4月23日は、英国が誇る名劇作家にして詩人、シェークスピアの誕生日。
毎年この日には故郷のストラトフォード・アポン・エイボンで祝典が開催されている。
しかし今年はそれだけにとどまらない!
なんとロイヤル・シェークスピア・カンパニーが
この日から約1年間にわたるシェークスピアの全作品上演を発表。
5月からはいよいよグローブ座の今シーズンも開幕する。
劇作家シェークスピアの偉大さを、劇場に足を運んで実感してみよう!
演劇を知り尽くした男、シェークスピア
英国で最も偉大な作家の1人として、今も文学界に燦然と輝くシェークスピアの存在。シェークスピアがここまで英国人に愛される理由は何だろうか。劇作家としての彼を、演劇という側面から探ってみよう。
実はほとんどのシェークスピア作品には、元ネタがある。例えばかの有名な「ロミオとジュリエット」は16世紀のイタリア人、マッテオ・バンデッロが書いた「ロミウスとジュリエットの悲劇の物語」を下敷きにしているし、「ハムレット」は12世紀末のサクソ・グラマティクス作「デンマーク史」を種本としていると言う。ということは、シェークスピアはストーリーをゼロから生み出す創作の天才というよりは、与えられたテーマ、役者を元にそれらを生き生きと輝かせることのできる、演劇というものを知り尽くした言葉の魔術師だったと言えるのではないだろうか。
宮仕えはつらいよ!?
座付き作家としての使命

「間違いの喜劇」
(RSC 05/06年)
シェークスピアは1590年代、「the Chamberlain's Men」(宮内大臣一座。後に「King's Men」(国王一座)と改名)の座付き作家兼俳優として活躍していた。座付き作家として、彼は劇団の経営を支える責務を負っていたわけであり、さまざまな戯曲を書くことによって常に観客を惹きつけておく必要があった。喜劇、悲劇、史劇、そしてロマンスと、さまざまなジャンルにわたって傑作を生み出し続けた背景には、そうせざるを得ない状況があったのである。
また同じ劇団でずっと戯曲を書いていたということは、あらかじめ演じる役者を想定して役を組み立てる、いわゆる「あて書き」をやっていた可能性が非常に高い。実際ロミオやハムレットなどの役柄は、劇団のトップスター、リチャード・バーゲージを、また「夏の夜の夢」に出てくるボトムや「ウィンザーの陽気な女房たち」のフォルスタッフなどの道化は、コメディ役者のウィル・ケンプを想定していたと言われている。シェークスピアが描く人物像にリアリティがあり、それぞれのキャラクターが確立されているのには、このあて書きの影響が大きいのかもしれない。
夢か現か幻か……
からくりの天才シェークスピア
実際、彼の戯曲を見てみると、舞台で演じられるということ、現実と虚構という2つの構造を意識した設定、セリフが多いことに気付かされる。

上)コンプリート・ワークス上演予定
「ロミオとジュリエット」
下)「十二夜」(RSC 05年)
「リア王」ではこの世は「巨大な道化芝居の舞台」だと表現され、「お気に召すまま」では「All the world's a stage, and all the men and women merelyplayers」(この世はすべて舞台。男も女も人はみな役者にすぎぬ)というセリフが出てくる。「ロミオとジュリエット」で駄洒落好きのロミオの友人マキューシオは刺されて死ぬ間際に「Ask for me to-morrow, and you shall find me agrave man」(明日俺を訪ねてこい。そうしたら俺は墓の中でもっと真面目な人間になっているさ: 「grave」の「墓場」と「真面目な」の意味をかけている)と言い放っているのをはじめ、セリフの一言一言には二重の意味が隠されていることが多い。
芝居の中で芝居が演じられる劇中劇も数多く出てくるし、なにより芝居全体が二重構造になっているものもある。実は「ハムレット」の冒頭シーンは、現在もなお研究家の間で論議を呼んでいる不思議な要素を含んでいるのだ。
