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sam 16 décembre 2017

ごみよどこへ行く

日々パリ市民が、3色の回収箱に分別して出しているごみ。紙やペットボトルなどの資源ごみは黄色へ、ガラス類は白色へ、その他は緑色へ―。回収された後、それぞれの箱の中身は、どこでどのように処理されているのだろうか。日本とは分別や回収方法が異なるが、リサイクル効果に違いはあるのだろうか。(Texte et photo:Yoko Sagawai-Lombard)

回収、その後どこへ?

緑溢れる中庭の下で

パリ市の南西に位置する15区の住宅街に隣接したイシー=レ=ムリノー(以下、イシー)。セーヌ川沿いのテレビ局や大手企業の本部などが建ち並ぶ一角に、芝生と木々に覆われた中庭を備えた建物がある。この緑溢れる中庭の下で、実はパリのごみの一部が日々、分別処理されているという。

パリ市と周辺4県の自治体が排出する廃棄物は、各自治体が収集した後、これらの自治体が作る組合Agence métropolitane des déchets ménagers (Syctom)により、焼却または分別処理されている。

イシーのごみ処理場は、2007年に完成。Syctomが運営する廃棄物焼却場と分別センターがあるが、外観からは分かりにくい。「この辺りは住宅や事業所が密集しているため、周辺の景観を損なわない設計にしています」とSyctomの広報担当者は話す。

Syctomの分別センター屋上に作られた中庭
Syctomの分別センター屋上に作られた中庭(イシー、8月)

この処理施設は地下31メートル、地上21メートル。多くの処理工程を地下で行うことで、建物の高さを周辺の建物の6階程度までにとどめている。また、分別センターの屋上は中庭として有効利用され、周辺の高い建物から緑が見られるようになっている。基本的に廃棄物は排出した地域で責任を持って処理すべきと考えられているため、排出量の多い市街地にできるだけ隣接させて処理場を建設しているという。そのため景観への配慮が重要なのだ。

暖房、電力、工業製品へ

イシーの処理施設には、パリ市の南西に位置するヴァンヴやムドンなど22の地区で回収された生ごみなどの家庭ごみと、13の地区で回収されたリサイクル可能なペットボトル、古紙などの資源ごみが搬入される。家庭ごみは、地下に設置された集積所に集められ、クレーンで均等に混ぜた後、炉で焼却される。

焼却時に発生する蒸気は、パリ市内と近郊に都市暖房と温水を供給しているCompagnie parisienne de chauffage urbain(CPCU)に売却され、パリ市内の地下を走る管を流れ、この焼却場だけで7万9000の暖房や温水をまかなっている。Syctomの処理施設全体では供給戸数は32万戸になるという。

また一部の蒸気は、併設された発電設備のタービンを回転させるために使用される。発生した電力は、処理施設内で使用する他、余剰電力をフランス電力公社(EDF)に売却している。

焼却灰はセーヌ川を走る船舶(Péniche)やトラックで搬出され、民間のリサイクル事業者によりコンクリートなどに加工される。

資源ごみは分別センターに搬入。ベルトコンベヤーに乗せられ、重量や厚さ、色、金属の有無などにより、それぞれ機械で分別される。その後職員が必要に応じて再分別した後、素材ごとに凝縮。製紙会社や精錬会社などへ搬出され、工業製品に再利用される。

白色のごみ収集箱に入れられたガラス類は、Syctomの運営する処理場ではなく、ガラスリサイクル事業者へ直接搬入され、2次利用されている。

Syctomは、このイシーにある2つの廃棄物処理施設を含め、構成5自治体内で3廃棄物焼却場、6分別センターを運営している。その多くをセーヌ河畔に建設し、できるだけ車両でなく船舶で運搬することで、二酸化炭素排出量削減や交通渋滞の緩和を目指している。Syctomの管轄する地域で2010年に排出された廃棄物251万トンのうち、55%が焼却により暖房や温水、電力としてエネルギー利用され、27%が工業製品としてリサイクルされたという。

