ソーシャル・メディアとうまく付き合うためのQ&Aつながりっぱなしの世界、どうやって過ごす?
今日、大量の情報やその中に紛れているフェイク・ニュースが多くの人を悩ませている。コロナ禍でも「お湯を飲むと予防効果がある」、「感染者が空港から脱走した」などの偽情報がソーシャル・メディア上をかけめぐったのは記憶に新しいだろう。本特集の最後に、そんな情報過多社会においてどのように情報と付き合うべきか、ソーシャル・メディア論の専門家である藤代裕之さんにお話を伺った。
ソーシャル・メディアとは
インターネットを介して、誰でも情報を発信・受信し、双方向的なやりとりができるメディア。代表的なものとして、ツイッターやインスタグラムをはじめとするソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)、ユーチューブなどの動画共有サイト、ブログ、ラインなどのメッセージング・アプリなどがある。
お話を聞いた人
藤代裕之さん Hiroyuki Fujishiro
法政大学社会学部メディア社会学科教授、ジャーナリスト。徳島新聞社で記者として、司法・警察、地方自治などを取材。NTTレゾナントで新サービスの立ち上げや研究開発支援担当を経て現職。日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)代表運営委員。専門は、ジャーナリズム論、ソーシャル・メディア論。
Q. スマートフォンは生活に欠かせないのに、ずっと一緒は疲れる……これって現代人共通の悩み?
A. スマートフォンは「便利でやや不快なもの」
スマートフォンが手放せない理由の一つは、ずばり「身体的・物理的な距離の近さ」。テレビや新聞などのマスメディアの時代には、特定の場所や時間において情報に触れることが一般的でしたが、スマートフォンならベッド、風呂、トイレ……いつでもどこでも持ち歩けます。
日本人のメディア接触時間は、2019年時点で1日当たり400分を超える
一方でNHK放送文化研究所の調査では、日本に住む18~69歳の回答者のうち、およそ8割が「情報が多すぎる」と回答。マスメディアが主流の時代、「ニュースを読む・見る」ことは、新聞を取りに郵便受けに行ったり、テレビのチャンネルを選んだりと能動的な行動に紐付いたものでした。しかしスマートフォンは常時ネットに接続されており、一日中アプリからのプッシュ通知が届きます。この大量の情報に受動的に接し続けなければならない状況が、いわゆる「情報疲れ」や「スマホへの不快感」の原因に。とはいえ、人間は1度手に入れた便利なものからなかなか離れられないので、メディアに対する意識と現実の間で、あらゆる世代の人が揺れ動いているのが現状です。
Q. ネットによって視野が狭くなっている若者が多いと聞きますが、実際のところは?
A. 実は中高年世代よりも若者の方が「合理的かつ冷静」に情報に触れている
「フィルター・バブル」(泡のフィルター)という、ネットの検索結果が利用履歴などをもとにカスタマイズされ、各ユーザーにとって心地良い情報ばかり入ってくる現象があります。それによって利用者の視野が狭まり、似た意見がつながりやすくなるというのですが、これはインターネット黎明期からずっと議論されてきました。
従来、ソーシャル・メディア上の不確実な情報を鵜呑みにするのは若者だといわれてきました。ところが最近の10~20代のメディア接触の仕方は、合理的かつ冷めたものだということが明らかに。彼らの検索行動を調べると、グーグルなどの検索サイトではなくソーシャル・メディアでの「ハッシュタグ検索」を多く利用しています。ハッシュタグ検索では、アルゴリズムを使った検索結果の順位付けもなく、極端なものも含めた意見の「相場観」を知ることが可能。日本の若者が突出することを嫌う傾向にあることから、まんべんなく全体の意見を知ろうとする検索態度が垣間見られます。
一方、中高年世代はメディアに対して「正しさ」や「真実」を求める傾向が強いです。かつて、テレビや新聞は取材から配信まで一貫して行い、間違った場合はその媒体自ら訂正しました。そのため、基本的に「情報」は信用できるものとして受け取られていたのです。それゆえ彼らが当時の感覚でスマートフォンを使用すると、自分の意見に近い不確実な情報に接触し、フェイク・ニュースに騙される……なんてことも起きています。