亡き王の亡霊が出るといううわさのある城の城壁の上で、衛兵のフランシスコーが見張りに立っていると、交代要員のバーナードーがホレイショーを伴いやって来る。そこでバーナードーが発するのが「Who's there」(そこにいるのは誰だ?)なのである。彼は交代するためにやってきた人間なのだから、当然そこにいるのはフランシスコーだということを知っているはずである。それなのに何故そう尋ねたのか。そしてその後、バーナードーか? と尋ねるフランシスコーに対し、バーナードーは「He」と答えている。何故「I」ではなく「He」なのか。このシーンに関しては諸説さまざまだが、よく言われるのが、この「ハムレット」の劇世界では、冒頭からすべてが入れ替わってしまっているということ。尋ねるべき人間と尋ねられるべき人間、現実の世界と亡霊の世界。ハムレットは最初の一言から、すべてが逆転してしまっているというのである。
ここまで深く突き詰めなくても、シェークスピアの戯曲には、小説にはない、演劇ならではの魅力が詰まっている。一瞬にして切り変わる場面展開、韻を踏んだ美しいセリフ……。紙に書かれた文字が舞台上の役者の口から言葉となって出てくる時、シェークスピアの真の魅力が発揮されるのかもしれない。
生年月日
1564年4月、ワーウィックシャーのストラトフォード・アポン・エイボンに生まれる。教会に残された洗礼日の記録が4月26日になっており、当時は生まれた3日後に洗礼を受けるのが慣わしだったため、現在では彼の誕生日は4月23日というのが定説。家族
父親: ジョン。手袋製造業を営み後には市会議員にまで上り詰めるが、後に事業に失敗母親: メアリー。富農出身。結婚
18歳の時に8歳年上のアン・ハサウェイと結婚。当時アンはすでに妊娠3カ月だったとか。彼女との仲に関しては諸説あるが、死ぬまで添い遂げ、2人の娘と1人の息子をもうけた。「失われた年月」
結婚後、1592年頃からロンドンで劇作家兼俳優として活躍するようになるまでの期間は「失われた年月」と呼ばれ、公式な記録は残されていない。ロンドン劇作家兼俳優時代
宮内大臣一座の座付き作家、俳優、そして劇場の共同経営者として名を馳せたシェークスピアは、その生涯に37の戯曲と数々の詩を書き上げた。彼の最後の作品となった「ヘンリー8世」が書かれたのは1613年。その後はストラトフォードに戻り、悠悠自適な隠居生活を送る。死去
1616年死去。奇しくも誕生日と同じ4月23日に亡くなっている。享年52歳。故郷のホーリー・トリニティ教会に埋葬された。コンプリート・ワークス・フェスティバル
ロイヤル・シェークスピア・カンパニー(以下RSC)はシェークスピアの誕生日にあたる4月23日より約1年間にわたって、なんとシェークスピアの戯曲全37作品及び詩を上演することを発表した。世界初となるこの試みでは、RSCはもちろんのこと、世界各国から著名な劇団、演出家たちが集結。演劇史上類を見ないスケールでシェークスピアを楽しむことができる。
RSCは、シェークスピアの生誕地、ストラトフォード・アポン・エイボンにある3つの劇場、ロイヤル・シェークスピア、スワン、ジ・アザー・プレイスを拠点に活躍する、英国を代表する国立劇団。設立は1879年、その後1960年に現在のRSCが形成された。現在ではあくまでシェークスピアを中心にしながらも、その他の古典や現代作品も幅広く扱っている。この劇団の特筆すべき点は、若く新しい才能を入れることをためらわない姿勢にある。現在のRSCをつくり上げたピーター・ホールは、芸術監督に迎えられた当時29歳。また世界的演出家として名高いピーター・ブルックは弱冠20歳で招待演出家としてRSCで活躍し始めている。古き良き伝統を守りつつ、新しい血を積極的に取り入れる革新的なアプローチこそ、シェークスピアを今の時代に生き生きと蘇らせる秘訣なのかもしれない。
世界のニナガワがRSCに再度登場!
「タイタス・アンドロニカス」
RSCより正式招待を受け、日本を代表する演出家、蜷川幸雄が本フェスティバルに参加することが決定! 上演作品は「タイタス・アンドロニカス」。シェークスピア全作品の中でも最も残酷と言われている戯曲だ。ローマ時代に帝位継承権を巡って争う人々の姿を描いたこの復讐劇は、これまであまり上演されていないが、人種差別や人の欲望、絶えることのない争いを赤裸々に描いたこのストーリーは現代社会にも通じるものがあると蜷川は語っている。日本人演出家と役者がつくり出すシェークスピア劇。本場ストラトフォードで観られるこの機会、是非お見逃しなく!
