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ロンドンのゲストハウス
mer 20 septembre 2017

フランスで「ビオ」ラベルが踊る

「Vert」「Eco」「100% naturel」「végétal」という文字とともに、安全、エコロジーを連想させる「Bio」のラベル。自然、動物、人間をも尊重した有機農産物、ビオ製品がフランス人の生活の中に着実に浸透している。「ビオ」を選ぶ消費者の増加に伴い、近年ビオのマーケットは急速に成長している。私たちがビオを選ぶのには理由があるのだろうか?
(Texte: Satomi Kusakabe)

参考:Les fondateurs de l'agriculture biologique, Yvan Besson, Editions Sang de la Terre 2011、仏エコロジー・持続可能開発・エネルギー省、仏農業省、日本農林水産省、パリ市ウェブサイト

BIO

ヨーロッパ、ビオの夜明け

フランスのビオを語る前に19世紀末にさかのぼり、ヨーロッパのビオの基となった重要な三つの流れをおさらいしてみよう。

一つめは、教育者としても名高い、オーストリア帝国出身のルドルフ・シュタイナー(1861-1925)が提唱した自然、宇宙との調和を重視したバイオダイナミック農法。フランスでも現在、これを受け継いだ幾つもの同業者組合があり、さらに発展を続けている。厳しい規約をパスしたビオの中のビオ、「demeter」ラベルもバイオダイナミック農法に則った生産物の一つ。

二つめは、インドで東洋の伝統的な農業を学んだ英国人アルバート・ハワード(1873-1947)が構築した、オーガニック・ファーミング。害虫や雑草なども研究したハワードは、化学薬品で除去せず自然を尊重することで、害虫や雑草などが自ずと消えていく農法を推進した。

三つめは、オーストリアの医師だったハンス・ピーター・ラッシュ(1906-1977)と、シュタイナーとハワードについて学んだハンス・ミュラー(1891-1988)が、スイスで発展させた有機生物学農業、つまり有機農法だ。

これらの農法を柱に農業の見直しが図られると見えたが、戦後の経済成長至上主義の台頭により食糧の大量生産が優先され、自然のサイクルに合わせた丁寧な有機農法に目が向けられなくなった。しかし70年代に入り、経済一辺倒の弊害で環境問題が深刻になってくると、ヨーロッパでは農業の在り方を見直す団体が次々と形成され、独自の規準が作られていった。

欧州連合(EU)における農業で大きな役割を担うのは共通農業政策(Politique Agricole Commune:PAC)。良質の食糧生産はヨーロッパの共通財産という観念の下に、環境保護を条件に環境と両立する農業へは補助金を支給するという、有機農業者に心強い後押しも行う。

半世紀前のフランスで幕開け

BIOフランスでビオの動きがスタートしたのは、今から約半世紀前。

自然食の研究協会に属していた農学者のジャン・ブシェールが、1958年にフランス有機農業協会となるフランス西部有機農業団体を創設した。その後間もなく、ブシェールは種子の卸売商人ラウール・ルメールと開発した「ルメール・ブシェール」というメソッドを発表。それは、海藻を基にした有機肥料「Calmagol」を使う農法だった。当時、フランスの土壌は農薬や化学肥料などの大量使用で退廃していた。フランス農業が最高品質のカナダ産小麦を上回るものを目指すに当たって、彼はこの農法でならそれが実現することを確信していたという。「われわれは確かな解決策をもたらす。それはCalmagolを用いた有機農法だ」と断言。さらに、このルメール・ブシェール法は田舎からの人の流出をくい止め、キリスト教文化や農業者の魂、自由な精神を守り、ひいては農業や危機にある世界をも救う、と訴えた。

「Bio」製品がフランスで初めて公に紹介されたのは、今から45年前の70年、農業見本市(Salon International de l'Agriculture)だった。ヨーロッパでの動きに合わせてフランスでもビオについての大きなうねりが起こっていた。70年代、ビオの歴史の中でキーパーソンの1人となるフィリップ・デブロスが登場。農業従事者、科学者で作家でもあったデブロスは、フランスで有機農業を促進するたくさんの運動を仕掛けた。当時、エコロジーの概念を受け入れていたのは、一部の左派・急進主義者ら。汚染農地への対策が急がれていたから、その後「うそをつかない土壌」の回復を願う有機農業の支持者はみるみる増えていった。

