最新の特集
アルペン・スキー フランス代表選手 ジュリアン・リズルー
|
|
|||
![]() Photo by Hajime Yanagisawa |
Julien Lizeroux 1979年9月5日生まれ、サヴォア地方出身。本職は税関員だが、フランス・スキー連盟からの招集にはすべて応じることができる雇用契約を交わしている。2000年からアルペン・スキーのテクニック系種目を本格的に行うようになり、現在は主に回転種目などで活躍。09年には、ヴァルディセール(フランス)で行われた世界選手権の回転と複合で準優勝。キッツビュール(オーストリア)とクラスカ・ゴーラ(スロベニア)でのW杯では回転で優勝した。00年以降は、同じく回転種目のジャン=バチスト・グランジュ選手との二枚看板でフランス代表チームを牽引している。 |
スキーを始めたのはいつ頃からですか。
最初にスキーをしたのは、2歳半の時。両親と一緒に地元サヴォアのラ・プラーニュにあるスキー場で滑りました。7歳でラ・プラーニュのスキー・クラブに入り、今でも僕はそのクラブのメンバーです。もともとスポーツ全般が好きでしたが、スキーにのめり込むようになったのは、1992年にフランスのアルベールビルで行われた冬季五輪を観にいってからです。そこでアルペン・スキー種目に惹かれるようになりました。
アルペン・スキーの魅力はどのようなところにあるのでしょうか。
大自然、山脈、滑走、スピード感、恐怖、そしてアドレナリン。アルペン・スキーは、五感すべてを刺激するスポーツだと思います。高揚感の絶頂時などは、全身の神経が研ぎ澄まされます。そして、このスポーツに競技性が加わるとさらに刺激が強くなって、病み付きになってしまうのです。
冬季五輪のフランス代表選手は、どのように選ばれるのですか。選ばれるためには何が必要なのでしょうか。
フランス代表はW杯など世界大会の成績と順位で決定するので、完全な実力主義です。必要なことといえば日々の練習と努力、そして自信を持って挑むこと。種目ごとに、最高4名ずつ選ばれます。

キッツビュール(オーストリア)で開催されたアルペン・スキーW杯の回転で優勝を決めたときのリズルー選手 Giovanni Auletta/AP/Press Association Images
ライバルをあえて挙げるとすれば、
ストップウオッチになりますかね。
五輪でメダルを得るために、重要なポイントは何ですか。
五輪当日までにコンディションを整えることはもちろんですが、とにかく、当日にすべての力を出し切ってメダルを獲得することが一番重要になります。あとは、グループや競技順位を決めるゼッケンも大切な要素ですね。シーズン中にできるだけ良い成績を残し、良いゼッケンを手に入れること。そして五輪直前となる1月の競技で、自信をつけることです。
フランスのジャン=バチスト・グランジュ選手が最大のライバルと言われていますが、ほかに気になる選手はいますか。
ライバル視する選手は特にいません。あえて挙げるとすれば、ストップウオッチになりますかね。グランジュは僕の大親友です。国外にも仲の良い選手がいて、テッド・リジェティ(米国)、ミカエル・ジャニック(カナダ)、ジェンス・ビッグマーク(スウェーデン)、アクセル・スヴィンダル(ノルウェー)といった選手などとも交遊があります。スキーを通じて世界中にたくさんの友人ができることが、何よりもうれしいです。
スキー競技は身長や体重ごとにクラス分けされていません。身長や体重の違いは競技に影響しますか。
身長差や体重差が結果に直接影響するとは、あまり感じません。選手それぞれ自分の体格に合った走法を身につけているはずなので、体格差による優劣は特にないと思います。ただし、高速系種目である滑降では体重の重い人が有利かもしれませんね。滑降はアルペン5種目の中でもコースが一番長いので、体重が重いほど、その分スピードがどんどん乗ってくると思います。