あらすじ 古代ローマ。ゴート族を制圧し、帰還した将軍タイタスは、ゴート族の女王タモーラの息子を生贄として切り刻む。ローマ皇帝の妻となったタモーラはその恨みを忘れず、ムーア人の愛人エアロンの策略に乗り、2人の息子たちにタイタスの娘ラビニアを強姦させ、その上彼女の両腕と舌を切断してしまう。さらにエアロンはタイタスの2人の息子が処刑されるように計画。息子たちの命を救うために、タイタスは自分の腕を切って皇帝に献上するが、腕と引き換えに渡されたのは、彼らの頭だった。子供たちを失ったタイタスは復讐の鬼と化し、血を血で洗う争いは一層激しさを増していく。
Address:
The Royal Shakespeare Theatre
Waterside, Stratford-upon-Avon, England CV37 6BB
Tel: 01789 403 444(お問い合わせ)/ 0870 609 1110(BOX Office)
期間: 2006年6月16日(金)~24日(日)
「スタートレックの船長」でお馴染み、
パトリック・スチュアートが戻ってくる!
「テンペスト」
人気テレビ・シリーズ「スタートレック」の船長で日本でも人気のパトリック・スチュワート。実は彼、元々RSC出身。RSCで培われた惚れ惚れするような姿勢の美しさと、正統派の発声は、シェークスピアを演じる上での必須要素と言える。演じるのは「アントニーとクレオパトラ」と「テンペスト」。特にテンペストはシェークスピア晩年の作にして最後の戯曲と言われている傑作の1つ。この機会にチャレンジしてみては?
あらすじ ミラノ大公プロスペローは、欲深い弟のアロンゾーによって娘のミランダと共に追放される。無人島に到着したプロスペローは習得した魔術を使って嵐を起こしてアロンゾー一族を乗せた船を難破させ、自分たちの住む島へとおびき寄せる。
The Royal Shakespeare Theatre
Tel: 01789 403 444(お問い合わせ)/ 0870 609 1110(BOX Office)
期間: 2006年7月28日(金)~10月12日(木)
英国を代表する大女優、ジュディ・デンチが復活!
「ミュージカル版 - ウィンザーの陽気な女房たち」
映画「恋に落ちたシェークスピア」でエリザベス女王を演じ、アカデミー賞助演女優賞を獲得した名優ジュディ・デンチ。実は彼女もここRSCの出身者の1人なのだ。今回彼女が演じるのは、何とミュージカル版「ウィンザーの陽気な女房たち」。軽妙に歌って踊る彼女が観られるのだろうか? 乞うご期待。
あらすじ 貧乏騎士フォルスタッフは、ウィンザーのガーター館に滞在中。自惚れ屋の彼は金持ちのフォード夫人とペイジ夫人の2人から想いを寄せられていると勘違いし、金を騙し取ろうと画策する。ところが色恋沙汰に疎いフォルスタッフ、何と彼女たちに一言一句同じ恋文を送ってしまったために2人はかんかん。互いに協力してフォルスタッフを懲らしめることに。
The Royal Shakespeare Theatre
Tel: 01789 403 444(お問い合わせ)/ 0870 609 1110(BOX Office)
期間: 2006年12月4日(月)~2007年2月10日(土)
「ロード・オブ・ザ・リング」のガンダルフ、
イアン・マッケランも堂々の登場!
「リア王」
そしてもう1人のRSC出身の大物、ガンダルフことイアン・マッケランも今回「リア王」に出演することが決まっている。リア王と言えば、シェークスピアの四大悲劇の中でも特にスケールが壮大なことで知られる名作。かつての暴君が老い、裏切られ、絶望の淵に追いやられる様を、マッケランはどのように演じてくれるのだろうか。
あらすじ 3人の娘を持つ年老いたリア王は、娘たちに領土を譲り、穏やかな日々を過ごそうと考えていた。自分を最も深く敬愛する者に一番豊かな領土を与えようとしたリアは、言葉巧みに誉めそやす上の2人の娘たちにすっかり騙され、正直な心の内を明かした末の娘コーデリアを追放してしまう。しかし財産を得た2人の娘はその後態度を豹変させ、リアを邪険に扱うように。怒りの余り正気を失った彼は荒野に1人さまよい出すのだった。
The Courtyard Theatre(2006年7月オープン予定)
Tel: 01789 403 444(お問い合わせ)/ 0870 609 1110(BOX Office)
期間: 2007年3月(詳細未定)
2006年のテーマは「The Edges of Rome」

グローブ座2006年のテーマは「The Edges of Rome」。シェークスピアの戯曲の大きなテーマの1つである古代ローマの歴史劇に焦点を当てた構成になっている。上演される演目は、「コリオレイナス」、「タイタス・アンドロニカス」、「アントニーとクレオパトラ」、そして「間違いの喜劇」。私たちには馴染みのないものが多いが、民族間の争いや独裁者の栄光と挫折など、今日の世界にも共通するテーマを描いたこれらの作品を、この機会に是非観てみてほしい。


シェークスピア・グローブ座とは?
