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ven 30 septembre 2016

ミュチュエルの仕組みを知ろう

健康保険証で還付されない医療費は、任意保険、
ミュチュエル(Mutuelle:互助保険)でカバーされる。
ミュチュエルとは何か、またどんなミュチュエルがあり、
どんな目的をもって、どう選んだらよいのだろうか。
(文: Emiko Tsuzuki 監修: ASSETS)

セキュリティー・ソシアルとミュチュエル

ミュチュエルとは?

ミュチュエルとは互助保険のことで、「Complémentaire santé」とも呼ばれる。日本で任意保険というと、入院・通院した場合に日額いくら……という医療保険や、生命保険を思い浮かべる。これらの保険とミュチュエルの大きな違いは、ミュチュエルが健康保険(セキュリテ・ソシアル、以下セキュ)で還付されない部分を補うための任意保険であるという点だ。日本でも健康保険では100%補償されず自己負担分があるのと同じように、フランスでも自己負担が必要だ。ミュチュエルはこの「本来自分で支払わなければならない金額」の一部、もしくは全額を代わりに払ってくれる保険である。  

ミュチュエルには、性別、年齢、有職無職を問わず、フランスに在住し、かつセキュに加入していれば、誰でも加入することができる。保険期間は1月1日~12月31日までの1年で、とくに解約など申し出なければ自動更新される。年の途中で新規加入した場合、その年は12月31日まで。その後1年間の自動更新となる。

健康保険(セキュ)による補償

ミュチュエルはセキュを補完する制度なので、加入する前にまずはセキュによる補償を確認しておこう。フランスでは「かかりつけ医制度(médecin traitant)」を取っており、かかりつけ医を自分で決め(医師の同意が必要)セキュに登録する。登録するかどうかでセキュからの還付率が異なり、かかりつけ医を通した場合は自己負担率が3割、通さない場合は7割と自己負担が増える。Médecin traitant はぜひ登録しておきたい。そのほかの自己負担として、外来診察時の1ユーロの自己負担(*1)というものがある。

*1 2005年に設けられた制度で、通院時には3割の自己負担とは別に1€の自己負担額がある。ただし、年間50€を上限とする。この自己負担分はミュチュエルからの補償もない。なお、18歳未満の人、妊娠6ヶ月以上の妊婦、出産後12日までの女性、CMUの対象者は1€の自己負担はない。

なお、フランスの医師はセクター1、セクター2、セクター3に分かれており、それぞれ診察料の規定が異なる。セクター1所属の医師はセキュの定める料金で診察を行うが、セクター2所属の医師は、自分で診察料を定めてよいため、セクター1よりも高い診察料を設定している。また、セクター3はセキュ非加盟の医師のために保険が利かず、全て自費での診察となる。(*2

*2 医師がどのセクターに所属しているかはセキュリテ・ソシアルのウェブサイト ameli-direct.ameli.fr で確認できる。

セキュの還付で大切な点は、「医師に対して支払った診察代」に対して行われるのではなく、「セキュの算定基準(Base de remboursement)」に対して行われることだ。それでは例を挙げて考えてみよう。

例:風邪をひいて一般医の診察を受けた

タイプ1:セクター1の医師(23ユーロ)の診察を受ける

この場合、セキュの算定基準は23ユーロ。かかりつけ医で診察を受けたとすると、患者は3割負担になるので、セキュの負担は残りの7割分、つまり16.1ユーロとなる。ただし患者には上記の「1ユーロの自己負担」義務があるので、7割の金額から1ユーロを差し引いた15.1ユーロが実際のセキュの負担分となる。残りの7.9ユーロが自己負担分となるわけだ。

タイプ2:セクター2の医師(40ユーロ)の診察を受ける

セクター1の医師では診察料が23ユーロだが、セクター 2では23~55€など幅がある。しかしセキュの算定基準 はセクター1も2も同様。たとえセクター2の医師に40 ユーロの医療費を支払ったとしても、セキュによる補償額 はセクター1の医師の場合と同じになる。つまり自己負担 額が増えるわけだ。(図1参照)  

