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ロンドンのゲストハウス
sam 27 août 2016

あなたの知らないエッフェル塔

フランスのシンボル、エッフェル塔。「フランスに来たならエッフェル塔に行け」とフランス人が自慢気に語るように、多くの人を魅了するモニュメントでもあるが、120年以上君臨し続けられ、考え尽くされた構造やそれを守る人々はあまり知られていない。エッフェル塔の内部の魅力に迫る。(Texte: Kaoru Urata)
建設中のエッフェル塔

フランスの鉄の女

「La Grande Dame de Fer(鉄の女)」と呼ばれ続けられるエッフェル塔。120年以上にわたりフランスを代表するモニュメントとして、知らない人はいないだろう。電波塔としてだけでなく、有料の史跡建造物入場者数としても毎年パリ市内では最多、世界で最も見学されているモニュメントの1つでもある。

アンテナ120本を含めた身長は324m、体重1万100トンの体を支える構造は、現代の構造学でも興味を抱く題材だ。

ギュスターヴ・エッフェル
ギュスターヴ・エッフェル

2年2カ月と5日間を掛けて、150名の職人が携わり、エッフェル塔は1889年3月31日、パリ万博のために竣工された。オ―プニングでは、生みの親であるギュスターヴ・エッフェル(1832 ~ 1923)が1710段を駆け上がり、塔のてっぺんにフランス国旗を掲げた。当初は20年間で解体予定のモニュメントとして想定されたが、圧倒的な来場者数をカウントし、建立の存続が決まる。現在では、年間約700万人の見学者が塔からパリを一望する。

土木技師だったエッフェルは、エッフェル塔と同時に自由の女神の構造も着手した。パリ市内に現在も残る建造物には、百貨店のル・ボン・マルシェやオペラ地区にある銀行クレディ・リヨネの鉄骨構造などがある。

リベット250万個、精錬された鋼鉄部品1万8000個で構成される1万100トンの鉄の女を4本の支柱が 支えている。しかし、「空気よりも軽い」と表現する研究家もいる。同等の立体に空気を圧縮すると、エッフェル塔の重量よりも重くなるからだ。

竣工当時から塔のエレベーターは、116mもの高さま で一気に昇降した。その10年後、万博のために技術を革新、水力によって動く仕組みにする。更にそれから約100年後の1986年に高圧性の水力油圧モーターを新装したものの、110年も前の仕組みが今日も継続的に使われている。これは、フランスの技術力がいかに卓越していたかを証明しているのではなかろうか。この水力装置は現在も塔の東と西側の脚部に納められている。

電波ステーション(左)エレベーター装置(右)
左)一般公開はされないが、地下には当時の電波ステーションの写真が数枚展示されている。第二次世界大戦中は、軍隊のラジオ局としても機能した。
右)エレベーター装置

命懸けの化粧直し

1929年にニューヨークのクライスラービルが建立されるまでの40年間、フランスの鉄の女は世界一高い建築としてその座を守ってきた。けれども、女性固有名詞を名乗る以上、最優先は美しさの維持。7年に一度、18カ月を掛けて、25名の作業員による化粧直しが行われる。現在は19回目の塗装を終え、2010年11月より20回 目のサビ取り作業がされている。塗装作業は、なんとすべて職人によるはけを使った手仕事。ペンキの量60トン。作業効率を上げるためにはスプレー塗装を用いた方が良いのではないかと一般人は考えるが、風が吹く状況下では、到底ありえない。

また、メイク技術として遠近法が使われている。下層、中層、上層部を3つのトーンに分け、上にいくほど明度を上げて仕上げることで、地上から見上げたときに色が均一に見えるのだ。美を保つためには、バックヤードに多大な労力を要することを忘れてはならない。

しなやかに強く

エッフェル塔
細部まで機能と美を兼ね備える

1999年12月末の嵐を忘れることはないだろう。フランス東海岸では、最強風速度216㎞/時を記録し、パリ市内でも路上駐車中の車が倒れた街路樹の下敷きとなり、広告塔の落下で多数の負傷者が出た。べルサイユ宮殿にある庭園のルイ14世時代からの古木も大被害を受けている。しかしこの日、フランスで最も背の高い鉄の女は軸が数センチ傾斜した程度だった。121歳にして無事故を誇る塔の頂上は、中心軸から左右それぞれに18cm程の揺れ幅を持つように設計されているのだ。当時、世界最長の建 築を手掛けたエッフェルの構造力学が、いかに考え尽くされていたものだったか裏付けている。けれども、命綱も着けずに作業する20世紀の職人を写す白黒写真が語るように、天災だけでなくあらゆる事故から守られているのは、鉄の女に守護神が宿っているからかもしれない。