1599年、ロンドンのバンクサイドに建てられたシェークスピア・グローブ座。座付き作家であったシェークスピアの数々の名作の初演が行われたことで有名な、名門劇場の1つである。1613年には「ヘンリー8世」の舞台を上演中、小道具の大砲が茅ぶき屋根に燃え移り全焼。1642年にはピューリタン革命の影響で閉鎖を余儀なくされたが、1997年、約400年の時を経てほぼ同じ場所に再建された。現在では毎年5~10月にかけて、その年のテーマに沿った演目を上演している。
この劇場の特徴は何といっても建物だ。当時の劇場を忠実に再現した現在の建物は趣深く、茅ぶき屋根の木造造り。円形の建物の中央部は当時と同じく平土間となっていて、屋根もない。ここで舞台を観る人は、席もなく、雨が降れば濡れる一方。それでも当時の雰囲気を楽しめるとあって人気となっている。確かにシェークスピアの時代、人々はぶらりと立ち寄って気軽に彼の芝居を楽しんでいたというから、こんな気楽な楽しみ方こそ、本来の観劇方法と言えるのかもしれない。
Address:
21Globe Walk, Bankside, London, SE1 9DT
お問い合わせ Tel: 020 7902 1400
BOX OFFICE Tel: 020 7401 9919
コリオレイナス
期間: 5月5日(金)~8月13日(日)
費用: 5~31ポンド
アントニーとクレオパトラ
期間: 6月25日(日)~10月8日(日)
費用: 5~31ポンド
「タイタス・アンドロニカス」の
アシスタント・ディレクター、
リチャード・ハートリー氏にインタビュー
―なぜ英国人はこんなにもシェークスピアを誇りに思っているのでしょう?
それはシェークスピアが我々英国人の文化構造―我々の使う言葉、我々の作り出す文章、そして何より我々の人生観や経験・感情を表現する方法―と非常に密接に織り交っていることと関係があるのかもしれません。
―シェークスピアとその他の戯曲家との違いは?
それはシェークスピアが我々英国人の文化構造―我々の使う言葉、我々の作り出す文章、そして何より我々の人生観や経験・感情を表現する方法―と非常に密接に織り交っていることと関係があるのかもしれません。
―英語が母国語でない人間にとってのお勧め作品はありますか?
どの作品であれ、実際に上演される時には視覚に訴えるものがありますから、観客の方たちにはお楽しみいただけると思います。「タイタス・アンドロニカス」では強姦されたラビニアを発見する場面、「ヘンリー5世」で王が自国軍の兵に呼びかける場面などは、ただ観ているだけで観客を圧倒させる迫力があります。実際、シェークスピアが意図した沈黙の中では、物語がより一層明確になり、心により強く訴えかけてくるのです。

左)「本物」と鑑定されたチャンドス肖像画
右)「偽者」と判明したフラワー肖像画
今回の調査は約3年半かけて行われ、その結果6点中5点が偽者で、「チャンドス」肖像画として知られる1点のみが本物の可能性が高いという結論に。その決め手は、イヤリングや服装などが当時のファッションと矛盾しなかったことだとか。ただ本物だという決定的な証拠もないというから、今私たちが知っている、おでこがちょっと後退したあのお馴染みの顔も、本当はまったくの別人なのかもしれない。
'SEARCHING FOR SHAKESPEARE'
National Portrait GallerySt Martin's Place, London WC2H 0HE
Tel: 020 7306 0055
期間: 3月2日(木)~5月29日(月)
入場料: 8ポンド
RSC : www.rsc.org.uk
Shakespeare's Globe Theatre : www.shakespeares-globe.org
*情報は掲載当時のものです。



在留届は提出しましたか?



