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Wed, 24 April 2024

本当に使える会計

経営において会計は身を守る防具だけでなく、勝ち抜くための武器にもなります。英国日系企業の経営者が知っておきたい会計トピックを、会計のプロが分かりやすく解説。

建設業界のサービス: 新たなVATリバース・チャージの要件

建設業界のサービス提供に新たなVAT制度が導入されると聞きました。

英国歳入関税庁(HMRC)は、建設業界の一部のサービス提供に新たなVAT(付加価値税)の会計方法を導入します。これは、建設業界に対する国内のVATリバース・チャージ制度で、一部の建設サービスに課されるVATの計上を、サービスの提供者ではなく、受ける側に義務付けるものです。

新制度は2019年10月1日から実施されます。これは、建設業界で「VATの不正行為(詐欺)」(Missing trader fraud)を取り締まるための、HMRCの取り組みの一環であり、すでに導入されているコンピューター・チップや携帯電話の販売、一部のエネルギーの供給に対する国内のリバース・チャージと同じようなものです。

VATリバース・チャージとはどういうものですか。

通常のVATの計上では、英国でサービスを提供する企業が、提供するものの価値に対してVATを計上し、HMRCにこれを納めます。その後、サービスを受けた企業は、VAT還付の資格に従ってHMRCからVATの還付を受けます。

リバース・チャージの制度では、VAT登録企業Aが建設サービスを他のVAT登録企業Bに提供し、そのサービスを受けた企業Bがさらに他にサービスを提供する場合には、企業AからBへ発行するインボイスではVATを請求しません。

サービスを受けた企業は、通常のルール通りサービス提供企業にVATを支払う代わりに、VATの還付を通じて、そのサービスのVATを支払わなければなりません。サービスを受けた企業は、通常のルールに従って購入により課せられるVAT(インプット税)として、そのVAT金額の還付を受けることができます。

新ルールでは、どんな建設サービスが影響を受けますか。

新たな国内リバース・チャージでは、企業間(B2B)における建設サービスの提供に標準税率(20%)または軽減税率(5%)のVATが適用されます。

支払いが「建設業界スキーム(CIS)」を通じた報告を義務付けられている場合、請負事業者および下請事業者を通じて、顧客がサービスのエンドユーザーに到達するまで適用されます。対象となる建設サービスには次のようなものがあります。

  • • 建物または構造物の建設や改築
  • • 道路工事やドックと港湾、鉄道のように土地と関わる工事の建設、改築、修繕、拡張、
    取り壊し
  • • 暖房や照明、電力供給、空調のシステムの設置
  • • 建設や改築の最中に行われる建物と構造物の内部清掃
  • • 建物や建造物の内部または外面の塗装や装飾

サービスの提供にリバース・チャージの要素がある場合には、サプライチェーン全体が国内リバース・チャージの対象になります。

建設企業はどういった点を検討する必要がありますか。

建設企業は、自社の販売や購入に対する新ルールの影響、およびサプライチェーンにおける自社の位置付けを検討する必要があります。特に次の点に注意してください。

  • • 自社の販売や購入を見直し、2019年10月からリバース・チャージの対象になるかどうかを確かめる
  • • 該当する場合、自社の会計システムに必要な措置を検討する
  • • 顧客からVATを受け取らないことでキャッシュフローに影響が出るか検討する

シャロン・ギリス シャロン・ギリス
VAT パートナー
HMCE(現HMRC)にてVATアシュランス関連業務、その後多国籍企業や様々な分野の顧客へのVATの助言を専門とする。現在GBAのVAT部門に高い専門性と豊富な知識をもたらしている。

 

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