ビオは環境問題に直結

季節に収穫される食品を摂取し、気候にあった品種を栽培して土壌を自然の状態に保つことは、地球の環境保護に貢献することである。つまり、土壌を守り、季節のサイクルを尊重する有機農法は、真冬の収穫期にないイチゴを育てるために化学肥料を大量に用いて成長促進させたり、遠隔地まで飛行機やトラックで輸送し温室効果の原因となるガスの排出を増やしたりしない。また、成長が自然任せのビオの野菜や果物は、水分が少なく、味わい深い。ビタミン類が多く含まれ、発がん性があるといわれている硝酸が少ないという報告がある。

ビオ・ファンの増加の背景

フランス人のビオへの意識は年々高まっている。2014年、フランス国民はビオ製品の購入に50億ユーロを費やした。ビオはできるだけ自然に近い方法で生産され、常にコントロールされている食品だから、消費者が安心して口に入れられると信じるのは当然のこと。ある調査によると、年間で1人当たり平均1.5kgの農薬や好ましくない添加物を摂取しているとの報告もあるのだから。

15年3月にCSAにより実施された世論調査の結果では、ビオ製品をいつも購入する人は10%、頻繁に購入する人21%、時々購入する人32%となっており、ビオ製品を意識しながら購入している人の多いことが分かる。また、半数以上のフランス人が家庭以外、つまりレストランなど外食でもビオを食べたいと思っている。

なぜフランスのビオ市場はこんなに成長しているのだろう? 私たちをビオに導くのは、単に「化学肥料や農薬、遺伝子組み換え作物は危険だからできれば口に入れたくないから」なのだろうか?

80年、有機農業が農業基本法に盛り込まれ、フランスは世界に先駆けて有機農業を国で認証することになった。90年に入るとビオ製品がスーパーで売り出され、90年代後半からはビオの制度化が加速した。それには、ベルギー産の鶏肉と鶏卵のダイオキシン汚染、2000年に入ってすぐイギリスで発生した狂牛病などで、消費者が食品の安全を強く意識していた時代背景もあった。

また、行政政策の面では、先述のPACの基金以外にも、フランス国が税額控除、未建築地税の免除を決めるなど、有機農業者に有利な緩和策をとったこともビオの促進に一助しているかもしれない。また、例えば公共団体の食堂でビオの食事などを提供するために、地方自治体で有機部門を構造化する予算が組まれる例もある。小学校などでは学校給食に地場産農産物が積極的に取り入れられ、学校内外の公園で菜園実習を通して農業を学び、なれ親しむ努力が行われている。

こうみてくると、ビオの成長には政治的政策やメディアが影響していることがうかがえる。ビオを推進することはすなわち、遺伝子組み換えに反対する大きな政治的意図が込められているとは考えられないだろうか。

ビオ市場は右肩上がり

大手スーパーマーケットのビオコーナーでの売り上げが伸びている。これは、ビオの需要が増えていることの証だという。プライベートプランドのビオ製品だと、手頃な値段で購入できるから消費者としてはうれしい限り。ビオ製品の価格を下げるためには、ビオ製品を多くの消費者が利用し、特に、高価でないビオ製品を購入するように努めることも重要だ。

Bio c'Bon首都圏のビオショップには、フランスで最初のビオ専門チェーンとして出発したナチュラリア、全国に250店以上も展開するビオコープ、首都圏のみに展開するビオとエコロジックの専門店、ヌーボー・ロバンソンなどがあり、拡大が止まらない。その中で、2009年に創立され、現在パリに約50店舗あるビオ・セボンは、野菜や果物など、他店に比べ低い価格で人気を獲得している。SNSなどを活用し、消費者とのコミュニケーションを心掛ける時代の波に乗った同店は、今拡大傾向にある。

フランスのビオ専門チェーン店

都市屋上の菜園

もし飢餓が襲ってきたら、パリでは市民を支える分の食糧ストックが2~3日で底を突くと専門家は言う。

大都市はコンクリートだらけで建物が密集し、土がないから植物栽培なんてできない!というなら、屋根の上に庭を作ってしまうのはどうだろう。世界の大都市では既にそれが実践されている。アメリカ・ニューヨーク市ブルックリンでは2010年来、2.5ヘクタールで50トンのビオの果物や野菜を栽培するよう奨励している。世界の大都市の中でも、野菜栽培を目的とした屋上の有効利用が遅れているといわれるパリでは、5.6ヘクタールの屋根菜園がある。パリ市は2020年までにこれを18倍近い、100ヘクタールに拡大して壁や屋根に緑を植え付ける計画だ。現在は、1㎡当たり8キログラムを生産するまでになっているが、パリの屋根は80ヘクタールで年間6400トンの野菜・果物が収穫できる可能性を秘めている。パリ近郊では、温室の壁でビオを栽培するというユニークな計画も進んでいるが、サラダの値段が跳ね上がり、採算に合わないという問題も。