飲茶名人 パトリックさん
飲茶の習慣の始まりは定かではありませんが、一説によるとシルクロードだと言われています。まず、長旅に疲れた旅人のための休憩所ができ、そこでお茶が振る舞われたようです。しばらくすると、その近辺に暮らす農夫たちもお茶を楽しむために休憩所に集うようになりました。賑やかになったその休憩所で、お茶だけでなく軽食も出し始めたのが飲茶の原点と伝えられています。
点心師 Po Ming Hoさん















GHOST
JOHN ROCHA
香港に生まれ、アイルランド在住のジョン・ロシャのデザインは、黒とクリーム色がキーカラー。新作もこれら2色をベースに、差し色として赤が使われていた。
PAUL SMITH WOMEN
MANISH ARORA
インド出身のアロラは、植物や天使、ハートなどを模った多くのモチーフを刺繍とタペストリーで表現。エキゾチックな配色でキャットウォークを賑わせた。
UNCONDITIONAL
新人フィリップ・スティーブンズが作る、アンコンディショナル。厳寒下で身を守ることを念頭に、カシミア、メリノ毛糸、シルク・カシミア、綿絹の4種類を使ったニットが特徴。
BASSO & BROOKE
英国人ブルックとブラジル出身のバッソによるユニット。新作はロココ朝やビクトリア時代などにヒントを得て、肩幅の狭いジャケットなどの現代的なシルエットに。
AVSHALOM GUR
公式スケジュールとは別に行われた非公式スケジュール「OFF」で33のデザイナーが新作コレクションを発表。その中の一人、アブシャロム・ガーの新作は放浪生活をするベドウィン族に発想を得て、布を多用し造形に配慮したデザインが目立った。
インタビュー中にも国籍のさまざまな知人達が、コシノさんのショーの成功を祝いに、どんどん声を掛けて来る。そんな姿に、自分自身をしっかり持ち色々な価値観の人たちとかかわっていく彼女のクリエーティブなエネルギーの源を見たような気がした。
午前中の穏やかな天気が午後になって一転、吹雪まで降った2月のある日、ロンドン北西部の閑静な住宅街に建つ家に到着。家主の女性に迎えられ、案内されたのは新人デザイナー、ルベックセン・ヤマナカのスタジオ。ユニットを組んでから6コレクション目、ロンドン・ファッション・ウィークの「OFF」スケジュールに参加するのは3回目という彼らに今の生活について伺った。
在学中は一緒に作業をした経験はなかったが、山中さん(Y)があるニットのコレクションを手がけることになり、たまたまヒルダ(H)さんにパターン引きを頼んだのがデザイナー・ユニット誕生のきっかけに。「とりあえず作ってみようか」と秋冬の新作がわずか十数点しかなかった頃、突然バーニーズ・ニューヨークから50ピースの大口のオーダーが入った。工場の手配ややり取りも手探りだった2人だが、なんとか無事に納品。そして次の作品を見せて……としているうち、次第にオーダーが来るようになった。
ルベックセン・ヤマナカは、ギャラリー「リビングストン・スタジオ」内のスタジオで製作している。ギャラリーは一般の方に公開しており、見学自由。美しいアール・ヌーボー朝の文字が目印。
山中朋子さん(写真左)……日本では会社員生活を送り、趣味として編物にかかわる。ご主人の仕事の関係で渡英後は、チェルシー・カレッジ・オブ・アートでファッションのBA(修士号)を取得、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートでニットウェアMA(文学士号)を専攻、02年卒業。
湖水地方の北部に位置するアルズウォーター湖。この湖のほとりで、ワーズワースが名作「水仙」を詠んだと伝えられている。ここでボートを運転する船長のロバート・ファラムさんは、船長室から覗く景色を指差しながら、まるで彼がその姿を実際見たかのように、ワーズワースが散策したコースをこと細かく教えてくれた。「ワーズワースが歌に詠んだ湖で船を運転する気分というのは、とにかくもう夢心地だね。たまに自分の頬をつねって、どれだけ自分が幸せかって言い聞かせてやるようにしているんだ」と嬉しそうに話すファラムさん。湖水地方を語る上で、ワーズワースの存在は非常に大きな意味を持つようだ。
アルズウォーター蒸気船 
ライダル・マウント
ブラックウェル館