金額に差はあるが、セクター1、2ともに自己負担の料 金が発生する。ミュチュエルは、これらのセキュで還付を 受けなかった自己負担分をカバーしてくれる保険である。(図2参照)

自己負担額の比較表

ミュチュエルに入っていた場合、還付される具体的な金額は加入する会社、もしくは契約タイプにより異なる。何を補償するか、いくら補償するかなど、各保険会社は様々な商品を提供しているが、一般的には「セキュの算定基準」 の100%、150%、200%というように、補償率に差を設け提供している。

ミュチュエルによる補償額

セキュの算定基準 × ミュチュエル補償率 - セキュ補償額 - 1€の自己負担額

上記の式でタイプ1の例を計算すると、補償率が150%のものは

23ユーロ × 150% − 15.1ユーロ − 1ユーロ = 18.4ユーロ

となり、ミュチュエルでは18.4ユーロまで補償されることになる。ただし自己負担額は7.9ユーロなので、それを超えた分の金額については切り捨てられる。つまりこの例では、たとえ200%の補償に加入していたとしても、ミュチュエルで実際に還付される額は150%の補償と同額である。

ではタイプ2の場合を考えてみよう。この場合、自己負担金が24.9ユーロなので、150%の補償に入っていたとすると、ミュチュエルでの補償限度の18.4ユーロ全額が還付され、自己負担金が6.5ユーロまで軽減される。(図3参照)

図3:一般医の診察を受けた場合のミュチュエルの補償率と自己負担額

ミュチュエルの様々な補償内容

ミュチュエルの補償

これまで見たように、セキュで補償されない部分をカバーするのがミュチュエルであるため、その補償にはセキュを使用する医療行為に対される。つまり、診察、入院、医薬品などだが、整骨や医療とみなされるマッサージも対象となる。また、歯科ではかぶせ物や、差し歯などの義歯をはめる場合、眼科ではメガネやコンタクトレンズを作る場合でも補償の対象となる。耳鼻科で補聴器などを作る場合も同様だ。保険会社各社は年齢や性別などにより、必要に応じた補償に重点を絞った商品をセット化して提供している。

会社などに勤めている人の場合、その会社がミュチュエルに団体加入していることがある。通常、従業員は強制加入で保険料は給与天引きとなるため、別途個人で加入する必要はない。家族もその保険に付帯できる場合が多い。

ミュチュエルの選び方

ミュチュエルの種類は多く、その中から自分に合った契約を探す作業は大変だが、選ぶ時に確認したいポイントを見ていこう。

1 健康状態に合った契約を

団体契約の場合は年齢に関わらず保険料一律のものが多いが、個人契約では補償内容はもちろん、年齢や性別により保険料が異なる。例えばある会社のある契約タイプでは、月額保険料が20歳:26.02€、30歳:30.82€、40歳:38.02€というように、補償内容は全く同じでも年齢が上がるにつれ保険料も上がっていく。ニーズや医療行為を受ける頻度を良く考え、適切な保険料を支払うようにしよう。

2 補償率

補償内容がニーズに適しているなら、次はそのミュチュエルの補償率 (カバー率) を確認しよう。同じ補償率でも、会社によってはセキュの補償率も含めた数字を表示している場合もあるので、その点を契約前に確認しよう。先に見たように、もともとの医療費が少ない場合は補償率の大小は自己負担額に差をもたらさない。しかし、医療費が高くなるにつれ、補償率の大小が自己負担額に大きく影響するようになる。入院、歯科および眼科など費用が大きく、セキュの還付が少ないものはミュチュエルでカバーできると安心。

