第193回
FRS102における収益認識の改正 ― 日系企業が押さえるべきポイント
英国会計基準FRS102では、2026年より収益認識の枠組みが大きく改正されます。従来の「リスク・経済的利益の移転」に基づく考え方から、IFRS15をベースにした「5ステップモデル」へと移行する内容です。在英日系企業にも実務上の影響が広く及ぶと想定されます。
― いつから対象になりますか。
2026年1月1日以降に開始される会計年度から適用されます。移行方法は、フル・レトロスペクティブ(過去遡及)とモディファイド・レトロスペクティブ(期首調整)の選択が可能です。御社の作業負荷や本社の意向なども踏まえて、早期に検討を開始することが望まれます。
― 5ステップモデルについて教えてください。
- 契約の識別
- 履行義務(Performance Obligation)の識別
- 取引価格の特定
- 履行義務ごとへの価格配分
- 履行義務の充足に応じた収益の認識
改訂後のFRS102では、収益を五つのステップで認識します。枠組みはIFRS15とほぼ同様ですが、中小企業の実務負担を考慮し、求められる開示や分析は簡素化されています。
― 具体的にはどのように影響が出るのでしょうか。
影響が大きいのは複合的な契約形態を持つ企業です。例をあげてみると、IT企業がソフトウェアを販売し、その中に保守やアップデートが含まれる場合、各サービス内容を履行義務として識別し、取引価格を合理的な方法で配分する必要があります。また専門サービス業では、従来は完成基準で認識していた契約でも、内容によっては進行基準での認識が求められるケースが増えると考えられます。
― 弊社内で正しく運用できるか心配です。どのような対応が必要でしょうか。
まず契約内容の把握と整理が重要です。契約が多岐にわたる場合でも、性質の似たものをカテゴリー化し、対応方針を整理できます。例えば製品販売のみ、製品+保守契約、期間のあるプロジェクト型サービスなどが挙げられます。履行義務の判断には営業、供給チーム、リーガル、オペレーションなど部門間の連携が不可欠で、正確な記録やデータ収集のためシステム面の整備も求められます。また判断基準やプロセスを文書化・フロー化することで、属人的な判断を避け、効率的な運用につなげることができます。
― やはり負担が増えるように思われますね。
運用方法や判断について自信がない場合は専門家に相談されることをお勧めします。さらに期末前の早い段階で監査人と協議することで、必要資料や会計上の判断論点を事前に確認でき、監査開始後に不足資料の準備に追われたり、監査修正を指摘されたりするリスクを減らせます。一方で今回の改正にはメリットもあります。曖昧な契約内容を見直し明確化する好機ともなり、IFRS15に近づいたことで、本社連結プロセスにおいてGAAP調整が不要になる可能性もあります。
*この記事は一般的な情報を提供する目的で作成されています。更なる情報をお求めの場合は、別途下記までご相談ください。
高西祐介 監査・会計 パートナー 英国大手会計事務所にて多くの英系大企業監査を担当。日系ビジネス発展への貢献を志して現職へ。監査、ファイナンスデューデリ、組織再編アドバイスを専門とする。



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