趣味としての旅行が始まったばかりの頃、「クライフ・ステーション」と呼ばれる展望台が湖水地方に建てられた。1773年に発行された旅行ガイドに同展望台に関する記述があるというので、その歴史はかなり古い。まだ写真が普及していなかった時代、当時の旅行者たちはこの高台の上で、色セロハンを通して異なる季節ごとの景色を想像したり、鏡に反射させることで切り取った風景を脳裏に刻んで思い出に残したという。
英国内の各都市がさらなる発展を遂げるなか、1895年に自然保護団体「ナショナル・トラスト」が設立される。この組織への多大な貢献を果たしたのが、湖水地方の絵本作家ベアトリクス・ポターである。
これらの活動を通して得たお金で、ポターは盲目的といっていいほどに湖水地方の膨大な土地を買い集め、そして自ら環境保全に努めた。そして死後は4000エーカー(約480万坪)にも及ぶ土地をナショナル・トラストにすべて寄付し、湖水地方の英雄となった。これが絵本作家ポターのもう1つの顔である。ピーター・ラビットの物語を再現した「ベアトリクス・ポターの世界」のリチャード・フォスター館長は「ポターは彼女の不動産購入の手続きを請け負った事務弁護士と結婚して、ヒル・トップの農場からキャッスル・コテージと呼ばれる場所に移り住みます。しかし作家としてインタビューに応じる時は、いつも必ずヒル・トップに戻っていた。当時の人々は、絵本作家のポターと、地域発展のための活動家としての彼女が同一人物ということさえ知らない人も多かったんじゃないかな」と振り返る。
ベアトリクス・ポターの世界
ナショナル・トラストの管理人として区域内の森林を見守るファリントンさんは、環境に配慮した管理を行っている。そのうちのひとつが「ヘッジレイング」と呼ばれる手法。羊、牛など野生の動物を放し飼いで飼育するには生垣を作る必要があるが「ヘッジレイング」は、言わば天然の生垣を作るための伝統的な農法なのである。まずは木を根っこから切り取り、次々と地面の上に重ねる。次にそれぞれの枝を結ぶことで木々を束ね、木くぎで止めて野生の生垣を作る。まだ針金やコンクリートがなかった時代に生まれた、環境に優しい歴史の知恵である。野山に住む小鳥たちはこの木々の下に巣を作り、ネズミやヤマアラシなどの隠れ家にもなるというわけだ。
イングリッシュ・レイクス・ホテル
リンデス・ハウ・カントリー・ハウス
マウンテン・ゴート
湖水地方の最高峰に位置するパブの主人
タクシー運転手
湖水地方を管轄するナショナル・パーク・オーソリティー
ヒル・トップにあるおみやげ屋さん
ホテルに併設されたパブ、部屋には木製の家具、笑顔を絶やさず親しげに接してくれるスタッフと、暖かく庶民的な雰囲気を持つホテル。また週末には、地元の人も集うというレストランでの食事はお勧めで、特に湖水地方の地場ものであるラム肉は絶品。
ワーズワースやポターらも招待されたという荘園領主の邸宅。かつて奴隷売買のの舞台にもなったという地下室は今はワイン倉庫となっており、格調高い内装のレストランでの食事はまさに最高の贅沢。また湖を見渡すホテルからの眺めは圧巻。
湖水地方で癒しのひとときを、英国で最も美しい湖畔にある美しい低塩で、のどかで静かにお過ごし下さい。
森林に面した、見晴らしのよい小高い丘の上に立つゲストハウス。近年まで英国紳士が住んでいたというだけあって、アンティーク家具に囲まれたそれぞれ個性豊かな部屋が用意されている。
森林に面した、見晴らしのよい小高い丘の上に立つゲストハウス。近年まで英国紳士が住んでいたというだけあって、アンティーク家具に囲まれたそれぞれ個性豊かな部屋が用意されている。
湖水地方では唯一、日本語による解説付きツアーをアレンジ。料金には全ての入場料及び、クルーズ代が含まれている。

四方を海に囲まれた島国、英国。そんな土地柄、魚介類に恵まれているはずなのに、英国のスーパーで見る魚は、種類は豊富ではないし、新鮮さも疑問。そしてお値段も決して安くはない(涙)。そこで、この「魚三重苦」を乗り越えるべく、魚恋しい日本人が期待を胸にビリングズゲート・フィッシュ・マーケットへ行ってきました。今回は、英国の築地(?!)とも言われるビリングズゲートを中心に、英国のサカナ事情をお届けします。