パリ市民の消費量は約10万トンだから、自給自足、地産地消ができる収穫量には到底及ばないが、屋根や壁を利用しての緑化は、都市の中心部で有効な方法の一つであり、緑は人々の心を穏やかにし、ストレスをも緩和する精神面のメリットも大いにある。

都市屋上の菜園

パリ市民農園 ジャルダン・パルタジェ

ジャルダン・パルタジェ
市内のジャルダン・パルタジェ (パリ市HPより)

パリ市内の公園の一角に、トマトやナスなどが実り堆肥の積まれた、誰もがアクセスできる市民農園(ジャルダン・パルタジェ)がある。希望すれば土地を借りて、自分の手で植物を栽培できる。この農園は約20年前から計画され、現在イル・ド・フランス地域圏では計2000ヘクタール広がる。パリにはこのジャルダン・パルタジェを運営する約100のアソシエーションがあり、農業や植物などに詳しい指導者の下、個人、学校、団体として市民がエコロジーな農業を学び、ビオの知識を深めながら実際に土に触れる。パリでは、特に東側で活発に実施されている。

「エコ・カルティエ」と呼ばれる、エネルギーの効率利用を重視したエコロジー建築などが立ち並ぶ17区クリシー・バティニョール。ルーサー・キング公園でジャルダン・パルタジェを主宰しているミシェルさんによると、実際に食事を助ける分の収穫量はないが、都市住民が農業を身近に感じることができ、家族や隣人と定期的に農作業をすることで人間間の絆が深まり、生物の多様性を尊重しながら農作物や農作業について知識をシェアできるメリットがあるという。新しくオープンするパリ市の公園には、必ずこのジャルダン・パルタジェが付設されるから、積極的に参加しよう。

今年の年末に開催される第21回世界環境会議(COP21)でパリは議長都市となっている。そんなパリではエコロジーへの取り組みが盛んで、その一端に身近な農業の普及への取り組みも含まれている。

都市屋上の菜園
(左)ルーサー・キング公園 (右)ミシェルさん

家庭でビオ!家庭でビオ!
有機肥料をプランターに入れ、トマトやズッキーニ、ハーブ類など、手軽にベランダでできるビオの家庭栽培に挑戦してみよう。それも面倒だ、という人は、透明の容器の中で、場所をとらずに衛生的、経済的で簡単にスプラウト(新芽野菜)が栽培できるキットもある。
日本でのビオの取り組み
日本の有機栽培面積は2009年現在、有機JAS(日本農林)規格の認証9000ヘクタールとそれ以外の有機7000ヘクタールを合わせ、全耕地面積461ヘクタールの0.4%ほど。農水省は07年にビオの推進に関する基本的な方針を策定。農業の整備を行っている。14年の改定案では18年までに有機栽培面積を1%にする目標が掲げられた。ビオの収穫率は13年現在、野菜7割、米2割、そして果物、緑茶、大豆という順だ。
世界各国の耕地面積に占める有機栽培
イタリア(8.6%)、ドイツ(6.1%)、イギリス(4.0%)、フランス(3.6%)、カナダ(1.2%)、米国(0.6%)、韓国(1.0%)、日本(0.4%)(日本農水省、2011年)。フランスではイタリアから輸入されるビオ製品が目につくが、イタリアの有機栽培は活発だから、納得する。また、多くの消費者がビオにこだわると、仕入れが安価な東欧諸国などから入ってくる製品が多くなると見込まれる。
ビオと呼ばれるためには……
遺伝子組換え作物でなく、化学農薬や肥料を使用せずに栽培されたものというのが定義。例えば遺伝子組換え技術から生まれた作物を使った肥料も混入していてはいけないし、害虫を殺すために一度たりとも農薬を使ってはいけない。家畜は農場で有機生産された天然飼料で飼育されなければならないし、病気に関しては、緊急の場合以外、植物治療や類似療法という自然の治療を行うこととされている。

フランスで売られているビオ(エコ)商品

制約の厳しい農法から生まれ、われわれ消費者の元に届く、人にも環境にも優しい製品に心が温まる思いがする。今やフランスのビオ・エコロジー専門店はスーパー並みの品ぞろえ。「こんなものまでビオ?」と驚く、フランスのビオ製品をご紹介しよう。

