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dim 24 juin 2018
近代都市デフォンス─シグナル・タワー
デフォンスといえば、日本では新凱旋門の呼び名で有名なグランダルシュ(Grand d’Arche)を始め、首都パリとはうってかわって近代的なビルの立ち並ぶ地区。第二次世界大戦以降の急激な経済成長によるオフィス需要の増大に答えるべく、フランス政府が着手した新都市デフォンスの歴史と新高層建築物シグナル・タワ ーを紹介。(編集部 柳澤創)
新凱旋門

ヌーベル X シグナル・タワー

ヌーベル氏2008年5月26日、デフォンス地区整備公社(Epad)は、パリ近郊デフォンス地区の新しい超高層建築物「シグナル・タワー(Tour Signal)」の設計者に、フランスの建築家ジャン・ヌーベル氏を起用した。シグナル・タワーは、デフォンス開発計画50周年の記念建造物であると共に、居住空間と商業空間を完全融合させたフランス初の多機能超高層ビルとなる。2013年12月完成予定。

居住、商業空間の融合

ビルの外観はシンプルな長方形だが、内部構造はヌーベル氏ならではの奇抜な工夫がなされている。シグナル・タワーは、商業、企業、住居、ホテルの4つの区画に分けられており、各区画は巨大正方形のブロックごとにまとまっている。つまり巨大な正方形のブロックを縦に4つ積み重ねたような形をしているわけだ。(写真A)

シグナル・タワー

最下方は商業区画(10,000㎡)、2番目の区画は企業区画(50,000㎡)、3番目はホテル区画(33,000㎡)、最上部のブロックは住居区画(39,000㎡)となっている。この建物の最大の特徴は、窓の開けられる超高層ビルであること。通常高層ビルでは気圧の関係上、開閉窓の設置はタブーとされている。しかし、シグナル・タワーの各ブロックには巨大な吹き抜け空間(アトリウム)があり(写真B)、その空間が気圧を調整する役割を果たすのだ。 (写真C)

シグナル・タワー、アトリウム

シグナル・タワー気圧の調整

「未来の新高層ビルということで、固定観念やタブーを捨て去りました」と語るヌーベル氏。最上部の住居地区にいたっては、アトリウムに庭園の設置が計画されており、住人は自由に窓の開閉が出来、高層ビルにいながら季節の移り変わりを肌で感じることが出来るという。

内装は、フラクタル(幾何学の概念)の父と言われる仏系米国人数学者ブノワ・マンデルブロを意識し、空に登るドラゴンをイメージしている。

持続可能な開発とエコロジー

昨年行われた環境グルネル会議以降、「持続可能な開発」という言葉はすっかりおなじみとなった。もちろん、このシグナル・タワーにもさまざまな工夫が施されている。例えば、住居、商業一体型の超高層ビルの場合、電力使用量は通常のビルのおよそ8倍、年間1㎡あたり400kWhが想定される。しかし、シグナル・タワーの場合、日中は大きな吹き抜け窓から外光を得ることが出来、これまでの高層ビルでは不可能だった開閉窓のおかげで、換気機能も最低限の動力で可能になる。さらに、ビル最上部にはソーラーパネルと風力発電装置が設置されており、年間1㎡あたり50kWhの電力が供給出来るという。この他、建設資材などもエコロジーの素材を使うよう計画されている。

シグナル・タワーの建設費

シグナル・タワーの出資者は、仏クレサ(Cresa)系列のメデア(Medea)と、スペインのライエタナ・デサロロス不動産(Layetana Desarrollos Immobiliarios)で、ライエタナは過去に、ヌーベル氏が設計したバルセロナのトーレ・アグバール(Torre Agbar)にも出資している。シグナル・タワーの建設費はおよそ6億ユーロ。そのうち1億ユーロはEpadへの不動産税(Charge Foncière)だ。ホテルの部屋数は333室。住居区画は、およそ200㎡のアパートが90室。出資者ライエタナ不動産によれば、全て賃貸を想定しているそうだ。