東ロンドンに位置する魚卸市場。ロンドンで流通している魚介類のほとんどはここで仕入れられていると言われている。英国内では最大の魚卸市場で、年間平均2万5000トン(内40%は輸入物)の魚介類がここで取引される。大量に買わないといけなかったりするが、基本的に一般人でも購入可能。
今では、フィッシュ・マーケットとして知られるビリングズゲートだが、当初はとうもろこし、石炭、鉄、ワイン、塩、陶器など様々なものを扱う卸市場だった。しかし1699年に、どういったことかビリングズゲートを魚に特化したマーケットとする決議書が国会を通過し、以後、ビリングズゲートと言えば魚という公式が出来上がっていったのだ。そんなフィッシュ・マーケットでも取り扱いが禁止されていたものがあった。それは、ウナギ。当時ウナギの売買は、オランダ人漁師の専売物だったのだ。これは1666年のロンドン大火災時に、オランダ人漁師たちがロンドナーたちに食料を提供したお返しとして与えられた特権だった。
値段が表示されていないのがマーケット初心者には怖い所だが、お店の人は親切に正直に教えてくれるのでご安心を。ちなみに、1月31日時点での平均価格は下記表の通り。ビリングズゲート・マーケットは、誰でも入場可能で、一般人でも商品を購入できるが、初めての時は魚に詳しい人と行くのがコツ。魚の見方がわからないと少し古い魚をつかまされることもあるとか(それでももちろん食べられますが)。必然的に購入単位が大きくなるので、友達や御近所の人を誘って買い出しに出掛けよう。
T&S Enterprises (London) Ltd. 
このレシピは、あたりやアクトン店のMawjuthさんに聞きました。「マリネ液には、お好みでお酒(大さじ2が目安)やおろししょうがを加えても美味しいですよ。」
③を②のたれに漬けて、
もうすぐやってくる、イースター・ホリデー。今年は4月14日(金)のグッド・フライデーから、17日(月)のイースター・マンデーまでの4日間がそれに当たる。せっかくの4連休なのだから、ユーロスターを利用してベルギー旅行としゃれ込むのはいかが?おいしいビールを飲んだりダイヤモンドを買ったりなど、ニュースダイジェストが提案する、ブリュッセル・ブルージュ・アントワープの楽しみ方をご紹介!
いつも人の山に囲まれている、小便小僧。
1つの建物の中で、15世紀から17世紀にかけてのフランドル派およびオランダの作品などを所蔵する古典部門と、19世紀から現在に至る作品を集めた近代部門に分かれている。それぞれ内部でつながっている。※3月17日(金)から7月23日(日)まで、20世紀初頭のアール・ヌーボーをテーマにした大展覧会「L'Art Nouveau,La Maison Bing」を開催予定。
王立美術館の真向かいに建つ、楽器博物館。建物自体がアール・ヌーボー建築として卓越しており、所蔵している楽器の数は6000点を超える。最上階にあるレストランからは、ブリュッセル市内の絶景が見渡せる。
ブリュセル市内の繁華街に建ち、1912年の創設以来、安定した人気を保つレストラン。テノール歌手、プラシド・ドミンゴも訪れたことがある。ムール貝のほか、帆立貝などのシーフード、チーズ・フォンデューなど多彩なメニューが自慢。予約がオススメ。
20世紀初期に一世を風靡した芸術様式アール・ヌーボー。その代表的建築家といわれるビクトル・オルタ(1861-1947)が自ら建築し家族とともに生活した館が現在美術館となって公開されている。一歩中に入ると、階段の手すりからドアノブまですべてに草木をモチーフにした曲線的デザインでインテリアが統一されており、気分はまるで別世界。
ベルギーを旅行中に一度は注文したいのがこのクワック・ビール。アルコール度が高いエールの部類に入り、底が丸い独特の形のグラスで飲むのが特徴。このデザインは、18世紀当時、宿屋に立ち寄った駅馬車の運転手達が手袋をはめたまま取手つきのマグからビールを飲む姿を見た、宿屋の経営者がひらめいたもの。おかげで手袋のままでも持ちやすく、また駅馬車のあぶみの上でもゆっくり飲めるように。先見の明があった経営者の名前P・クワックがそのままビール名になった。
街の中心となるマルクト広場には、ギルドホールと鐘楼がある。鐘楼への366段の階段を上ると、眼下にブルージュの街を見渡す見事な景色に出会う。途中、47個の鐘からなるカリヨンがあり、美しい音色が鳴り響くコンサートが開催されることも。