パリの廃棄物の主な流れ

パリ近郊のごみ処理施設\b0

変化するごみへの意識

10年で1人当たりマイナス65キログラム

Syctomが管轄するパリ市とその周辺自治体の廃棄物の年間排出量は、この10年間で大幅に減少した。2001年の住民1人当たりの排出量が486キログラムだったのに対し、10年は65キログラム減の、421キログラムだった。

減少の要因について、生活環境の調査を行っているCentre de recherche pour l’étude et l’observation des conditions de vie(Credoc)が、Syctomの委託を受け実施した調査によると、フランス全土や欧州全体では、廃棄物排出量は減少していない。一方で、ベルリン、ロンドンなど欧州の大都市では、パリと同様、近年減少傾向にあるという。Credocは減少の要因として、経済環境の悪化やそれに伴う観光客の減少、高熱費や家賃などの上昇により食料品や書籍などの購買といった物質的な消費の減少などを挙げている。

分別意識、高まる?

パリ市と周辺自治体が排出する廃棄物全体の量が減る一方で、リサイクル用の回収箱に入れられる紙やペットボトルなど資源ごみの量は増加している。Syctomの管轄地域の資源ごみは2001年、住民1人当たり16キログラムだったが、10年には13キログラム増の29キログラムとなった。廃棄物全体に占める割合で見ると、3%から7%に上昇している。

背景について、Syctomは「この10年間で環境問題への意識が高まった他、分別の呼び掛け効果が現れた」と分析する。一方で、「新聞紙やペットボトルなどの資源ごみが、焼却処分用の緑色の回収箱に入れられている割合もまだ多く、継続的な呼び掛けが必要だ」と話す。

これらの傾向は、東京都とも共通している。東京都の住民1人当たりの年間ごみ排出量は1998年時点で473キログラムだったが、2008年には391キログラムと82キログラム減少。廃棄物全体に占める資源ごみの量は、10%から18%に増加している。

効率、費用…パリ市の頭痛の種

資源ごみも家で分別?

ゴミ一方で、回収された資源ごみが、リサイクル事業者へ渡る割合は、パリ市と東京都では異なっている。Syctomが2010年に回収した資源ごみのうち、分別センターでの再分別を経て、リサイクル事業者などへ搬出された廃棄物は約69%。残りは汚れた紙、レジ袋など緑色の回収箱に入れるべきごみだ。しかも、これらの不適切な廃棄物の割合は、07年の29%から10年の31%へと、微増傾向にある。

一方東京都では、資源ごみは家庭から地域のごみ収集所へ出す時点で、古紙・ペットボトル・缶など品目別に分けられるため、回収後は再分別されず、品目ごとに直接リサイクル事業者へ搬入される。そのため回収された資源ごみはほぼ100%が事業者に渡る。東京都環境局廃棄物対策部資源循環推進課は「再分別のための人件費や設備投資などの経費が一切掛からない」と、家庭で分別するメリットを強調する。

なぜパリ市と周辺自治体では品目ごとの分別を義務付けないのだろうか。Syctomによると、原因はごみの回収方法にあるという。東京都ではごみはごみ袋のまま、指定された曜日、時間帯に地域のごみ収集所に出し、パリ市のような回収箱はない。指定された曜日まではそれぞれが家庭内で保管している。

一方パリ市では、120~660リットル入りの回収箱3箱が、アパートや世帯ごとに配られ、それぞれが裏口やガレージなどに設置されている。回収日にこれらの回収箱を路肩に出す。Syctomは、「品目ごとに分別回収すると、各家庭やアパートが保管する回収箱の種類を増やすことになり、居住空間が狭いパリでは設置スペースの確保が難しい」と問題を投げ掛ける。

処理費用も消費者負担

回収箱ごとの正確な分別の他にも、パリ市と近郊地域はごみ処理に関する課題を抱えている。パリ市内では緑色、黄色、白色の3色の回収箱が使われているが、Syctomが管轄するパリ市郊外では必ずしもこの3色ではなく、ごみの分別に混乱を招いているという。そのため、Syctomの管轄地域内では回収箱の色をそろえるよう、調整が行われている。

