに「ポケモン」や「ドラゴンボール」などの大ヒットした作品の影響が近年になって見られるようになったのかというと、実はそうとも言えない。日本とフランスのアニメの共同制作は昔からしばしば行われていたからだ。例えば今年2月に亡くなったフランスのアニメ制作者の巨匠アルベール・バリエ(Albert Barillé)の場合、彼が作り続けた教育アニメ「Il était une fois...」シリーズの第1弾、「Il était une fois... l'Homme 」(1978年制作)では、 日本のタツノコ・プロダクションが協力している。1982年にNHKで放送された「太陽の子エステバン」もフランスとの共同制作(フランスでのタイトルは「Les Mystérieuses Cités d'or」)。とりわけ1981年に放送された作品、ホメロスのギリシア叙事詩「オデュッセイア」を基にしたSF、「Ulysse 31」は特に有名、日本では「宇宙伝説ユリシーズ31」として放送された作品だ。「Ulysse 31」はフランスのアニメでもあり、同時にキャラクターデザインを「聖闘士星矢」や「キューティーハニー」の荒木伸吾が担当しているので、日本人の見慣れたアニメの雰囲気がそこにある。
日仏共同制作のアニメ「太陽の子エステバン」©France 5

フランスのアニメであっても日本のアニメが関わってきた。そうしたこともあってか、フランスでは日本のアニメに対する抵抗もあまり感じられない。「ドラゴンボール」で育った世代には「子供の頃は、『ドラゴンボール』はフランスのアニメだと思っていた」という人がいるほど、日本のアニメはフランスに浸透しているのだ。こうしてみるとヨーロッパ的なセンスや文化と日本のアニメが融合された作品がどんどん放送されていくのも納得がいく。日本のアニメ、アメリカのアニメ、ヨーロッパのアニメということ自体が、もはや時代遅れなのかもしれない。
「Spiez!」を観てみよう!
今年の春からTF1の番組TFouで放送予定の「Spiez! Nouv elle Génération」。先に挙げたヴァンサンとダヴィッドが制作したアニメーションで、人気作品「Totally Spies!」の世界を踏襲しながらも、まったく新しいシリーズを展開する。今回の主人公はリー、マークメガン、トニーという11〜13歳の4兄妹。学校や家という普通の子どもの生活と、世界を駆け巡り悪と戦うスパイとしての二重の生活を舞台にコメディ・アドベンチャーが繰り広げられる。「Totally Spies!」では、どちらかと言えば女の子を対象にしていたが、今回はハイテク・アイテムなどを駆使しながら活躍する少年向けの作品に仕上げられており、グラフィックもアメリカンコミックの雰囲気などを取り入れながら革新を図った作品だ。長年に渡り「Totally Spies!」をヒットさせた制作者が力を注いだ作品だけに期待が高まる。そのタイトルに付けられたようにフランス発のアニメーションのNouv elle Génération(新世代)の幕開けとなるか!?
「Martin Mystère 」や「Totally Spies!」の仕掛け人ヴァンサンとダヴィッド。日本のアニメの影響というよりも、より広いインターナショナルな射程を意識する彼らは、Spiez!でもその姿勢を貫こうとしている。

フランスだけでなく、世界中でヒット した「Totally Spies!」この3人組をどこかで目にしたという人も多いのでは。©Marathon Media

新番組Spiez! 世界を舞台にスパイ4兄妹の冒険が繰り広げられる。アメリカのアニメやコミックを意識した作風が伺える。
関連記事:特集「フランスのマンガ、バンド・デシネ(BD)の世界へようこそ」
03/07/2007
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