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Wed, 30 November 2022

先日、猛暑が原因であるスーパーの冷凍庫が故障し、冷凍商品が全て破棄されているのを見ました。ロンドンにも昔の氷屋さんがあればいいのにと思っていた矢先、シティ北のカムデンにある「氷波止場」(Ice Wharf)という名のパブの前で、偶然にも氷職人の銅像に出くわしました。なぜ、こんな場所に氷職人の像があるのでしょう。製氷機が普及していなかった19世紀後半まで、英国人がどうやって氷を入手していたのかも気になります。

カムデンの運河近くに建つ氷を運ぶ氷職人の像カムデンの運河近くに建つ氷を運ぶ氷職人の像

19世紀初めにリージェンツ運河が開通し、カムデンに鉄道が敷設されて間もなく、ノルウェーからの自然氷を荷揚げする波止場や氷の井戸(Ice Wells)と呼ばれる貯蔵庫が作られました。旧来から富裕者は自然氷の貯蔵庫を所々に保有していましたが、カムデンの貯蔵庫は巨大なものでした。鉄道網が発達し、新鮮な肉や魚を全国に配送するため氷の需要が急拡大し、カムデンが輸入氷の主要な荷揚げ地になったのです。

氷の井戸(ロンドン運河博物館蔵)氷の井戸(ロンドン運河博物館蔵)

やがてリージェンツ運河沿いのキングス・クロスにも大きな氷の井戸ができました。今はそこが運河の博物館(London Canal Museum)になっていますが、この井戸を作ったのがイタリア系スイス移民のカルロ・ガッティ。ガッティは、19世紀半ばにロンドンでチョコレート飲料とアイスクリームの屋台を始め、氷貿易に手を広げました。氷の需要の拡大を察知し、カートに積んではロンドン中で販売した、現代のアイスクリーム販売用ヴァンの先駆者です。

氷商売で成功したカルロ・ガッティ氷商売で成功したカルロ・ガッティ

英国のアイスクリームの歴史は、17世紀に王室に捧げられたものから始まります。でも、庶民に定着するのはイタリア系移民が廉価な商品を販売し始めた19世紀半ば以降です。現在はチャリング・クロス駅になっている生鮮食料品市場、ハンガーフォード・マーケットにあったガッティの屋台はとりわけ人気が高く、ガッティ考案の小さなグラスに盛られた1ペニーのアイスクリーム、「ペニー・リック」が評判になりました。

1850年ごろのハンガーフォード市場1850年ごろのハンガーフォード市場

やがて、19世紀後半に製氷技術が改良されて20世紀には冷凍庫や製氷機が一般に広く普及します。ガッティは早々に氷貿易の先行きを憂い、氷よりもアイスクリーム販売やレストラン経営、演芸場経営に力点を置きました。鉄は熱いうちに打て、と言いますが、氷も冷たいうちに売れ、です。好機を逃さないクールな洞察力と、庶民に廉価なアイスクリームを提供したいというガッティの熱い情熱は、ビジネスを成功に導いていきました。

ガッティのアイス・カートの模型(ロンドン運河博物館蔵)ガッティのアイス・カートの模型(ロンドン運河博物館蔵)

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シティ公認ガイド 寅七

シティ公認ガイド 寅七
『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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