Q. 昨今、世界的にマスメディアへの不信が広がっています。その理由は何でしょうか?
A. 誰もが発信者になれるというメディア環境の変化
元来マスメディアやジャーナリズムは、政府や公権力の監視、あるいは社会的な弱者への眼差しとして、社会の中でも非常に重要な役割を担うものです。昨今のメディア不信の背景には、マスメディア側にも誤報や不祥事などの問題はもちろんありますが、ソーシャル・メディアの発達によって誰もが発信者になれるといった環境変化があるでしょう。
例えば2016年の米大統領選で、トランプ氏がソーシャル・メディアを巧みに利用して勝利したことは有名です。同氏は、「ニューヨーク・タイムズ」紙やCNNのような大手メディアによる情報を「フェイク・ニュース」と攻撃し、支持者と反トランプ派の亀裂を深めました。大手メディアはそういった政治家への有効な対抗策を見いだせないまま、「トランプ氏が○○とツイートした」といった取材や調査を必要としないニュースを流すなど、むしろ世論の分断を助長する面もあります。
無数のユーザーが発信できる今、伝統的なメディアには、しっかりとした調査に基づいた良質な情報発信が求められています。一方で、紙面販売や広告収入の減少など、経済的な苦境を抱えているのも現実。マスメディアが「誠実にいい記事を作ろう」というだけでは解決しません。情報が拡散されることによってアクセス数や広告収入を稼いでいるインターネット・メディアや、ツイッター、インスタグラムなどのプラットフォームなど、「偽情報でもアクセス数が伸びればそれでいい」というビジネスが成立する仕組み自体を変える必要があります。

Q. 「メディア・リテラシーを身に付けることが大事だ」といわれますが、それがあれば「フェイク・ニュース」を見抜けるのでしょうか?
A. 個人のメディア・リテラシーだけでなく、ソーシャル・メディア環境の整備が急務!
玉石混交の情報を見分けるには、「誰がどんな意図で書いているか」を批判的に考える力、つまりメディア・リテラシーが必要だと、いろいろなところでいわれています。もちろんそれは大切なことですが、メディア・リテラシーがあれば偽情報を見抜けるかというと、私は懐疑的です。
ソーシャル・メディア環境を車社会に例えてみましょう。昔より今の方が、圧倒的に事故数って少ないですよね。道路の整備、車体の安全性能の向上、シートベルトの義務化など、さまざまな理由があります。その上で私たちは「安全に車を運転する方法」を知る必要がありますが、これがメディア・リテラシーに当たる部分です。しかし、今のメディア環境で私たちに求められるのは、「時速300キロの車が走る道で、故障車を見破って事故を防ごう」というくらい難しいもの。
そんな状況下ではまず、情報を売っているメディアや、拡散しているプラットフォームの責任を問うべきでしょう。例えばツイッター社は昨年の米大統領選に際し、誤情報の拡散防止や、情報拡散のスピードを緩めるため、一部仕様を変更しました。まだ実施されていないだけでシステム的・技術的に可能なことや、法整備が必要なことは数多くあります。そうした基盤が整うことで初めて、私たちは「情報を読み解く」ことが可能になるのではないでしょうか。そのため残念ながら、今のところ「誰でもフェイク・ニュースを見抜ける方法」は存在しません。逆に言えば、今のままではメディア・リテラシーがうまく機能しないこと、そのためにプラットフォーム運営者や政策が何をすべきかを言い続けることが、私自身の仕事かなと思っています。
これから求められるのは「生活に根ざしたメディア」
大量の情報に溢れる現在、多くの人がメディアとの付き合い方を見直し、どんなメディアを選択するかについて意識的になっている。だからこそ、良質なメディアからフェイク・ニュースを発信するメディアまで、あらゆる新しいメディアに均等にチャンスがあるだろうと、藤代さんは語る。藤代さんが特に可能性を感じているのが、「地に足の着いた、生活に根ざしたメディア」だ。正しさについて論評するばかりではなく、身の回りのもっと違った価値に目を向けら れるメディアが、どの情報を信じていいか分からない時代において、人々の支えとなるのかもしれない。ニュースダイジェストは2021年も引き続き、読者の皆様に寄り添った誌面作りを目指したい。
もっと知りたい人におすすめの書籍
「コロナの情報に疲れた」、「若者の話が分からない」……そんな悩みを抱える人も少なくないだろう。本書では、ソーシャル・メディアが広く普及した後の世界(=アフター・ソーシャル・メディア)で、人々がどのように情報接触を行っているかについて、さまざまな調査データをもとに分かりやすく解説し ている。情報過多社会を生きる私たちにとって、多くの発見が得られる一冊だ。