ジャン・ヌーベル Jean Nouvel
Jean1945年8月12日、ロット・エ・ガロンヌ生まれ。1987年にパリ、セーヌ川沿いに建設された「アラブ文化会館」で脚光を浴びる。この建物は、カメラの絞りをヒントに外光の明るさによって建物内の明るさを調整出来る。以降も、光を意識した作品を多く発表している。近年の作品では、バルセロナのアグバル・ビル(2005年)、パリ、ケ・ブランレ美術館(2006年)などがある。2008年、建築家のノーベル賞と言われる、米国のプリツカー賞受賞。

シグナル・タワーのプロジェクト

2008年は、デフォンス開発計画がスタートしてから50年目を迎える記念すべき年。1889年にパリ万国博覧会の際に、フランス革命100周年を記念して建設されたエッフェル塔のように、シグナル・タワーはデフォンス、そしてパリを象徴する新しいモニュメントとしての意味合いを持つという。

今回の公募でEpadが建築家に要求した大きなテーマは2つ。「持続可能な開発」と「多目的高層ビル」の設計だ。「持続可能な開発」については、設計者にフランスの環境品質基準(HQE)にとらわれることなく、高層ビル建設の先進国である米国(LEED)や英国(BREEAM)などの良い部分を積極に取り入れ、未来の環境基準を想定した設計を求めている。建設素材だけでなく、次世代にも引き継がれる建造物を想定するエネルギー資源の再利用なども選考基準に大きく反映された。もうひとつのテーマ「多目的高層ビル」は、住人、商人、企業人など全てが交じり合える街のような存在を建造物に組み込むこと。企業集中型の従来の都市計画ではなく、住民と共存してゆける、未来の都市を想定した建造物が要求された。

今回シグナル・タワーの審査委員長に抜擢された、国民運動連合(UMP)のパトリック・ドゥブジャン党首は、最終審査に勝ち残った5名の建築家に ついて以下のように語っている。

「最終選考に残った5人の建築家はいずれも、素晴らしい案を提供してくれ、5月26日の最終選考で、我々は大いに迷いました。特にサー・ノーマン・フォスターの案は、非常にクリエイティブでしたが、出資者から最終的な承諾が得られず、フォスター氏と争ったジャン・ヌーベル氏に軍配が上がったのです。しかし、5名の提案はどれも甲乙付けがたい出来栄えでした」

惜しくも実現には至らなかった4人の建築物を紹介する。

Studio Libeskind Architectスタジオ・ライブスカインド・
アーキテクト

Studio Libeskind Architect

特徴:住居、テナント、イベントホールなどの融合をイメージし、建物の構造がらせん状にねじれているのが特徴。シンプルな幾何学的デザインは全ての階で天窓からの外光が差し込む構造となっている。©Studio Libeskind Architect / Epad 2008

Studio Libeskind Architect
©Studio Libeskind Architect / Epad 2008
全長 255m
床総面積 119,000㎡
企業地区総面積 49,000㎡
住居地区総面積 36,000㎡
商業地区総面積 19,000㎡
多目的ホール総面積 8,000㎡
その他 7,000㎡
出資者 Orco Property Group
Jacques Ferrierジャック・フェリエ
Jacques Ferrier

特徴:アメリカのワールド・トレード・センターを想起させる、ツインタワー構造の建築物で、最終選考5作品の中で最も大きな床面積。©Jacques Ferrier / Epad 2008

Jacques Ferrier
©Jacques Ferrier /
Epad 2008
全長 310m
床総面積 250,000㎡
企業地区総面積 30,000㎡
住居地区総面積 120,000㎡
ホテル地区総面積 50,000㎡
商業地区総面積 40,000㎡
その他 10,000㎡
出資者 Hermitage Immobilier
Sir Norman Fosterサー・ノーマン・フォスター
Sir Norman Foster

特徴:デフォンス南口からエスプラナード周辺のデフォンス8区に建設予定。この地区には、出資者のラ・リュセット・カンパニーが1983年に建設したスコア・タワーがあり、シグナル・タワー建設の際には、スコア・タワーは取り壊される予定。 外層の独創的な色遣いが特徴。©Sir Norman Foster / Wikipedia / bigbug21