3 補償内容、オプションの選び方

健康状態に合った補償を得られることはもちろん大切だが、病気になることに付随して必要となるサービスを受けられる商品も魅力。例えば、出生のお祝い金、入院中の家事や子守り、学校への送り迎え、ペットを預かるまたはペットホテルへ連れて行くなどである。他には不妊治療(aide à la conception - fécondation in vitro, autres techniques médicales) に関する費用、逆に避妊 (contraception) に関係する費用など、セキュでは還付さ れないものが補償されるオプションを提供している会社もある。また、セキュでも一定の補償がある喫煙を止めるための費用(traitement anti-tabac または aide à l'arrêt du tabac) などでも、セキュの定めている補償額(現在は 年間50€、妊婦の場合は150€が限度)を超えることが予想される場合には、ミュチュエルのオプションを付けておくといいだろう。

4 補償開始期を確認

契約後、一定の間は医療行為を受けても補償されない期間のことをDélai d'attente またはDélai de stage という。とくに入院や歯科治療など、あらかじめ医療行為が予定された後に、ミュチュエルの補償を当てにして契約することを防ぐため、未払い期間(Délai d'attente)が設定されている場合がある。契約後すぐに補償されるのか、数日後なのか、補償開始期を確認しよう。

5 キャッシュレスサービスが可能か確認

日本では病院で医療費を支払う際に自己負担金だけを支払うが、フランスでは基本的に一旦全額を支払い、その後申請によりセキュやミュチュエルから払い戻し分を口座振込みされる立替え制度。キャッシュレスサービス(Tiers payant)とはミュチュエルが負担すべき金額をコンピュー ターシステムを通して医療機関(薬局、眼鏡屋などを含む)に対して直接支払ってくれる仕組みであり、患者は「立替える」必要がない。

メガネを作る場合の注意点
メガネを作る場合のセキュの還付金額はフレーム2.84€、レンズ(両眼)8.24€とわずか。(*3)ただし、メガネなどは契約期間中(1月1日~12月31日)の支払い上限額を定めている会社が多い。普通の矯正メガネ、矯正レンズの付いたサングラスなど複数のメガネが必要な人は一度に2つ作らず、まずは普通のメガネ、翌年サングラス……と年を変えて1つずつ作るのも策。歯科も同様に年間の上限額が設定されている。

*3 18歳以上の場合である。なお、レンズは度数により還付額に幅がある。

ミュチュエルで一時帰国用のオプションは必要?

国外で予期せず医師の診察を受けた場合、セキュでも一部は補償されるが、それ以外の部分を限度額内で補償するオプション(Dépenses de santé à l'étranger など)がある。このオプションを付けると、当然月々の保険料が上がる。また、還付されるまでに時間が掛かるという難点もある。一方、フランスの海外旅行 保険は、セキュを通さずに返還手続きができ、額もミュチュエルの補償よりも高い場合が多い。保険料も1週間10ユーロ程の商品があるので、おすすめだ。
長期高額疾患の場合の保険は?

ミュチュエルは、あくまでもセキュで補償されない費用を補償するものなので、生命保険や、日本の任意保険とは性質が異なる。ミュチュエルには、持病の治療の費用をカバーするために加入することもできる。フランスでは、長期高額疾病(ALD)の場合には、治療費がセキュで100%補償されるが、カツラなどの備品や、乳がんなどで人工乳房を作った場合など、自費負担もある。まずは自分が必要とする治療にセキュがいくらまで補償してくれるのかを調べてからオプションを付けることが大切だ。大抵のミュチュエルでは入院(Hospitalisation)にかかる費用も補償される。例えばある会社では、契約により、年間の支払い日数に制限があるものの、入院費は実額を補償し、医療費には数種類の補償率を設けている。また、「Appareillages」といって、前述のような人工乳房(prothèses)の費用なども補償しているミュチュエルもある。

もちろん、ミュチュエル以外にも日本の生命保険に相当する保険は存在する。(死亡または高度障害の場合に保険金が出るものは、「Assurance décès」 または「Assurance prévoyance」、日本の任意保険のように日額で出る補償は「Assurance hospitalisation」など)自分や家族の医療との関わり方を踏まえて検討してみよう。
 

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