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sam 18 août 2018
写真週間

今年で14回を数える写真ビエンナーレ「パリ写真月間」(Le mois de la photo)のテーマは「印刷物」。60以上の美術館、図書館、ギャラリー、そしてパリにあるヨーロッパ各国の文化センターが参加する展覧会には、さらに3つの題名がつけられた: "写真の歴史、出版の歴史" "書籍への憧れ" "プレス、雑誌、本"
(取材・文:小沢優子/ Yuko OZAWA)

モーリス・ドニ [左]Maurice Denis, Portrait de Marthe au piano, 1891 / ©Photo RMN / ©Hervé Lewandowski / ©ADAGP, Paris 2006
[右]©ADAGP, Paris 2006

モーリス・ドニ(Maurice DENIS)が1896年に手にした小型のコダック・カメラは、彼の絵画作品と同様、家族に注いだ愛情を素直に印画紙に焼き付けた。敬虔なカトリック信者であり、絵画制作の多くを宗教画に捧げ、同時に絵画表現の自由を求めて「ナビ派」を結成し、さらに装飾芸術の可能性を平面の中でも 実現して見せた。最愛の妻マルトは芸術家のミューズであった。オルセー美術館で開催中の大回顧展は、油彩展、版画展、そして写真展の3つで構成され、画 家の手から生まれた作品と、画家の視線が捉えた瞬間と記憶をじっくり観察することができる。

Couverture de VU, 31 août 1938

本部になっているのは4区にあるメゾン・ヨーロピアン・ドゥ・ラ・フォトグラフィ(MEP)。1928年に刊行されて1940年まで続いた写真雑誌「VU」を特集した展覧会では、ケルテス、クリュル、ロタール、マン・レイといった写真家たちによる斬新な写真表現や、写真レイアウトの力強さによるページ構成、表紙の持つインパクト、写真と文字の組み合わせの妙技、カメラや印刷技術の革新など、写真雑誌編集にかけられた情熱を感じ取ることができる。日本で1934年に刊行された写真雑誌「NIPPON」を思い出してほしい。「VU」はその先駆けである。

[上]©Beate Gütschouw, LS #17, 2003
[下]Philippe Ramette, Balcon 2, 2001 ©Philippe Ramette, Galerie Xippa

2年前に誕生したヨーロッパ写真月間は、パリ、ベルリン、ブラスティラバ、リュクサンブルグ、モスクワ、ローマ、そしてウィーンで同時開催される。MEPの地下展示室では、これらの国から選ばれた若い写真家たちの表現を見ることができる。仏人フィリップ・ラメット(Philippe RAMETTE)は、世界を斜めに眺めながら、その視線は滑稽なほど真摯(しんし)で真面目だ。ベルリン出身のビート・グットゥショウ(Beate GÜTSCHOW)は、バラバラに撮った 風景を繋ぎ合わせて1つの架空な、しかし見る側には真実にしか見えない情景をつくり出す。

[左]Lee Friedlander, New York City, 1980 ©2006 Lee Friedlander
[右上]Lee Friedlander, Pomona, New York, 1977 ©2006 Lee Friedlander
[右下]Lee Friedlander, Nude, 1982 ©2006 Lee Friedlander

ジュ・ド・ポーム美術館では、米国の写真家リー・フリードランダー(Lee FRIEDLANDER)展が開催中だ。1934年生まれの彼が、半世紀に渡って撮り続ける写真はなぜか懐かしい。小型のライカが捉えた世界には多くの「交差」がある。世界は正面だけで成り立っているのではない。真正面を見ていても、脇にも後ろにも世界がある。人間がすれ違い、テレビ画面が流れていき、彫像はそこに立ち、そしてその日の空に雲はなかった。女の身体、木、花、そして自然。意図して作られた街の滑稽さの中に無意識に同化してしまう人間。彼は言う「写真は寛大だ」。しか見えない情景をつくり出す。

[左]AES+F, Le Roi des Aulnes (New York), 2001-2004 / ©AES+F [右上]Martin Kollár, Cannes TV / ©Agence VU [右下]Marek Kvetan, New city-Sydney / ©Marek Kvetan

広告媒体の完成度の高さは写真に負うところが大きい。1930年以降、雑誌の台頭と共に発展してきた広告写真は、常に写真表現をリードしてきた。写真が芸術作品として壁に架けられるようになったのは1970年代と言われる。従って、写真家の作品発表の場は、ある時期までは印刷媒体の中に限られていたのだ。広告美術館(107, rue de rivoli 75001)で開催中の展覧会では、華やかな広告写真の歴史を、そして4区のMEPではアンドレ・ケルテス(André KERTÉSZ)が撮った3枚の写真が、印刷媒体に載って流布されていった様を見ることができる。

Affiche de Pierre Neumann avec photo d'Antanas Sutkus

グラフィック・デザイン専門のギャラリー・アナトムでは、現代に活躍する80人の写真家と80人のグラフィックデザイナーによるコラボレーションを紹介している。すべて本展のために作られた新作ポスターだ。日本からは、大阪を拠点に幅広い活躍をする松井桂三が参加している。写真とグラフィックの競演は、印刷媒体を見慣れ過ぎている我々の目を素通りしてしまうこともあるが、改めて注意を向けてみると新しい可能性が見えてくるかもしれない。今世紀のクリエータ-が挑んでいるものはなにか、我々に訴える表現はどんなものか?