また、リサイクル処理のための財政的基盤も課題だという。Syctomの運営は、資源ごみのリサイクル事業者などへの売却や、焼却施設で発生した電力のEDFへの売却などで得る売上の他、大部分が加入している自治体の負担金でまかなわれている。「現在の構造では、消費者である住民が製品を購入し、更にその製品のリサイクル処理費用も負担している」とSyctomの広報担当者は指摘する。食料品などのメーカーが、リサイクル処理費用を支援する動きも近年始まっているが、2010年時点でその割合は自治体の負担金の9%にすぎず、産業界の更なる貢献が期待されている。

進化するごみ処理事情

1. 新たな処理法、メタン化
Syctomは、パリ郊外のロマンヴィル(セーヌ=サン=ドニ県)に、生ごみなどを発酵させ、発生するガスをメタン化してエネルギー活用する施設(Centre de méthanisation)を建設しており、2013年に稼動する予定だ。廃棄物のメタン化施設はフランス国内ではリール近郊のセクダンなどで既に稼動しているが、パリ市の廃棄物を扱う施設としては初めて。施設では、生ごみや植物など有機的な廃棄物を、15日間50~60度に保ち、発酵させる。発生するガスにはメタンが45~65%含まれており、これを回収して暖房や電力として施設内外で使用する。また、発酵後のごみは堆 た いひ 肥として製品化する。Syctomは今後、ル・ブラン=メニル/オルネー=スー=ボワ、イヴリー・パリ13区の2つの処理場にもメタン化施設を建設する予定。

2. 生ごみもリサイクル
パリ市は、廃棄物の大半を占めている生ごみを削減しようと、生ごみを容器内で堆肥化する「コンポスト」を一般家庭に設置するプロジェクトを昨年から行っている。プロジェクトは「ビルの麓(en pied d’immeuble)で共同コンポスト計画」と名付けられ、今年は80カ所で実施。堆肥を使う庭などの土壌があり、10~20世帯程度が参加できることなどの条件をクリアすると、市がコンポストを設置。開始から9カ月は市の専門家が管理を支援する。今後参加者を増やし、13年末には100カ所に設置することを目指している。

3. 洋服も道端で回収
洋服も資源ごみ―? 日本ではあまり見掛けないが、フランスの自治体は洋服のリサイクルを広く行っている。パリ市は不要になった家具や洋服を回収、販売し、売上を貧困削減などの社会活動に充てている団体Emmaüsと提携し、不要な洋服やタオル、寝具などを回収するポストLe RELAIS Parisを市内全域に設置している。回収された洋服のうち、販売可能なものはEmmaüsの店舗で販売。汚れの著しいものは建物の断熱材やじゅうたんの材料などに使用されている。パリ市は昨年、ポストの数をこれまでの約4倍、370基に増強し、広く利用を呼び掛けている。フランスでは洋服を回収し、リユースやリサイクルする活動は、教会や赤十字などによって古くから行われている。

4. 分別の疑問、iPhoneで解決
パリ市は近年、ごみの分別を推進しようと、スマートフォンやインターネットを使った分別ツールを作成している。2011年6月には、iPhoneの無料アプリケーション「Le Bon Tri」をオープン。アーティスト兼マルチメディアデザイナーのPatrick Pleutinが描くパリ市民の朝食、入浴、夕食などの生活風景から、バターの容器、歯磨き粉の容器などが浮かび上がり、どの回収箱へ入れるべきなのかが示される。パソコンで利用できるインターネットツール「Mémo du tri」は、「マヨネーズ」「タオル」「ほうき」などと品目や素材を入力すると、廃棄に適した回収箱やリサイクル方法が表示される仕組みだ。これまで区役所で配布されていたポスター式の「Mémo du tri」に比べ、より手軽で、楽しめる分別指導ツールとして注目されそうだ。

 

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