
| ロマン・ギャリ |
Romain Gary (1914-1980)ロマン・ギャリあるいはエミール・アジャールの名で知られるこの男は、本来一人一度しか受賞することができない仏文学賞のゴンクール賞を、2つのペンネームを使うことで2度獲得した唯一の作家である。 彼は、現リトアニアの首都ビリニュスに生まれたポーランド人で、14歳の時ニースに母親と移住、後にパリへと移り住む。1935年にはフランス国籍を獲得し、フランス空軍に入隊。第二次大戦中はレジスタンスとして活躍し、終戦後は外交官の職を務めた。作家としては、ロマン・ギャリの名で1956年に執筆した「天国の根(Les Racines du ciel)」、エミール・アジャールの名で1975年に出版した「これからの一生(La Vie devant soi)」で2度ゴンクール賞を受賞した。それ以外にも多くの作品を残し、フランスでは著名作家のひとりに数えられる。 パリのアパルトマンで拳銃自殺をし、その生涯を閉じた。ギャリとアジャールが1人の人物だと世間が知ったのは、その死後のことであった。フランスのために戦い、またフランス外交官のポーランド人であり、またユダヤ人の血統を持つという複雑なアイデンティティを持つ彼は、本当に複数の人物から成っていたのではないかと思えてくる。「偽り(Pseudo)」という作品の中で、「俺は自分から逃れるために、あらゆることをやってみたよ。スワヒリ語だって習い始めたのは、それがそれでも俺からとても遠くにあるものだったからさ」と書いている。ひとりの自分から逃れ、そしてまた別の自分へと自らを拡散させていく。そんな作家の姿が彼から見えるように思えるのだ。
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