[左]Candida Höfer, Musée du Louvre Paris XVI 2005 - Peinture française- ©Candida Höfer / VG Bild-Kunst Bonn 2005 / ADAGP, Paris 2006
[右]Candida Höfer, Musée du Louvre Paris XI 2005 - Galerie d'Apollon- ©Candida Höfer / VG Bild-Kunst Bonn 2005 / ADAGP, Paris 2006

ルーヴル美術館でも現代写真展が開催されている。 独人カンディダ・ホーファー(Candida HÖFER)は、公立図書館、オペラ座、ルーヴル美術館の展示室を撮影した女性写真家。人のいない閲覧室、空洞の舞台、そして絵画や彫刻が並ぶ人気のない展示室。露出度を緻密に計算した彼女の作品には独特の光が満ちている。人間不在の公共施設には、まるで別の支配者がいるようだ。同時に開催されているフランシス・ベーコンの遺作「未完の自画像」とウィリアム・フォーサイスのダンス映像は、写真展ではないが、人生の軌跡を写すという点で同類といえる。

[左]Lund Hansen, Beaucoup trop de gens, beaucoup trop peu de maison, années 30 / ©Det nationale fotomuseum, København
[右上]William Klein, Bikini, Moscou, 1959 / ©Det nationale fotomuseum, København
[右下]Jette Bang, Mère et son enfant, années 30 / ©Det nationale fotomuseum, København

シャンゼリゼ通りの「メゾン・ド・デンマーク」では、デンマーク王立写真美術館所蔵の写真作品が展示中だ。ダゲレオ・タイプから21世紀の 写真家まで、小規模ながらまとまった展覧会になっている。5区にあるルイ・ル・グラン学院では、著名な芸術家や作家の肖像写真が見れ、14区のアンリ・カルティエ=ブレッソン財団では、 彼が1946年にNYで作ったスクラップ・ブックが展示されている。作品と離れたクリエーター たちの顔、そして作品になる前の綴じられた写 真は、普段見られないものだからこそ面白い。

[左]Hippolyte Blancard. Façade de l'Hôtel de Ville, 1871 / Coll. Fonds de la Bibliothèque de l'Hôtel de la Ville de Paris
[右上]Joel Meyerowitz, New York City, 1975 / ©Joel Meyerowitz, Courtesy Edwynn Houk Gallery, NY
[右下]Joel Meyerowitz, Red Interior, Cape Cod, 1976 / ©Joel Meyerowitz, Courtesy Edwynn Houk Gallery, NY

パリ歴史図書館では1871年のパリ・コミューンの写真が展示されている。薬剤師だった一般市民が残した記録写真は、当時の崩壊されたパリの様子をまざまざと見せつける。国立図書館のリシュリュー館では、第二次大戦が終わった1945年から1968年にかけて、幸福を取り戻したパリの様子が生き生きと写されている。ジュ・ド・ポームのスュリー館では、1970年~1980年代のアメリカの姿が見れる。記録するべき事実の重さと、写真家の眼の鋭さ、どちらがより強く現れているか意識してみるのも鑑賞方法の1 つになるだろう。

Exposition Hiroshi Sugimoto à l'Atelier Brancusi ©Centre G. Pompidou / photo. Georges Meguerditchian

杉本博司はブランクーシと対峙した。ポンピドー・センターのアトリエ・ブランクーシには、写真「数学的形状」と、オブジェ「コンセプチュアル・フォーム」が展示されている。作家はこの立体を「彫刻ではない」と言う。理由は「それはすでに存在する幾何学的な立体だから」。ブランクーシのアトリエに、これほどま で同質な呼応を可能にした作家は他にいないだろう。 本館4階で開催中のヴィジャ・セルマン(V i j a CELMINS)展は写真ではない。手描きのデッサンだ。 同階の"Le Mouvement des images"展とともに必見だ。


Les lieux d'expositions pour le Mois de la Photo à Paris, Novembre 2006はこちらをご覧ください。

Mois de la Photo 公式サイト:www.mep-fr.org/moisdelaphoto/fr/
 

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