今、日本では「夜景学」なるものが注目を集めているという。なんでも、夜景の常識を覆してしまうほどの発見だというのだから只事ではない。「夜景学」とは一体どんなものなのか。この学問を提唱する夜景評論家の丸々氏に話を聞いてみた。(取材:Kazushi TAKEUCHI / photo par Atsushi MARUTA)
夜景学とは何ですか?
男女はなぜ、夜景を前にして愛の告白をするのか。不思議に思ったことはありませんか。夜景という舞台はなぜか人をロマンティックな気分にさせる。これをただ「キレイだから」と言ってしまえばそれで終わりです。でも見方を変えると、科学的にそれが説明ができる。これが夜景学の基本です。
例えば夜景の「ほどよい暗さ」。これは色彩心理学的に説明すると視覚情報をシャットアウトする働きがある。大量の情報が目に入ってくる昼間に比べて、夜間の方が人は意思表示をしやすい状態になるのです。また、夜景につきものの「水辺」も大切な要素。風水学的なロジックでいうと「水」は人に安らぎを与える効果がある。以上の理由から、夜景というものは、人が誰かに告白するためにぴったりの状況であることが説明できます。「夜景を科学する」これこそが夜景学の面白さなのです。

夜景学を知ることで何が変わる?
夜景学を実践することで、五感というものが磨かれます。例えば、夜景には「地域性」というものがあります。夜景を見る土地によって、光の色、音、匂いなどに個性があるわけです。いろんな夜景に出会うなかで、人は変化を感じ取り、結果として五感が鍛えられる。日常のストレスで鈍った五感も、夜景を見ることで取り戻すことができます。
さらに言うと、夜景は「無料の美術館」です。人の一生の半分は夜なのですから、限られた人生を有意義に過ごすという意味でも夜景を見ることは価値があることだと思います。

そもそも、夜景に興味をもったきっかけ
きっかけは小学生の時に経験した景色です。当時、私は小学6年生。ボーイスカウトに入って初めての夏キャンプで山梨県にある大菩薩峠に登りました。そこで見たものは甲府盆地の美しい夜景でした。生まれて初めて俯瞰(ふかん)する夜の街。その感動は今でも忘れられません。以来、夜景への興味は深まっていきました。中学校に入ると、夜な夜な家を抜け出して、自転車を2時間もこいで荒川の景色を見に行きました。高校生になると旅行クラブを結成し、みんなで夜景を見に行きました。言うならば、夜景は私の恋人のような存在です。

3月14日に発売された写真集「世界ノ夜景」とは?
「死ぬまでに見てみたい!」と思わせる夜景がつまった写真集です。弟であり、夜景専門の写真家でもある丸田あつしが10年間かけて撮った世界の夜景に、約15都市の写真と私の評論を加えて完成させました。正直な話、夜景の撮影には大変な労力が必要になります。暗さ、寒さに加えて忍耐力との戦いでもあります。昼間の撮影では100枚撮れる内容が、夜間になるとたった数枚しか撮れません。だからこそ価値があるとも言えます。また、企画当初は現代人の疲れを癒すような写真集を作るつもりでした。しかし、完成してみるとなんだか違う。なんといってもこのボリュームです。癒しどころか「人間はすごい。よくぞこんなに都市を作った」といったパワフルで生命力を感じる内容に仕上がりました。こんな裏話を含めて楽しんでいただければと思います。
夜景評論家 丸々もとお1965年生まれ。立教大学社会学部観光学科卒。ぴあ、リクルートを経て独立。観光学の観点から独自の夜景学を構築し、多数の著書を出版。TV、ラジオなどで活躍する他、宿泊プランやレストランのプロデュース、 横浜市、神戸市の夜景観光アドバイザーとしても注目されている。http://www.superyyakei.com
1.「全体」から「部分」へ
まず、エッフェル塔とかモンパルナスタワーといった、街全体が見える高台に登り、「全体」を俯瞰(ふかん)することが大切。パリの街の空気感をあらためて体感してみよう。そして、気になるスポットつまり「部分」が見つかったらその場所に行ってみよう。
2. 自分なりにデザイン
パリには美しい建物がたくさん存在する。単体で楽しむのもいいが、日本の「借景」と同じ感覚で、近い対象物と遠くにある対象物を自分なりに組み合わせで見ることによって、楽しさが倍増する。芸術の街にふさわしく、頭の中にまず額縁を想像し、その中に自分なりの景色をデザインしてみよう。
(例)コンコルド広場のオベリスクの塔とエッフェル塔を重ねてみる