Sir Norman Foster
©Sir Norman Foster /
Epad 2008
全長 297m
床総面積 112,000㎡
企業地区総面積 80,000㎡
ホテル地区総面積 28,000㎡
デザイン面積 40,000㎡
出資者 Compagnie La Lucette
Jean-Michel Wilmotteジャン=ミッシェル・ビルモット
Jean-Michel Wilmotte

特徴:企業、住居、商業、3つの区画がねじれ絡まるようなデザイン。同じ構造のタワーが、絡み合っていることから、各区画には固有の進路方向が発生し、シグナル(=合図、標識)・タワーの語源を強調する作りとなっている。©Jean-Michel Wilmotte / Epad 2008

Jean-Michel Wilmotte
©Studio Libeskind Architect / Epad 2008
全長 284m
床総面積 115,000㎡
企業地区総面積 50,000㎡
住居地区総面積 10,500㎡
ホテル地区総面積 42,500㎡
商業地区総面積 9,000㎡
その他 3,000㎡
出資者 Bouygues Immobilier - Centuria

デフォンス50年の歴史

デフォンスは首都パリ西部、オー=ド=セーヌ県(92)に作られた都市再開発地区。

ルーブル美術館と凱旋門を結ぶパリ歴史軸(axe historique)の延長線上にある。

この地区の開発を目的としたデフォンス地区整備公社(Epad)は、フランス第五共和制誕生の3週間前、1958年9月9日に30年間という期限付きでは設立される。(*1) 首都パリとは一線を引き、近代的なオフィス街の開発を目指したデフォンスでは、主に大手企業の自社ビル(Immeuble de bureaux)の建設が念頭に置かれた。1964年、Epadは政府との交渉で高層建造物の新法案を設定。これにより高さ100mまでの高層ビルの建設が可能となった。この時期に建設されたビルは第1世代ビルと呼ばれ、1966年にEpad最初の高層ビル、イニシャル・タワー(Tour Initial、旧Tour Nobel)が完成した。(*2)

歴史
上:1950年代、CNIT建設 風景 
中:1955年、デフォンス開発計画時の構想図
下:1964年のデフォンス周辺写真

オフィス・ビルの需要が増えたことで、1970年に法案は改定され、高さ100mを越す超高層ビル(第2世代ビル)の建設が可能となったが、1973年のオイルショック以降は、経済不況によりデフォンス地区の開発は一時停滞する。(*3)1980年代初頭、Epadは開発の遅れを取り戻すべく、第2世代までの高層ビルとは打って変わり、経済的な低層ビルを主流とした第3世代ビルの提案を開始した。この戦略が功を奏してデフォンスは一気に活気を取り戻す。1982年にはミッテラン大統領の提案で、グランダルシュの建設がスタートした。1989年、グランダルシュ完成。 1992年、地下鉄1番線Esplanade de la Défense、La Défense-Grand Arche駅の開通と1990年代は順調な滑り出しに見えたが、1993年再び不況に突入、1997年までデフォンスの開発はまた停滞する。しかし、21世紀に入り、世界中で300mを越す超高層ビルの建設が主流となり、Epadは再び活気を取り戻した。

現在デフォンスではシグナル・タワーを含め、新たに8の超高層ビルが建設中だ(建設予定も含む)。
(写真提供:Epad2008)

*1:デフォンス地区最初の建造物は1958年に誕生し、現在でも展示場として活躍している三角形状の新産業・技術センター(CNIT)。
*2:歴史上では、新法案誕生の1年前、1963年に完成したエッソ・ビル(Tour Esso)がフランス最初の高層ビル。
*3:1973年に落成した、地上59階、高さ210mのモンパルナス・タワーは、1990年に建設されたメッサタワー(ドイツ・フランクフルト)の登場まで、欧州一の高さを誇る高層ビルだった。

建設予定地
建設予定ビル

 

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