ビーバークリーク(米国)で開催されたアルペン・スキーW杯、スーパー複合での滑降 Charles Krupa/AP/Press Association Images
フランス代表選手として三色旗を背負う気持ちはどうですか。プレッシャーを感じていますか。
オリンピックに限らず、世界選手権やW杯などの国際大会では、常にフランスの国旗を意識します。私自身もフランス人であることに誇りを持っており、国の威信を背負って競技に挑むことで、体全体に心地良い緊張感が行き渡ります。私はその緊張感が大好きです。
競技前に験を担いだりしますか。
特に験を担ぐことはありません。ただ競技とは直接的に関係ないことで習慣的に行うことという意味でいえば、代替医療の一つであるカイロプラクティックが大好きです。治療してもらうと、心身共にリラックスできます。
アルペン・スキー競技のルールは難しいのでしょうか。競技を観戦するときに、ルールの詳細を知っておいた方がより楽しめると思いますか。
基本的にはスタート地点からゴールまで、できる限り早く到達することを目的とするスポーツですから、それ以外のルールを把握していなくとも、競技観戦は十分に楽しめると思います。ただ簡単に説明すると、回転は2回の滑走タイムの合計を競い合います。複合は滑降1本と回転2本の合計タイム。滑降とスーパー大回転は、一度しか滑走しないので見逃さないように。回転系の種目では、ターン間隔が一番狭い区間だと最高時速が150キロにも達するので、競技コース間近で観戦すると、選手はほんの一瞬で通り過ぎていきます。
スキーは娯楽として広く楽しまれているという理由で、スキーのプロ・リーグ化に反対する選手もいます。しかし、プロ・リーグ化のメリットもあるかと思いますが、そうしたことについてフランス・スキー連盟と意見を交わすことはありますか。
スキーは確かにアマチュア・スポーツです。しかし、どのスポーツにもいえることですが、あるレベル以上のことを行おうとすれば、プロ・リーグ化の道は避けて通れないものだと思います。例えば自転車競技がそうですよね。
スキーでも、スポーツ用品メーカーがスポンサーとして我々をバックアップしてくれますし、大会で優勝すれば賞金を得ることができます。しかし、賞金のみで生活できる選手などいません。プロ・リーグができれば、競技に集中できるかもしれませんが、今のところスキー連盟からそういった話を聞いたことはないですね。

2009年10月に行われたフランス代表の合同記者会見。インタビューを受けているのがリズルー選手 Photo by Hajime Yanagisawa
「腕を高く上げてチャンスをつかみ取れ」って
自分に言い聞かせます。
天候や雪質などが競技に影響するので、スキーは順応のスポーツだとよく言われます。順応性を高めるために、スポンサーとなっているスポーツ用品メーカーに色々と細かい注文を出したりしますか。
少しでも良い成績を残すために、注文は当然行います。そうすることで、メーカーの技術開発にも貢献できるのです。また、あらゆる天候や雪質に対応するために、スキー競技の選手は状況に適した器具を数種類持っています。メーカーとの協議も年間を通して行われるので、競技においては一番良いコンディションの機材を使うことができます。
前回のトリノ五輪は負傷のために出場を逃しました。今年が五輪初参加となりますが、具体的な戦略などはありますか。競技前のシミュレーションはもう始めましたか。
本番に臨むにあたって、特別な戦略を立てることはありません。ただ本番で100%の力が出し切れるようにするということだけです。私はスタート地点に立ったら必ず、「腕を高く上げてチャンスをつかみ取れ」と自分に言い聞かせて気合いを入れます。
スキーの滑降では時速100キロ以上のスピードが出るそうですが、その時、世界はどのように見えますか。
100キロ以上の世界では、すべてが一瞬で過ぎ去る感じがします。高速道路で車の窓から顔を出してみてください。たぶん同じような感覚が味わえると思います。だからスキーの滑降では、すべてが一瞬で過ぎ去っていくという状況の中で瞬時の判断を行うことがとても重要です。
また、ゴールまで集中力を持続させる必要もあります。回転では、体の柔軟な動きや瞬発力も大事です。ゴール間近では太ももはパンパンに腫れ上がり、心拍数も1分間で190回に到達します。どんなに疲れても、冷静さを保たなければなりません。自分の置かれた状況によっては、スタート地点からゴールまでのおよそ1分間をとても長く感じることがあります。しかし、絶好調の時はこの時間があっという間に過ぎていきます。
バンクーバー五輪への意気込みを聞かせてください。
競技までにコンディションを整え、練習を積み重ねることで高い技量を身につけ、それに裏打ちされた自信と共に持っている力をすべて出し切るだけです。ただし、スキー競技の場合は当日の天候やフィールドの雪質によってもタイムが変わるので、結果は運にも大きく左右されます。でも、せっかく参加するのだから、当然メダル獲得を目指します。

2018年に行われる冬季五輪の開催地に立候補しているアヌシー市をPRするフランス代表チームとラマ・ヤド・スポーツ担当相(前列左から3人目) Photo by Hajime Yanagisawa








EUR 







