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Fri, 29 March 2024

郵便料金値上げとロイヤル・メールの今後

ロイヤルメールファースト・クラスの切手価格が3割増
郵便料金値上げとロイヤル・メールの今後

電子メールや携帯電話のテキスト・メッセージが普及したとは言え、やはり今でも人々の生活に欠かせないのが郵便サービス。しかし、最近、郵便料金の大幅な値上がりが発表され、英国民を驚かせた。1975年以降で最大であるこの料金引き上げの背景にはどのような事情があるのだろうか。

2012年4月30日からの郵便料金(一部)

ファースト・クラス 現在の料金 新料金
100グラムまでの定形郵便物 46p 60p
100グラムまでの大型郵便物 75p 90p
750グラムまでの小包 £1.58〜3.05 £2.70
100グラムまでの料金別納郵便(Franked mail) 39p 44p
セカンド・クラス    
100グラムまでの定形郵便物 36p 50p
100グラムまでの大型郵便物 58p 69p
750グラムまでの小包 £1.33〜2.61 £2.20
100グラムまでの料金別納郵便(Franked mail) 28p 31p
書留料金(Recorded signed for ™)*    
  77p 95p
小包(Standard parcels)    
2キロまで £4.41 £5.30
4キロまで £7.62 £8.80
6キロまで £10.34 £12.30
転送サービス(個人向け)    
1ヵ月 £8.00 £12.50
3ヵ月 £17.62 £19.50
特別デリバリー(翌日)(Special Delivery ™ Next day)**    
100グラムまで £5.45 £5.90
500グラムまで £5.90 £6.35

* ファースト・クラスまたはセカンド・クラスの料金に追加して支払う書留料金。
** 翌日の午後1時までに必ず受取人に届く書留郵便サービス。

1カ月に出す郵便物の数に関する調査結果

1カ月に出す郵便物の数に関する調査結果

(*) 調査会社「London Economics」が、 消費者団体「Consumer Focus」の依頼 で、2011年11、12月に調査。「オンライン調査」は、2020人を対象にインターネット上で実施した。「対面聞き取り調査」 は、普段ほとんどインターネットを使用しない低所得者または高齢者の計212人を対象としている。

Source: Consumer Focus


1975年以降で最大の値上げ

ロイヤル・メールは先月末、4月30日から郵便料金を大幅に値上げすることを発表した。ファースト・クラスの切手は現在の46 ペンス(約59円)から30%増の60ペンス(約78円)に、セカンド・クラスの切手は現在の36ペンス(約46円)から39%増の50ペンス(約65円)へとそれぞれ価格が引き上げられる。切手の値段は近年、上昇が続いていたが、今回は1975年以降で最大の値上げ幅となる。このほか、大型の手紙や小包、書留などの郵送料金も同様に4月末から引き上げられることになった(詳細は上図参照)。  

今回の値上げの発表は、昨年から郵便サービスの監督・規制を担っている「オフコム(Ofcom)」が、郵便料金設定に関する規制を撤廃したことを明らかにした直後に行われた。この結果、ロイヤル・メールは、郵便料金を自由に設定できる権限を獲得した(ただし、セカンド・クラスの切手については、貧困層が引き続き郵便サービスを利用できるよう規制が残され、今後7年間、価格の上限が設けられることになった)。

「ユニバーサル・サービス」の義務果たすため

オフコム及びロイヤル・メールは、今回の規制撤廃と値上げについて、「経営難が続く中、『ユニバーサル・サービス』の義務を果たすためのやむを得ない措置」と述べている。電子メールの利用増加、ほかの郵便サービス会社との競争激化などによってロイヤル・メールは経営不振が続いており、過去4年間で40億ポンド(約5200億円)にも上る損失を計上している。特に主流事業である手紙の郵送サービスが苦戦しており、昨年の損失は1億2000万ポンド(約156億円)に達した。「ユニバーサル・サービス」とは、1997年のEU指令と「2000年郵便サービス法」によってロイヤル・メールに課せられている義務であり、日曜を除く週6日、英国のすべてのエリアで郵便物の集配を行うことが求められている。オフコムは、今回の郵便料金の規制撤廃に際して発表した声明で、その目的を、「ロイヤル・メールのユニバーサル・サービスが財政的に持続可能であり、効率的に提供できるようにするため」であると述べていた。

ロイヤル・メールの民営化に向けた布石

また、重要な点は、オフコムによる今回の措置が、ロイヤル・メールの民営化に向けた準備と位置付けられていることである。昨年成立した「2011年郵便サービス法」によって、現在は国が所有しているロイヤル・メール株のうち、最高90%を民間企業に売却することが可能になった(残り10%はロイヤル・メールの職員が所有する)。民営化計画が進められている理由は、ロイヤル・メールが、前述したような財政難、巨額の年金債務、業務の非効率性などの問題を抱え、再建を必要としているためである(年金債務は、「2011年郵便サービス法」の規定により、政府に移管された)。  

民営化の時期について、ロイヤル・メールのモヤ・グリーン最高責任者は、2014年の前半にも実行される可能性があるとの見通しを示している。利用者としては、どの企業が買い取るにしろ、これ以上の料金値上げがないように願いたいところであるが、ともあれロイヤル・メールは今後2年ほどで、過去最大の改革を迎えることになる。

Department for Business, Innovation and Skills(BIS)

郵便サービスを管轄する政府の省で、「ビジネス、改革、技術省」などと訳される。労働党政権下の2009年6月、改革・大学・技術省(Department for Innovation, Universities and Skills) とビジネス・企業・規制改革省(Department for Business, Enterprise and Regulatory Reform)を合併して設置された。現在の国務大臣は自由民主党のビンス・ケーブル議員。ほかの管轄分野は、産業、都市問題、貿易・投資、雇用、消費者関連など。大学教育及び継続教育は、教育省ではなく、ビジネス、改革、技術省の管轄である。ウェブサイトはwww.bis.gov.uk

(猫山はるこ)

 
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