明日を生きるために

エッフェルの構造学への敬服は今日も生きている。モニュメントの延命には現実的なアプローチが必要であると、エッフェル塔運営企業SETE(Société d'Exploitation de la Tour Eiffel) は新規プロジェクトを立ち上げた。構造部のメンテナンス管理をデジタルでシミュレーションするプログラムを開発する企業CETIM (Centre Technique des Industries Mécaniques)と技師の安全管理に卓越した技術補佐企業DEKRAとの協働プロジェクトだ。いつ襲うか知れない強風、予期せぬ温度変化による構造部の伸縮や変形、加重の耐久性のポイントを軸に、最悪の事態から守る対策が進行している。また、容姿端麗(たんれい)の維持には、美ぼうに伴う重量にも注意を払う。軽量化にも取り組んでおり、内部に設置されていたらせん階段1840トンを断片的に売却した。これによって画廊やコレクターから得た400万ユーロの収益は、今後のメンテナンスに充当される。今後はテロへの対策にも取り組んでいかなくてはならないだろう。

運営・管理事務所(左)多角的シミュレーションするソフト(右)
左)ラジオ、テレビ用の電波機能を運営・管理する事務所は公園の一角にある
右)エッフェル塔を多角的にシミュレーションするソフト

フランスの象徴として

さまざまなイベントや行事に伴うイルミネーションは、鉄の女を魅了させてやまないナイトショーである。近年では、2000年を迎えるまでの1000日間をカウントダウン表示し、2000年の幕開けには、3分30秒の花火のダンスで観衆の目を見はらせた。以降、日没後2万灯が毎時、10分間点滅するデザインに切り替わる。世界的な「省エネデ―」を記念した2008年2月15日は、5分間イルミネーションを消した。毎年年末年始に、車やセーヌ川沿いの船のクラクションが一斉に鳴り響く新年を、エッフェル塔のふもとで、シャンパンボトルの栓を抜き喜ぶ人々が埋め尽くすのは、恒例である。

エッフェル塔
左)毎夜ドレスアップする鉄の女
右)夜の顔としてパリを彩る

国外の観光客に限らず、フランス国内から上京する人たちも、必ずエッフェル塔を見学する。むしろパリジャンの方が「一度も上ったことはない」と言う。 今さら関心を寄せるモニュメントではないが、親近感がある。街のあらゆる角度から見えるエッフェル塔は、文化と工学が融合した象徴だ。見慣れた景色として安らぎを与えている。

いつの時代も新しき物に対して、批判の評を浴びせるフランスだ。122年前にも多くの知識人が鉄の塊に抗議した。それに対してエッフェルは、「巨大は醜いものなのだろうか?ピラミッドを見よ。人間の能力を寛大に表現しているのではないだろうか。なぜ、パリに存在することで批判を浴びるのか、私には理解できない」とコメントを残している。

技師であった彼は、工学の「美しさ」を表現した先駆者でもあ ろう。アナログからデジタルへと移行していく時代に、将来的にも電波塔として大きな役割を果たしつつ、パリの風景から切り離せない存在のエッフェル塔。歴史と時代を経て、「鉄の塊」 が、エッフェルの技能と社会の批判にも勝利を得て「鉄の女」に昇格し、さらに威厳に満ちた姿に一目ぼれをする人々は後を絶たない。

La Tour Eiffel
住所 Champs de Mars 5, av Anatole France 75007 Paris
M Bir-Hakeim⑥、Champs de Mars-Tour Eiffel RER C線
TEL 01 44 11 23 23
入場料 エレベーター2階まで 8.10€、最上階まで 13.10€、
階段2階まで 4.50€
年中無休
WEB www.tour-eiffel.fr
エレベーター 9:00-23:45、階段 9:30-18:30
最終エレベーター 最上階 22:30、2階 23:00
6月中旬~ 8月末
エレベーター・階段 9:00-24:45
最終エレベーター 最上階 23:00、2階 24:00
ライトアップには投光機336台と、イルミネーションの点滅に2万個の電球を使用。日没後25時まで、夏季は26時まで、1時間ごとに10分間点滅する。
 

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