|
キム・ヤンヒ
|
|
真冬のソウル。配偶者とサムゲタン(韓国の栄養スープ)専門店を求め、10分歩いたところで彼が一言。「たかがスープのためになんでこんなに歩くんだよ!」アルザス人の彼にとって、スープ=老人食、軽食らしい。
しかし私のカルチャーでは、スープや汁物を軽視してもらっては困る。昆布や削り節などで海の幸のエキスを出し、そこに海、山、畑の幸を投入した日本の汁。骨付き肉や鳥一羽を豪快に使い、長時間煮たエキスを頂く韓国のスープ。一滴一滴が黄金のしずくなのだ。そのしずくをどうも軽視している彼だが、固形物の割合が高いブイヤベースには興味を示す。液体の割合が問題か?
そんなある日、しずく事件は起こった。夕食はキッシュのサラダ添え。彼が席を立ったので、私の皿を重ねた。「うっそー」。台所から戻った彼の手にはバゲット。「まだ終わってないのに」。キッシュからしみ出したソースと、サラダのドレッシングの残りをパンに吸わせて最後の一滴まで味わうつもりだったという。
黄金のしずくは存在する。違う形だが。
|
|
(以下、Aは日本人、Bはフランス人)
A : Chaque année mon fils de 10
ans va rester chez mes parents à
Tokyo pour quelques semaines.
Apparemment Il a quelques
problèmes d'étiquette.
毎年、10歳の息子が東京の私の実家に数週間滞在するんだけど、マナーに問題があるみたい。
B : C'est-à-dire ?
と言うと?
A : Il joue avec les baguettes, met
du riz dans la soupe, mange des
nouilles sans faire de bruit, met de
la sauce de soja sur le riz.
おはしで遊ぶわ、おみそ汁にご飯を入れるわ、音を立てずに麺類を食べるわ、ご飯にしょうゆをかけるわ。
B : Je ne comprends pas.
それのどこがいけないの?
A : Tout ça est contre l'étiquette
japonaise. En plus, mes parents
① sont dégoûtés qu'il ② trempe son
pain dans son chocolat et qu'il
③ sauce son assiette avec du pain.
みんな日本のマナーに反しているのよ。それにうちの親、あの子がパンをココアに浸して食べたり、お皿に残ったソースをパンで拭って食べたりするのが耐えられないって。
① être dégoûté ~で、「~にうんざりする、嫌悪の念を抱く」。 動詞dégoûter~は、「~をうんざりさせる、嫌悪の念を抱かせる」。Il me dégoûteで、「彼に嫌悪を感じる」。dégoûtantは形容詞で「嫌な、胸をムカムカさせるような」。
② tremper A dans Bで、「AをBに浸す、つける」。tremper son pain dans son café「パンをコーヒーに浸す」のように使う。
③ saucer~で、「(皿の)ソースをきれいに(パンなどで)拭い取る」。料理のエキスが凝縮しているソースを一滴でも残すことに耐えられない仏人は多いようだが、マナー的にはあまりお勧めできない。
| |
|
 |
参考文献
Dictionnaire Historique de la Langue Française par Alain
Rey, Robert
▲
|