  • 虫除け
    蚊を寄せ付けないようにするための虫除けスプレーは、100%ビオのエッセンシャルオイルを複雑に調合してある。シトロネル、レモングラス、ユーカリ、ミント、ラベンダーオイルなどが原料。衣服に付いても問題ない。ほんのり芳香がし、優しく虫除けができる。
  • 赤ちゃんのお尻ふき
    赤ちゃんのお尻ふき原材料には、グリセリン、ベンジルアルコールなどのアルコール、ポリグリセリル-4 カプリレートなど天然成分、ビオのコットンを使用。香料なし、パラベンなしという表示が目立つ。
  • 防虫剤
    防虫剤衣服を食う害虫、食べ物につく害虫(蛾)があるが、その中で衣服を蝕む害虫に効くというスプレーは、95%天然素材。シロアリにも食べられないニームという虫除けの木のエキス、アザディラクチンが原料で、人体に無害で簡単に使用できる。
  • アロマスプレー、香水
    アロマスプレー、香水100%天然素材のエッセンシャルオイルを使用したもの。発がん性物質や内分泌撹乱物質を含まず、フラレート、ベンゼン、合成ムスクなどは使用していない。薬局で見つけたホームフレグランスはビオのアルコールが使用されており、「コットンと亜麻」「東洋の歌」「皇帝の水」などというネームングで、淡い優しい香りがする。
  • 歯磨き粉、歯ブラシ
    ある歯磨き粉のパッケージには、ビオのマークとともに、「天然素材100%」、「植物性の原料は100%ビオ」、「原料の25%はビオ」、とある。6歳以下の子どもには不適切との断り書きも。歯ブラシはビオというよりもエコ製品で、ブラシ部分がポリアミド性で微生物などにより分解されるプラスチック素材から、プラスチックを使わないブナ材と豚の毛という天然素材のものまである。歯磨き粉、歯ブラシ
  • ペットフード
    ペットフード人間もビオで健康になるとしたら、ペット動物にもビオフードを。1992年からYarrahは犬猫のためビオのペットフードをヨーロッパで生産販売している。牛、鶏、魚、米、とうもろこし、海藻など、有機農法の規準にそった生産物が原料になっている
  • 和食食材
    和食食材日本食材の中に、豆腐の原料となるにがり(ビオ表示なし)が。畑のタンパク質といわれ、ダイエット、健康食としてさまざまなレシピで用いられる豆腐は、フランスの家庭でも手軽にできるものになった。にがりは値段も非常に手頃。
  • 化粧品
    天然やビオを原料とした化粧品は、年間40%も売り上げを伸ばしているほどのブーム。口紅、頬紅、アイラインペンシル、マニキュア、ファウンデーションなどの自然派化粧品、アンチエイジング、日焼け止め、クレンジング、脱毛ワックスなどのコスメビオのラベル付き商品もある。 化粧品
  • 毛染め
    古代から染料として用いられてきたハーブ、ヘンナが原料。どんなタイプの髪にも合い、白髪染めにも効果あり。30分〜2時間で仕上がる手軽さで、髪にツヤと軽やかさをもたらす。毛染め
  • 黒石鹸
    東洋生まれのコスメ。伝統的には、植物性ゴマージュのペーストで、油と炭酸カリウムや塩に漬けすりつぶした黒オリーブを練り込んだもの。ビオの店内には黒石鹸を使用した洗剤、ボディーソープなどが並ぶ。
  • 清掃用洗剤
    清掃用洗剤ベルガモットやオリーブなど、生態系を壊さない成分が配合されている。消費者がコストを節約できるような配慮もされている。オーストリア製。
  • 衣服
    衣服プライベートブランドの子ども服の中に、有機農法で生産された綿花が原料の環境に優しい服がラインナップ。インドやタンザニアにおけるコットン栽培者の生活や仕事に適した条件で生産されたことが保証されている。
  • 生理用品
    100%ビオのコットンを使用し、塩素やプラスチックの成分を使用しないから、微生物などにより分解され、自然に還るようになっている。生理用品
  • 白樺の樹液
    冬が終わり、樹木が地中から水分を吸い上げる春先の数週間に採れる樹液。かすかに甘く、青葉のような香りがする。毎日飲むことで、細胞がきれいになり、腎臓・肝臓の機能が回復し、肌を健やかに保つことができるといわれている。
  • ペンキ
    石油化学成分の代わりに植物をベースにしたものを使用。植物油、鉱物染料、植物性濃化剤、水から構成され、揮発性が弱く、においはない。ビオのペンキは木材を守る働きもあり、室内の塗装や装飾品の塗装に良い。
 

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