高さ122メートルの塔が目立つ、ノートルダム教会。残念ながら塔の内部を登ることは出来ないが、ここの美術館が所蔵する美術品の素晴らしさはほかに引けを取らない。写真のミケランジェロ作品のほか、ファン・アイク作「十字架上のキリスト」などがある。
02年、ブルージュがユネスコの欧州文化都市に指定されたのを受けて、日本人建築家、伊東豊雄が建設したパビリオン。ローマ時代からのカテドラル跡地に立てられたこの建造物は、歴史と未来の文化を表している。当初は1年だけのプロジェクトとして取り壊す予定だったが、市民の強い要望により永久保存が決定した。
新旧の魅力が同居する話題の街
街の中心部には、画家ルーベンスが1610年から彼が死去した1640年まで生活した家がある。ルーベンスはここを住居兼アトリエとして利用し、美しい庭園のデザインも自ら手がけた。当時は絵画モデルや画商など多くの来客で賑わった家も、今ではミュージアムとなりルーベンスの自画像を含む合計10点の作品を所蔵している
2つの通り(DrukkerijstraatとNationalestraat)が交差する場所に建つ白い建物はモード・ナシーと呼ばれ、アントワープのファッションの拠点。02年にオープンし、書店やモード・ミュージアム(MoMu)、そして王立アントワープ美術アカデミーのファッション科などが入っている。周辺にもデザイナー・ショップが並んでいるので、ショッピングにも最適だ。※MoMuでは、3月7日(火)~8月13日(日)まで日本のデザイナー、山本耀司の展覧会「Dream Shop」を開催。実際にデザインを来場者が試着できるコーナーもあるとか。


もう一つ、成功のキーといえるのが、独特な資金調達方法だ。一般的に、ショーの制作は劇団が行う。その場合、スケジュールは前もって決められ、資金もすべて準備しておかなければならない。一方ウエスト・エンドとブロードウェイにおいてショーは公演単位。その都度キャストや演出家は変わる。
ウエスト・エンドは一言でいうならば、「音楽重視のドラマチックな舞台」が特徴。派手さには欠けるが、印象的な楽曲が数多く使われ、ドラマチックにストーリーが展開していくというのが、ウエスト・エンドにおける一つの王道となっている。有名な作品としては、「キャッツ」、「オペラ座の怪人」、「ミス・サイゴン」など。ストーリーの題材も、現実社会に起こる問題を真っ向から捉えた骨太なものが多い。
一方、ブロードウェイは「ダンス重視の絢爛豪華な舞台」が売り。華麗で洒落たダンスが舞台狭しと繰り広げられ、とにかく楽しく夢のような別世界に観客を誘ってくれる。代表作は「42ndストリート」、「シカゴ」「クレイジー・フォー・ユー」など。厳しい現実をつかの間忘れて楽しもうというのがブロードウェイの信念ならば、事実から目をそらさず、苦しみながらも必死に生きる人々の真摯な姿をそのまま描き出すのが、ウエスト・エンドの心意気なのかもしれない。
Victoria Palace
Prince Edward
Palace
音楽一家に生まれたアンドリュー・ロイド=ウェバーは、幼い頃から音楽の才能を発揮、「キャッツ」、「オペラ座の怪人」などのヒット作を次々と世に生み出した。「オペラ座の怪人」以降、いまいちパッとしなかった彼が、万全を期して発表したのが「The Woman In White」だ。音楽家としてだけでなく、実業家としても成功しているロイド=ウェバーは、「リアリー・ユースフル・ グループ」という会社を経営、パレス劇場はじめ9つの劇場を所有している。常にお金が問題となる演劇界。感性とビジネス感覚を共に併せもった彼のような才能は、なくてはならない存在だ。
Queen's
Phoenix



ローマ時代の温泉街として有名なバースにも、もちろんクリスマスはやってくる。 2001年から始まったという、街の名物である大浴場の前に広がる自慢のマーケットには、手作り感に溢れた123のストールが並んでいる。その反対側に立つ大聖堂には荘厳な光が反射しており、この景色だけでも一見の価値はあり、またこの辺りは観光地として名高いだけあって、スパなどのほかにもあらゆる種類の娯楽施設が充実している。 古き伝統と現代の利便性が混在するこの街で、体の中からも外からも温もりを味わうことができるだろう。