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英国の「ガーディアン」紙に掲載された、スティーヴ・ベル氏による作品。2020年4月、英国内で増え続ける新型コロナウイルスの感染者数に対し、政府ができるソーシャル・ケアの最終プランを描いた。同氏は、ボリス・ジョンソン首相の顔をお尻の形に描くことで有名だ
ドイツでは毎年カリカチュア大賞を開催しており、2020年の金賞はヴォルフ=リューディガー・マルンデ氏が受賞。洗車やヴィーガン・スナックの販売で生き残ろうとするガソリンスタンドを通じて、ドイツの車社会の危機を描いている
※数値が小さければ小さいほど自由度は高くなる。
英南部ワイト島にあるイングランド国教会の聖トマス教会とクリスマス・ツリー
イングランド国教会成立のきっかけを作ったヘンリー8世
清教徒革命の様子を描いた「ネイズビーの戦い後の風景」
同性婚の式を行う教会もある
聖パウロを祭る聖ポール大聖堂
ジェームズ・ハード司祭
St John the Baptist
クリスマス礼拝のポスター。幼子イエスの絵が描かれている
スター・アップ・サンデーに作るクリスマス・プディング
イエス・キリスト誕生の場面を演じる子どもたち
2021年に改修完了
ビッグ・ベンの工事は、単に老朽化した塔の保全作業ではない。文字盤と針を紺青色に塗り直し、調査によって明らかになった1859年当時の色合いを蘇らせるほか、メンテナンス、緊急時の作業を行うためのリフトを新たに設置するなど、さまざまなお直しが含まれているのだ。工事期間中は、第一次、第二次世界大戦でも止むことのなかった鐘も、特別な日を除き一旦お休み中。
今や世界で最も有名な時計塔として名を馳せるビッグ・ベン。その誕生のきっかけとなったのは、1834年10月16日にウェストミンスター宮殿(現在の国会議事堂)を襲った大火だった。この火事で建物のほとんどが焼失。その結果、同じ場所にゴシック様式の新しい建物を建設することになったのである。
英国を代表する画家、ターナーの描いた大火
ワーナーズ鋳造所での鋳造過程
ホワイトチャペル鋳造所で再鋳造される
再鋳造されたビッグ・ベン
ウェストミンスター・ブリッジから望む時計塔

そしていよいよビッグ・ベン、すなわち鐘とのご対面。外気に面した鐘楼には、4つの鐘に囲まれたビッグ・ベンが。「間近で聞くとすさまじい音だから」ということで一人ひとり前もって渡された耳栓を装備、爆音に備える。待つことしばし。ついにビッグ・ベンが鳴り出した。とにかく大きな硬質な音で、美しいかどうかなんて考える余裕もない。耳も慣れてきたようなので、最後くらい実際に聞いてみようかと思い、耳栓を外した途端にすさまじい音が……。最後まで耳栓は外さない方が良さそうだ。鐘の音を堪能した後は、ビッグ・ベンに今もなお残るひびと四角い穴を確認。ひびが入ったまま100年以上もの間働き続けているのだからたいしたものだ

伝統的な英国の調味料
Bisto
HP Brown Sauce
Oxo Cubes
Worcestershire Sauce
Maldon Sea Salt
Salad Cream
Colman's Mustard
Malt Vinegar
Mushroom Ketchap
Piccalilli
Branston Pickle
Marmite
Belazu Rose Harissa
Red Kimchi
Jerk Barbeque Sauce
Organic Tahini
VFISH Fishless Fish Sauce
1970年、ノッティンガムに自分の店を持ったポール・スミス
1970年、ノッティンガムにオープンした「ポール・スミスの紳士服」(Paul Smith Vêtements Pour Homme)で働くポール・スミス
2016年、デザイン・ミュージアムのオープニング・パーティーに現れた、ポール・スミスと妻のポーリーン・スミス
1976年にパリで最初に行ったショーの様子
2017年のロンドン・ファッション・ウィーク
デザイン照明の老舗「アングルポイズⓇ」社とのコラボレーション・デスクランプ
2013年にデザイン・ミュージアムで開催された「ハロー・マイ・ネーム・イズ・ポール・スミス」展では、あらゆるモノであふれかえる、ポール・スミスのオフィスのレプリカが展示された


No.9 アルバマール・ストリート ショップの外観
ロンドン西部のタワー・ブロック、トレリック・タワー
Open House London
かつての悪名高いスラムが落ち着いたエリアに
インパクト大の無機質なフォルム
まるで一つの町のような迫力の520戸
鮮やかな赤は、1954年のオリジナル・カラーを2014年に復元したもの
近隣の住民からは「戦艦」と呼ばれる公営住宅
ノッティング・ヒル・ゲートに近く立地もよい
外観はクリーム色に塗られるはずが、自治体の資金不足で図らずもブルータリズム風になったという逸話も
向かい合わせの長屋のようなスタイル






